2006-09-04

半日まるごと小津映画

 小津映画に出ている杉村春子を、もう一度、スクリーンで観たかったので、昨日、1951年の「麥秋」と1953年の「東京物語」を観てきました。
 
 文化庁恒例の全国縦断上映会の一環で、今年はボクの住む町が取り上げた作品は小津安二郎監督の4作品。朝10時半に始まり、4作品のラストを飾る1962年の「秋刀魚の味」まで観れば終了は夜8時前になるから(もう1本は1958年の初の総天然色映画「彼岸花」です)、1日まるごと小津映画の日だったんですね。
 ボクは都合で、前半の2作品しか観ることができなかったので、半日まるごと小津映画となりました。
 
 「麥秋」の近所に住むおしゃべりおばさん、「東京物語」の相手が親だからこそ、ズケズケものを言う長女、小津監督が演技者として全幅の信頼をおいていたと言われる杉村さん、相変わらず、こってり芝居してはりました^^(フィルムだから、いつ観ても同じなんですけどね)。
 小津監督の遺作となった「秋刀魚の味」にも杉村春子は出ています。本筋とは一見関係ない、わずかな出演シーンの役ですが、ところがどっこい、大いに関係ありなんですね。
 
 父親(東野英治郎)と二人暮らしの娘の役ですが、杉村さん、終始、無愛想な表情で出てきます。そのために主人公(笠智衆)やその友達(中村伸郎)らに陰でボロクソに言われていますが、杉村春子の仏頂面が主人公にある暗示を与えるというキャラクターです。
 この娘は長年、やもめの父親の面倒を見てきたばかりに婚期を逸し、自分もそれなりの年代になってしまい、こもごもの思いの蓄積が感情をどこかに置き忘れてきたかのような表情、態度になってしまっています。
 そんな他人のトシをとった娘を見て、主人公は自分もやもめで、それまでいいように生活の面倒を見させてきた娘(岩下志麻)の将来を見るような気になり、主人公は娘にも結婚して幸せな家庭生活を送らせようと、思いを一新することになります。
 杉村さんの役柄は、主人公に動機を与える重要な役なんですね。
 重要だけど、なくても構わないような単なるワキの登場人物ですが、小津監督は、この孤独なトシをとった女性の思いを表現するために仏頂面をしたまま、無言の杉村春子を延々と撮り続けるシーンを用意しています。
 セリフはなく、しかも、さして動きのないまま、演技者としては顔と体全体で感情を表現しなければならない難しいシーンですが、小津監督の、まさに「杉村春子を観せる」だけに設けられたような特別のワンショットになっています。

 杉村春子について、昨日、上映された作品のうち、ボクが観なかった映画を取り上げることになりましたが、「麥秋」や「東京物語」については次回、触れることにします。
 両作品とも、ビデオが普及した影響からなのか、前に観たのはそんなに以前ではないと思っていたら、記録を見るとスクリーンで接したのは、もう随分昔のことになっていました。
 憂き河の流れは速いものなのですね。 
 
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初めて観た小津映画は『突貫小僧』

 元気でやっていますか?
 文化庁の映画巡礼ですね。先日、朝日新聞で三重県●張市の主婦が毎年楽しみにしているという投書を読みました。彼女にとって、スクリーンで日本映画の名作を観るのは、それ以外にはないそうで、地方の日本映画の上映事情を物語っています。
 さて、近隣の高槻松竹で、12月に時代劇特集があり、そのラインナップがアナウンスされていましたが、ようやくマキノの『次郎長三国志』(東宝版)が観れそうです。まだタイムスケジュールは出ていませんが、初日と二日目には一挙上映のような感じです。まさにマキノ三昧というより、お祭り。京都映画祭より刺激的でござんす。
ちなみに、私が小津映画をはじめて観たのは、大学を卒業してから数年たって、当時、発見されたと話題になった『突貫小僧』です。そんな野郎がいっちょ前に映画のことを語るとは恥ずかしい。ホンマに井の中の蛙やわ。

井の中の蛙??豚??

 9月から新生活を迎え、元気でやっとります^^
 井の中の蛙でよろしいじゃありませんか。井の中の蛙だからこそ、知ろうとする探究心も旺盛なんでしょ^^
わたしゃ、かの人の小津論を知りたいわ。えっ? 知らないって? 海の彼方のことばかりで足元も固めていないっていうのもねぇ・・・。おっと、もう興味はないんでしたよね。

 その主婦の言うとおり、映画文化に関しては地方は貧困なんですよね。かの地にはシネコンどころか、映画館は一軒もありません。隣町にシネコンはあるのですが、お子ちゃま中心の今ウケするアメリカ映画ばかりで、田舎は採算主義に走っております。むろん、シネコンも商売ですから収益が上がらないことには維持できないのは分かっているし、都会のように多種な映画ファンも少ないのも分かっています・・・。

 ところで、先日の「麥秋」で笠智衆の初登場シーンで場内から「わぁー!」と歓声が上がっておりましたぞ。御前様以後の年取った笠さんのイメージが一般化しているのでしょうね。これもまた、楽しいことかな。笠智衆もいきなり老人になったわけではないけどね^^

 さてさて、かの地では11月の2,3日に因縁の? 田中徳三特集が予定されています。「怪談雪女郎」や「悪名」「続悪名」「眠狂四郎女地獄」が上映予定で、田中さんのトークはもちろん、初日には藤村志保もゲストに招かれています。わたしゃ、リアルで志保ちゃんの顔でも見に行こうかいな^^
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