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2006-07-18

72)「うちら、肉体派ですよってにな」

 この休日、映画館めぐりをするには絶好の機会だったのですが、連日の30度を超える猛暑に塩をかけられたナメクジ状態になってしまい、もともと怠け度の濃い生まれつきなので大いに怠けておりました^^
 で、観た映画といえば、今春、CSのチャンネルで「豊田四郎の世界」があった時に録画しておいた京マチ子主演の「甘い汗」(1964年)一本きりという有様でした。この映画、モノクロですが、京マチ子が自堕落な女を好演しとります。

 京マチ子といえば、このところ、映画はおろか、テレビにも姿を見せていませんでしたが、今月、京都の南座で座長公演してはりますな。今年82歳。同い年の赤木春恵を相手役に、とりわけ暑い京都で熟女?パワー全開の様子はご同慶の至り・・・^^

 京マチ子は、戦後、登場したスター女優の代表格の一人ですね。
 「痴人の愛」(監督・木村恵吾、1949年)や「羅生門」(監督・黒澤明、1950年)、「偽れる盛装」(監督・吉村公三郎、1950年)などで肉体と言葉を武器に男たちと伍して自己主張するヒロインを演じ、まさに民主主義の夜明けだった当時の日本に現れた新しい女性像をスクリーンに刻みつけております。
 タイトルに掲げたセリフは「偽れる盛装」で京マチ子が演じた芸者・君蝶のひと言です。京マチ子といえば、ボクはすぐにこの映画を思い出してしまいます。もちろん、リアルタイムでこの映画を観てはいません(まだ生まれていなかったので・・・)。観たのは映画の公開から24年もたっていたころです。
 祇園よりも格下とされる宮川町で芸者稼業を営む君蝶が、欲と金で言い寄ってくる男たちを相手に一人、奮闘する物語で、パトロンをめぐって怒り心頭で乗り込んできた祇園の置屋の女将(村田知栄子)に、このひと言を発し、少し反り気味に体を揺すぶって挑発してみせます。因習にくるまれた京都の花柳界に忽然と現れた古い秩序など無視する闘争心剥き出しの女で、当時の流行語でいえば「アプレ」ぶりを披露しています。




 
 後年、年齢を重ねた京マチ子は、自己主張のはっきりしたキャラクターは「華麗なる一族」(監督・山本薩夫、1974年)で演じた女性秘書などに生かされていますが、どちらかといえば、テレビドラマにも出るようになったためか、自己主張する人柄よりも天然っぽい人柄という役が多くなっていきます(テレビでは過激な役柄は受け付けられないですよね)。映画でいえば「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」(監督・山田洋次、1976年)の死期が近い元華族の奥様が代表でしょうか。

 「甘い汗」は、ちょうどそんな京マチ子の端境期に当たっていた時期の作品でしょうか。豊田四郎の映画の中でもさほど評価を受けている映画ではないものの、ここでも京マチ子さん、吠えとります。吠えまくっておりますが、「偽れる盛装」や「羅生門」で演じた女とは異なり、きっちり抜けています^^
 もう決して若くはない、しかし、裸一貫でホステスとして暮らしてきた女が、京マチ子演じるヒロインです。
 のっけから客の取り合いでホステス仲間と取っ組み合いの大喧嘩をしています。ホステスといっても高級クラブのそれではなく、場末の、区画整理で取り壊されてもおかしくないような一角にあるバーのホステスです。豊田四郎らしい舞台ですね。
 喧嘩相手のホステスは木村俊恵。深作欣二監督の「仁義なき戦い」シリーズで(1973~74年)で金子信雄と名コンビを組んだ女優さんです(このシリーズの途中で故人になりました)。
 この映画の面白いのは、いろいろな女優さんが出ていることです。この場末のバーと隣り合っているおでん屋のおばちゃんが千石規子、ヒロインの母親でオロオロしているだけの老女が沢村貞子、ヒロインの妹分のホステスが池内淳子、ヒロインの高校生の娘が桑野みゆき(この親子を演じた二人の女優さん、二重瞼の整形跡がちょっと気になります^^)。
 それに、家政婦の秋子さんの市原悦子も後半、ちょこっと顔を出しています。今ではとても考えられないような役柄で、こういうのを見るのも楽しいですよね、古い映画というのは。

