2006-08-05

兄妹が愛し合う「東京行進曲」

 というわけで(って、どんなわけなんや?)、溝口健二映画の登場です。
 1929年、日活作品「東京行進曲」。
 といっても劇場で観たわけではなく、たまたまテレビのCSのチャンネルで観たというのが何とも心苦しく、また、完全版ではありません。20分あるかないかの断片で、ここに日本のサイレント映画に対する現状がありますな。
 サイレント映画に限ったことではありませんが、殊に戦前の日本映画はフルムが失われ、すでに断片すら観ることができない作品が多数あります。多数あるというより、完全な形で残っているほうが奇蹟的というほうがいいのやら悪いのやら・・・(ほぼ完全版というか、少し欠損部分があるという作品も多いんでっさかい)。

 記録を調べると、この作品、本来はサイレントですが、テレビで観ることができた断片版はサウンド版で、弁士・松田春翠の映画説明が入ってます。
 冒頭、当時の東京・銀座? あたりの街の風景の実写フィルムが映し出されます。その風景に重なって流行歌が流れています。

 「昔恋しい銀座の柳、あだな年増をだれが知ろ・・・」

 当時、大ヒットしたという流行歌「東京行進曲」ですね。誠にもって退廃的といいますか、刹那的といいますが、メロディーも歌詞も投げやりな雰囲気で、歌は時代相を如実に反映させるといわれますが、まさに、その通りですな。
 1929年といえば、昭和4年。世界恐慌の波が押し寄せ、2年後には「15年戦争」と言われた戦争時代の幕開けが待っていたころですね。街の風景を捉えた実写フィルムは、束の間の平和をむさぼるような大都会・東京の「近代的風景」であります。
 

 断片フィルムですから、全部を観た時のようなことはいえません。ですが、この作品、まるっきり新派大悲劇です。新派物といえば、このころの溝口健二監督はたくさん作っております。
 とはいえ、都会に暮らす男と女を歌った流行歌「東京行進曲」と新派的な涙、涙のストーリーとの、この絶妙なアンバランスさは何ともいえず微笑ましいというか、「なんで、これで東京行進曲??」といいますか・・・。

 借金苦から芸者になった純情な娘(夏川静江)と金持ちの息子(島耕二)は愛し合っています。男の友人(小杉勇)も娘を愛しています。芸者になった娘に息子の父親で、放蕩三昧のオヤジ(高木永二)がしつこく言い寄ってきます。
 ところが、ひょんなことからオヤジは娘が、かつて捨てた女に産ませた実の娘であることが分かり、その事実を知った娘と息子は苦悶します。オヤジのほうも、実の娘に言い寄っていたことで、これも女遊びをして無情にも女を捨てた天罰だと悟り、大いに反省します。
 かくして、息子は娘を友人に譲り、傷心癒えないまま、横浜の港から日本を去っていきます。友人の妻となった娘は日本を去る息子の見送りに駆けつけ、息子の乗った船を見ながら涙を隠しきれません・・・。

 断片フィルムから分かるストーリーは、これだけです。これだけでも、ちゃんと一つのお話として繋がっていますよね。
 でも、息子と娘の二人は実は兄と妹だと分かり、男女の関係、さらには夫婦にはなれないということは分かっても、なぜ、娘が簡単に息子の友人の妻になったのか、そんなこと、ボクに聞かれても分かりません。
 友人にしても、いかに自分も娘が好きで、「ぼくたち、兄妹だったんだよ。一緒にはなれへん」という事情があったとはいえ、「はぁー、そうでっか」と娘を引き受けた心境、それも分からしません。
 断片フィルムで理屈を言ってても仕方おへんなぁー^^

 冒頭のタイトルで、入江たか子と瀧花久子の名前も出ていますが、断片フィルムでは入江たか子は影も形もありません。息子の妹で、友人が好きな役柄らしいですが、残存するスチール写真からでも分かるように入江さんはモボファッションに身を固めています。
 モボ・モガ。昭和初期、都会に忽然と現れたボダンボーイ、モダンガールですね。今風にいえば、見た目イケてるにーちゃん、ねーちゃん。
 のちに田坂具隆監督夫人となった瀧花久子は、ミルクホールの着物姿のウエイトレス役で、わけありげな笑顔でちょこっと出てきます。なんで、わけありげなのか、これも断片フィルムゆえ、分からないんですね。

 そんな映画「東京行進曲」の断片でした^^
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瀧花久子というと

かつての名花も、戦後はすっかりおばあちゃんでした。増村保造の『青空娘』の若尾文子の祖母役なんて、すてきでしたね。その瀧花久子は、名カメラマン、宮川一夫とマキノ雅弘の小学校の同級生だったはず(宮川一夫は確実ですが、マキノはあやふやです。)で、後年、名前は失念しましたが弟が日活でカメラマンとして活躍していますね。←宮川一夫の極秘インタビュー集のテープ起こしをしたので、そこで語られていました。
明日は、『簪』を観に行こうかと思います。
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