2006-10-01

健さんは出征兵士?「日本侠客伝 雷門の決斗」

 久しぶりの高倉健主演のヒットシリーズ「日本侠客伝」シリーズは、第5弾「雷門の決斗」(1966年)です。脚本は野上龍雄と笠原和夫、監督はマキノ雅弘のシリーズお馴染みのメンバー。

 大正時代、亡父(内田朝雄)の遺志を受け継ぎ、浅草の興行界をやくざたち(水島道太郎、天津敏)の魔手から死守する青年(高倉健)の話です。
 いつの時代でも、興行の世界とやくざは因果関係があるんですね。もともと、主人公の亡父もやくざ世界に生きていた男ですが、子分や芸人たちのことを考え、堅気になって浅草興行界の実力者になっているという設定になっています。

 任侠映画では毎度・・・のひたすら、ガマン劇です。それはもう見事なまでに主人公はガマンにガマンを重ね、最後には怒りを爆発させますが、あまりにきちんとしたガマン劇のお手本のようなストーリーなので、前作「血斗神田祭り」であったような、想いを心に秘めたまま女の子のために怒りを発露するというような美学はありません。
 男が女の子を助けるー。いいですよね。今は女が男の子を助けている世の中みたいですが・・・。


 健さんは、興行の世界を嫌って船員になった男として登場します。久しぶりに陸(おか)に上がって浅草に戻ると、父親の自殺に遭遇します。父親は芸人たちの面倒見がいい興行主で、そのために借金に借金を重ね、興行界に押し出ようとしている博徒に所有する劇場を取られてしまいます。そして、あとの処置を息子に丸投げした形で死んでしまいます。

 迷惑なのは、息子のほうです。興行の世界には素人であり、もともと、後継者としての意思はないから「困ったなぁー」となります。それでも成り行きで、亡きオヤジのもとで働いていた元子分たち(藤山寛美、待田京介、井上昭文)や出入りしていた芸人たちの強い希望もあって事後処理に立ち上がります。

 ここから度重なるやくざの嫌がらせに耐えるガマン劇が始まります。
 今回の健さんの怒りの起爆剤となるのは、島田正吾と長門裕之です。
 島田正吾は亡父の弟分で、娘の藤純子と健さんは好きあっています。どちらの親も周囲の連中も二人が夫婦になることを期待しています。
 長門裕之は旅に出ているやくざで、水芸のロミ・山田と想い、想われている仲です。
 このロミ・山田、シャンソン系の歌手ですが、マキノ雅弘の演技指導で純日本風のおんなとして、いい味を出しています。水芸といえば鏡花の滝の白糸が有名ですが、この映画の白糸は仲良しご町内の一員で、ご町内の皆を助けるため、やくざからカネを借り、窮地に陥ります。
 そういういきさつもあって、島田正吾も長門裕之も行き詰まった状況に風穴を開けるため、二人揃って殴り込みをかけます。しかし、島田正吾はあえなく討ち死にし、長門裕之は瀕死の重傷を負い、こうして健さんの怒りの鉄拳へなだれ込んでゆきます。

 その前に健さんは、それまで状況を見守るだけだった恋人の藤純子と二人だけの結婚式を挙げます。父親を亡くし、頼りとする愛する男の決意の前に純子は訴えます。
 「・・・あたいはどうなるのよ・・・」
 そこで、健さんは応えます。
 「おめぇは俺の女房になるんだよ」
 いやぁー、健さん、やはり、男でおました^^

 そして、迎えた二人だけの結婚式。
 これはもう、かつての出征兵士の結婚式ですね。明日、戦地に赴く兵士が新婚生活を楽しむ暇もなく、あわただしく結婚式だけを挙げて出征していったという多くの例が語られています。
 健さんには、この後、殴り込みが控えています。純子もそれを知っています。二人にはハネムーンや新婚生活どころか、初夜もありません。だから、純子の滂沱の涙の中で三々九度の盃ごとが進みます。媒酌の労を取るのは、健さんと一緒に殴り込みに向かう藤山寛美です。
 泣きじゃくりながら盃ごとを終えた花嫁の純子に、健さんはボソッと「笑えよ」と声をかけます。純子は無理やり笑顔を作って健さんを見返しますが、すぐに顔をそむけて、また泣いてしまいます。見事なまでの出征兵士の花嫁ですよね。

 ちなみに、この作品のタイトルバックでシリーズでは初めて、高倉健の歌声が流れます。歌われているのは「やると言ったら、どこまでも・・・」の「俺が選んだ道」で、その後もたびたび、高倉健の着流し仁侠映画で聞くことになる、押し殺したような声で、ぶっきらぼうな歌い方の高倉健の歌声ですね。
 
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13日まで、新世界で上映中

 お元気でしょうか?
 13日まで、新世界でやっているんですよね。何となく、あそこで映画を観るのは、すごく体力がいるので、パスしそうです。
 しかし、併映が『日本大侠客』。マキノの映画世界に身を委ねるか、どうか…。とりあえず今週、金曜日に休めたら、観に行こうかと思いますけど、体調によるなぁ。
 ちなみに、最近、岡本喜八(あまりお好きではないででしょうけど…)のDVD-BOXを半額で手にいれましたので、毎晩、そちらとロマンポルノを交互に観ています。なお、これから田中登追悼特集をやります。
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青山彰吾

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 日本映画を中心にしたコーナーです。
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