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2006-08-04

83)続『ご機嫌よう』の「安城家の舞踏会」

安城家の舞踏会


 前回の「安城家の舞踏会」で、書き忘れたことがありました。
 ひとつの映画について述べる時、あれもこれもと考えても全てを記すことはできず、ブロガー自身、あまりな長文は時間もかかり、訪問者の方々も退屈されると思うので適当に端折ったりもしています。

 さて、前回書き忘れたことといえば、安城家の当主(滝沢修)と愛人(村田知栄子)のことです。
 映画の中では、この愛人さんのことを舞踏会に集まった口さがない淑女たちは「安城さんのお妾さんよ」と囁き、愛人さんに対して見下したような視線を向けています。
 元・華族ばかりが集まる舞踏会に、この愛人も招かれたというのも次女の敦子(原節子)の計らいで、いかにも、これからの時代に向かって新しく生き直さなければならないんだという娘の強い意思が込められています。
 愛人は「お招きを戴いて迷ったのですが、やはりお邪魔しました」と遠慮気味に敦子に挨拶を述べますが、びっくりしたのは招かれた客たちばかりでなく、プライドの高い長女(逢初夢子)も同じでした。
 それは、さておき・・・。


 
 

 舞踏会も宴たけなわのころ、一階のホールを見下ろす二階から当主は横に愛人を立たせ、集まった招待客を前に彼女との結婚を宣言します。
 つまり、それまで「お妾さん」にしていた女性を正式に妻にすると、当主は決意を述べ、婚約発表をするわけで、このオヤジの決断が人生を投げていた長男にも再生への活力を与えることにつながっていきますが、この元・華族の当主が愛人を本妻にするという設定で、ボクは溝口健二の姉のことがヒントになっているんじゃないかと思いました。
 

 脚本は新藤兼人です。新藤兼人といえば、溝口健二と深い関わりのある人です。戦前の溝口健二の大作「元禄忠臣藏」(1941年)では美術を担当しています。また、シナリオライターを目指してからは溝口に師事していたことは彼の監督作品「愛妻物語」(1951年)にも描かれています。

 溝口健二は若いころ、まだ映画界に入る以前、生活の面倒を姉にパラサイトしていたこともよく知られています。
 姉は芸者で、ある華族の愛人でした。そんな姉に青年、溝口はたびたび金銭的に寄生しています。のちに姉はその華族の正式の妻として迎えられていますが、数々の女性とのスキャンダルや精神に異常をきたした奥さんの存在のほか、この姉とのことも溝口映画の女性像に大きく影響していることは簡単に推測できます。
 後年、新藤兼人は溝口健二の記録映画「ある映画監督の生涯」(1975年)を製作したくらいですから、溝口の私的生活を知らないはずがありません。それで「安城家の舞踏会」で元・華族の当主が周囲の批判や冷笑を承知で愛人を正式に妻とするシチュエーションは、案外、溝口健二からヒントを得たのではないか、と思ったのです。
 それだけのことです^^

 それにしても、映画の中で、この愛人が登場するシーンは何回観ても、スマートでお洒落なシーンですね。
 舞踏会が進むうち、ダンスナンバーがスローなテンポの音楽に変わると、村田知栄子扮する愛人が会場に現れます。女性は皆、ロングドレス姿の舞踏会におよそ似つかわしくない着物姿です。カメラはその後ろ姿を捉え、スローなテンポに合わせるかのように愛人は歩を進め、カメラもその速度に合わせて彼女の後ろ姿を追っていきます。

 まだ、この後ろ姿が映っている段階では観客には、この新たな登場人物が誰なのかは分かりません。それでいて、後ろ姿の着物の着こなし、やや右に上体を傾けて歩く姿に素人ではない、玄人筋の女性という雰囲気が感じ取れます。
 後ろ姿だけで、すぐに顔のアップにはならないので、新たに登場したこの人物に対する観客の注目度は高まります。この愛人も芸者という設定ですが、後ろ髪をきついほどアップに結い、後れ毛の乱れもありません。襟元にしろ、帯にしろ、崩れたところはなく、それだけで、この女性がどういう気性の人間かを観客に考えさせます。
 登場人物のこういう出し方って、役者にとっては自分に注目度が集まる役者冥利に尽きるショットだろうし、観客にとては次に何が起こるのか、ワクワクするような演出ですよね。
 
 
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