 一家七人がたった二間しかない小さな家で暮らしているヒロインは、貧乏から抜け出すため、いろいろとパトロン探しをします。ようやく金持ちの初老の男(小沢栄太郎)を見つけ、堅気の女らしく振舞いますが、すぐに馬脚を現して失敗してしまいます。
 そんなある日、昔馴染みの男と再会します。かつて漁師だった男は、今は手広く事業をしている様子で、ヒロインは胸のうちで皮算用します。男もヒロインになにか用件があるようです。この男を演じるのが中井貴一のお父さん、佐田啓二。
 男にうまい儲け話を持ちかけられ、これで貧乏から抜け出せると踏んだヒロインは男に言われるまま、妻を病気で入院させている商店主のおっちゃん(山茶花究)の篭絡に腕によりをかけます。
 ここからは、カトリーヌ・アルレーの「わらの女」ですね。つまり、女は男を騙しているつもりでも、男のほうが一枚、上手だったという筋運びですね。アルレーも女性なら、この映画の脚本を担当した水木洋子も女性、女のバカさ加減を冷徹に見ています。
 というより、一般に豊田四郎の映画に登場する男たちはおしなべて頼りなく、それに反して女たちがしっかり生きているのですが、この映画は男のほうが地に足をつけているような作品で、豊田映画の中でも珍しい系譜です。 かつて激しい自己主張で男たちと闘った京マチ子のヒロイン像の神通力も、この映画では通じなかったようです。
 
 
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京マチ子はノーパンガールだった!!

毎度。私も『甘い汁』は大好きな映画です。
でも、京マチ子という女優は、豊田四郎の映画のヒロインとしては、どまんなか過ぎて、逆にミスキャストかもしれませんね。かといって、京マチ以外では、あの映画は成り立たないでしょうね。
昔、小沢昭一がインタビューで、豊田四郎監督の映画で、京マチ子と共演した時、ラブシーンがあり、下半身をまさぐっていたところ、なんと京マチはパンツを履いていなくて、思わず興奮してしまったと語っていたのを聞いたことがあります。その時、映画の題名は明かさなかったですが、京マチで小沢昭一で、かつ豊田四郎なら、この映画しかありませんね。
でも、思えば、この頃の京マチはすごいですよね。例えば、『他人の顔』でいきなり熟女ヌードを披露したり、『黒蜥蜴』のようなミュージカルに挑戦したり、4、5年前の黒沢のドキュメンタリーで健在な姿を観ましたし、ここは思い切って、京マチ子のことを調べてみるのもいかも。ある種の日本映画の側面が見えてくるかもしれないや。

すごく良いスタイルだったそうです

この映画は大好きなのですが、実は目黒の東京映画撮影所での撮影中、私の大学の先輩がアルバイトで小道具をやっていたそうです。
彼の話では、もう40歳だったはずですが、すごくスタイルが良かったそうです。

この映画は、水木洋子の一種のプロレタリア文学、のようなものだと思っています。

また、撮影中に佐田啓二が急死してしまったため、船橋ヘルスセンターで佐田と再会した際のフル・ショットは、後で合成してはめ込んだものだそうです。

さすらい日乗さんへ

 いつも、ご訪問ありがとうございます。

 豊田四郎の映画は好きなので、「甘い汁」はたまたま観たのですが、おもしろい作品でした。
 京マチ子さん、表舞台から消えて数年。やっぱり「うちら、肉体派どすからな」と言い放つ君蝶姐さん、いいです^^

 また、お越しください。
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