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2006-07-15

71)ご町内映画の「男の顔は切り札」

 映画の冒頭、配給・松竹株式会社、製作・日本電気映画株式会社と大きくタイトルが出る「男の顔は切り札」は、マキノ雅弘監督による1966年の作品です。
 このころの「男の顔は・・・」と題する映画といえば、同じ松竹作品で加藤泰監督の「男の顔は履歴書」が有名ですが、どちらも安藤昇主演です。これは偶然ではありませんな。
 安藤昇といえば、やくざ出身の俳優として1960年代後半から70年代にかけて松竹や東映、日活の多くの任侠映画、実録やくざ映画に出演していますが(東宝映画にも出とりますな)、俳優以前は現実に東京・渋谷を本拠地にしていた戦後派やくざとして、また、ホテル火災でも名を馳せた某郵船会社社長襲撃でも知られています。昨年は彼が戦後、復員してからやくざとして頭角を表わすまでを描いた「渋谷物語」(監督・梶間俊一、主演・村上弘明)が公開されています。
 「男の顔は・・・」と題する両作品とも、このころから俳優として再生を始めた安藤昇を売り出そうとした映画です。前年の65年、「血と掟」(監督・湯浅浪男)で映画デビューし、明けて66年に主演した「男の顔は履歴書」は一人の医師と戦後の闇市を占拠する外国人グループとの闘いを通して加藤泰が先の戦争(天皇のお言葉みたいですな)を経た日本人のあり方を問いただした作品として知られています。
 続く「男の顔は切り札」は歴史の時間がポーンと過去に遡り、大正時代、東京・深川を舞台にした映画です。
 この映画、製作への過程がほぼ推察できます。
 
 安藤昇の売り込みを企画した松竹が製作を日本電気映画、略して日本電映に依頼、委託を受けた日本電映を率いるプロデューサー、松本常保が昔馴染みのマキノ雅弘に演出を依頼し、俳優の売り出しにかけては実績があるマキノ雅弘が監督を引き受けたという構図が浮かび上がります。
 日本電映といえば、同じ松本常保が代表者のエクラン社が前身ですが、このころは京都で主にテレビ映画を製作していたプロダクションで、60年代初頭のヒット作「琴姫七変化」は有名です。60年代半ばには時代劇のほかに「柔」や「姿三四郎」「柔道水滸伝」などをヒットさせ(テレビだから高視聴率を稼ぐ、ですな)、「柔」の主題歌を歌った美空ひばりはレコード大賞を受賞しています。のちに日本電映は大和新社と名を変え、松本常保最後のプロデュース映画として1981年の「炎のごとく」(監督・加藤泰)を残しています。

 さて、「男の顔は切り札」。
 安藤昇主演の映画ながら、奇妙なことになっとります^^
 どう奇妙なのか? といえば、主演のはずの安藤昇がなかなか登場しないのですな。かわって画面を所狭しと動き回り、物語を引っ張っているのは水島道太郎や長門裕之、津川雅彦以下、物語の中心となる元やくざ組織の子分だった面々です。
 東京・深川でやくざ稼業をしていた親分(原田甲子郎)が組を解散し、子分たちをそれぞれ正業に就かせて皆、平和に暮らしております。その平和が区議会選挙に出馬した親分が殺されたことで破られ、親分が子分たちを堅気の仕事に就かせるために多額の借金をしていたことから、親分所有の家作に住んでいる子分たちや長屋の住人は、かつて敵対していたやくざの親分(安部徹)から追いたてを迫られます。子分たちはいきり立ちますが、何とか我慢し、気のいい弁護士(西村晃)を中心に平和的解決を目指します。

 と、ここまでのストーリーで分かるように、この映画、マキノお得意のご町内ドラマなんですね。ご町内ドラマはマキノの「日本侠客伝」シリーズなどで繰り返し描かれています。あるいは「次郎長三国志」シリーズも、その範疇に入るでしょう。「藤純子引退記念映画 関東緋桜一家」ではラスト、鳶の元締め、片岡千恵蔵も「河岸の、ご町内の掃除は済んだんだぜ」と言っています。
 「男の顔は切り札」で、ご町内の面々に扮するのは先に上げた水島、長門、津川のほか、東千代之介、品川隆二、小林勝彦、柳生博、杉狂児、それに南田洋子に藤山寛美たちで、これってマキノ作品お馴染みの役者ばかりです。そこに当時、日本電映の主役スターだった平井昌一、和崎俊也のほか、珍しいところでは轟夕起子、菅井きん、園佳也子なども顔を揃えています。

 この面々が安部徹一派との闘いに苦戦しているところへ、ひょっこり現れるのが旅のやくざ、安藤昇で、別の男と恋仲になっている芸者の南田洋子とはかつて恋人同士だったというオマケ付きで現れます。しかし、主演スターの登場は映画の始まりからおおよそ小一時間経過しております。この扱いは主演というより、客演ですね。
 マキノ雅弘の苦労がしのばれます^^
 安藤昇主演の映画を引き受けたはいいけれど、この当時の安藤昇を映画の頭から出したのでは、とても映画がもたないな、と判断したのかもしれません。事実、まだ安藤昇は表情も硬く、セリフもイケてません。安藤昇は、映画の最初から出てきても大丈夫な高倉健や鶴田浩二ではなかったんですね。
 なら、いっそ、おいしいところだけを主演スターに食わせようとし、映画の構成を組み立て直したのでしょう(脚本は宮川一郎)。まだ素人同然の主演スターが登場するまで、ご町内ドラマとして自分の映画のレギュラーメンバーで話を進め、そのご町内の衆を救うヒーローとして映画の後半からの安藤昇のご出座となったのでしょう。
 安藤昇は軍隊時代の部下だった平井昌一の消息を求めて深川に現れ、そこでかつての恋人の南田洋子と再会し、ご町内に降りかかった難儀を見過ごせず殴り込みをかけ、最後、ご町内の面々に見送られて官憲に引き立てられるところで映画は幕となります。
 

 
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