2006-08-01

81)いいお嫁さんになった「次郎長三国志」

 わがご贔屓・藤純子が結婚のため、女優を引退し、その結婚披露宴の席上、純子を女優として一から指導したマキノ雅弘が「純子は、いいお嫁さんになるために女優になった」と祝辞を述べたと伝えられています。
 実際の結婚に先立つこと10年、女優になったばかりの藤純子はスクリーン上で「いいお嫁さん」になっています。それが1963年から1965年にかけて製作された東映京都作品「次郎長三国志」シリーズです。

 マキノ雅弘の「次郎長三国志」シリーズといえば、1954年に作られた東宝版の同シリーズ全9作が映画評論家の山田宏一あたりから再評価の火の手が上がって以来、今では名作としてマキノ雅弘特集などの映画上映で観客を楽しませています。
 その後、同じマキノ雅弘の演出でリメイクされた東映版は全4部作ながら、やくざとしての次郎長の誕生から恋女房お蝶の死までを、マキノ雅弘と映画をプロデュースした俊藤浩滋との手の内にある俳優たちを配して手堅くまとめられた、楽しい「マキノ雅弘の次郎長映画」となっています。

 この映画で、純子は清水港の居酒屋の娘・お千に扮しています。
 東映版の同シリーズは4本作られていますが、純子が登場するのは前3本で、3本目の「次郎長三国志 第三部」で純子は「いいお嫁さん」になり、好きなパートナーをひそかに見つけて、さっさと結婚してしまいます。これが10年後、現実に起こり、われわれファンは、さっさと「結婚されてしまった」のですね^^
 1作目の純子は、次郎長の子分たちのアイドルです。
 次郎長の子分の中でも、特に押し掛け子分のように強引に次郎長の子分になった桶屋の鬼吉(山城新伍)と次郎長の喧嘩裁きに敬服して子分になった関東綱五郎(松方弘樹)の二人が純子に熱を上げ、お互い、純子の取り合いを展開します。
 男二人に挟まれた純子は画面に出てくるたびに笑顔を絶やさず、「綱五郎さん、好きよ」とか「鬼吉さんもいい人」などと言って、お友達つきあいをしています。要するに、煙に巻いているのも同然で、純子さん、なかなかしっかりしています。
 そこのところに気がつかない鬼吉と綱五郎は、3作目できっちり「泣き」をみることになります^^

 2作目では、次郎長一家が凶状旅(やくざが犯罪のため、ほとぼりが冷めるまで地元を離れる旅)に出て旅先での話が中心になるため、純子のお千ちゃんは「終」のエンドタイトルが出る直前、ほんのちょこっとしか姿を見せません。
 ラスト、次郎長一家の面々が凶状旅から清水港に戻ってきます。留守宅を守っていたお蝶(佐久間良子)や町の衆に混じり、お千も次郎長たちの帰りを出迎えています。ファンは純子を観るため、ラストまで辛抱しなければならない一編でした。

 3作目では、相変わらず、鬼吉や綱五郎は純子の尻を追いかけまわしています。純子も相変わらず、「あら、いやだわー」とか何とか言いながら、お友達しています。
 のぼせた鬼吉と綱五郎の二人、それぞれに純子と一緒に祭り見物に行く約束を取りつけた(本人たちは、その「つもり」です)まではよかったのですが、いざ、祭りの当日、純子が一緒に祭り見物にでかけた相手は鬼吉でもない、綱五郎でもない、まったく別の堅気の男性でした。
 そんな二人にもたらされる、純子の結婚話。純子ちゃん、アイドルをしながら、しっかり将来に向けて愛を育んでいたんですね。ホンマ、しっかりしてはります^^
 そして迎えた純子の結婚式の夜。想いきれない想いを抱いたまま、鬼吉と綱五郎はボロボロ泣きながら、花嫁姿の純子が乗った駕篭を担いで純子の新たな門出を祝ってやることになります。二人の男から、こんなにも想われた純子は「いいお嫁さん」姿を披露して新たな人生のスタートを切ることになりました。

 これで純子の出番は終わりますが、この東映版の「次郎長三国志」シリーズでは4作品とも、それぞれに、いい女が出てきます。
 1作目では、次郎長の友達で貧乏暮らしをしている男(藤山寛美)の女房・お徳。演じているのは、千原しのぶです。
 2作目では、まだ次郎長の子分になる以前の風来坊、森の石松(長門浩之)と微笑ましいやり取りを繰り広げる女賭博師の投げ節お仲。丘さとみが演じています。
 3作目は、お千の藤純子です。
 4作目は、石松の友達(待田京介)の女房。大酒飲みで、槍を振り回して気の弱い亭主を叱咤激励しますが、亭主をとても愛しています。南田洋子の出番です。
 いずれも、マキノ雅弘映画ではレギュラーの女優たちが、いい女を演じています。その分、肝心要の次郎長の女房お蝶が添え物的になっていることは否めません。4作目では、お蝶が亡くなるので、そのお蝶がストーリーの中で大きく出てきますが、南田洋子の方の活躍が目立って佐久間良子は、はかなげです。ま、次郎長や子分たちに見守られて亡くなっていくので、もともと、はかなげではあるんですけどね。

 余談ながら、2作目では次郎長の子分の一人、三保の豚松(佐藤晟也)の母親役で五月藤江と婚約者の娘役で宇治みさ子という元・新東宝の女優が出ています。
 五月藤江は、新東宝の怪談映画や怪猫映画には欠かせないおばあちゃんですね。
 宇治みさ子は、このシリーズでも次郎長の子分、法印大五郎に扮している名脇役、田中春男の娘ですね。純な田舎娘の造りで、ウブな娘を演じていますが、新東宝で主演映画を残し、さらに大映時代劇で年増な女にもなっていた、このころの宇治みさ子にウブな風情は感じられず、カマトトぶりが目立っているだけでした^^

 

 
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いまだ不勉強なもので、ヴィスコンティは寝てしまいます

続けて書き込みます。
私にとって、世評高いマキノの『次郎長三国志』(←東宝版)は幻です。東京では、繰り返し上映(私の確認した限りでも、10年前にフィルムセンターで、また三百人劇場のマキノ特集、そして今年になって渋谷で)されていますが、ここ二十年程、関西での上映は皆無に近い。私が気付いていないからかもしれませんけども、もしかしたら吹田あたりでやっていたかもしれせんね。ちなみに、東宝版は、BSを録画したので、それを観たのですが、東映版は、いまだに未見です。ビデオは出てましたっけ?

今夜は涼しい夏の外

 「次郎長三国志」シリーズの東映版のソフトは、まだ出ていないんですよね。東映チャンネルで放映されたかもしれないけど、テレビでは民放で放映されたきりですよね。なんせ、やくざ映画一家? が作っている映画なんで上品なBS2での放映も望み薄ですな。

 はて、さて、例のブログへの書き込み、読ませてもらいました。なんせ、高級なブログでっさかい、私ごときが何ちゃかんちゃ出る幕はありませんな。
 「地獄に堕ちた勇者ども」は、すごい映画でっせ。ボクは「ベニスに死す」よりも好きでんな。
 ブログ更新、期待しとります。

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