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2016-05-18

つっころばしの「三百六十五夜」

 三百六十五夜 160521


先の大戦終了から3年経った1948年製作の新東宝のメロドラマでおます。
 小島政二郎の小説を館岡謙之助が脚色、監督はまだ若かった市川崑でおます。映画は前編、後編の二部作で封切られておりますが、その後、総集篇として一本の映画にまとめられたようで、よほどヒットしたのか、普段とんと映画には縁のないわが母なども若いころに観たと言っておりましたな。
 今回、ボクが観たのもその総集篇のほうで、CS放送で流れたのをキャッチ。本来、前後編の2本の映画を2時間少々の一本の映画として観るのでおますから「あれ、辻褄合ってないじゃん」なんてところもおますねんけどね(笑)

 戦前からの二枚目スター・上原謙と同じく戦前からの娘役スターだった山根寿子との悲恋ドラマで、この2人に上原謙を追いかける高峰秀子が絡むという塩梅。デコちゃん、この映画の6年後に小豆島の先生を演じとります。歴史に残る東宝争議があった年の映画で、
争議がきっかけで山根寿子、高峰秀子は長谷川一夫や大河内傳次郎らとともに所属していた東宝から離れ、争議がきっかけで生まれた新東宝の映画として出演したのでおますやろね。

 それはさておき、この映画のイケメン・上原謙は、この手のドラマらしく、つっころばしでおます。
 つっころばしーちょっと肩でもつつけば、すぐに転んでしまいそうな色男で、金のない頼りなさが身上で、そのくせ色恋には積極的ながら何の力もない男のことでおます。
 昔から色恋のドラマで主人公は多く、つっころばしが定石で、この映画も伝統的な定石を踏まえているわけでおます。

 上原謙さん、親が決めた政略結婚の話から逃れて大阪から東京に逃げてきます。結婚の相手は金持ちのお嬢ちゃんの高峰秀子というわけで、デコちゃん、珍しく大阪弁に挑戦しとります。活発なお嬢ちゃんで、父親が東京にも事業の手を延ばしているため、時々東京にも現れるという設定で、この高慢で気の強いお嬢ちゃんを徹底的に嫌い抜いている上原謙さん、デコちゃんが慣れない大阪弁を駆使しているというのに、大阪出身の青年はなぜか標準語なのでおます。

 さて、上原さんが下宿先に選んだのが、閑静な住宅地に住む山根さんチでおます。実の母親の吉川満子となぜかチック症の気があるみたいなお手伝いさんの一の宮あつ子の女ばかりの家でおます。上原さん、山根さんをひと目見て山根さんに強く心を魅かれちゃいます。早速、つっころばしの本領発揮でおますな。

 ところが……。



三百六十五夜2 160522
敵陣に乗り込んだ上原さん、あえなく撃沈。嫌われ者のデコ
ちゃんがかいがいしく介抱

下宿先の娘と思われた山根さん、実は結婚しており、しかし、夫は戦争に行ったままで、その夫の帰りを待つ身なのでおます。さすがの色男の上原さんも相手が人妻と分かれば、出しかけていた手も簡単には出せまへん。
 しかし、あろうことか山根さんも「娘と思ってくださっても結構ですわ」と意外な言葉を発し、山根さんのほうも上原さんと会って嫌な気持ちじゃなかったんでおますな。
 映画の後半、病気に倒れた母親も2人のことを認めており、今はの際の母親の願いもあって2人は母親の枕頭で三三九度の盃を交わすことになりますが、ありゃ、山根さん、夫の帰りを待つ人妻じゃなかったの? なんでおますな。
 夫は死んだのか、それとも別れたのか、総集篇では、そこんとこ、何の説明もおません。まだ盃事だけで入籍こそしてまへんが、これじゃ山根さん、重婚になるやんかでおます。ここんとこ、正規の前後編の映画ではどうなっているのか、もう確かめようもおません。

 それはさておき、本来なら山根さんにとってうれしかるべき愛する人との盃事になるはずでおますが、もうこの時点で山根さんの気持ちは上原さんからちょっと距離を置いているのでおます。
 それというのも、上原さんのつっころばしのおかげで、誤解が誤解を招き、山根さんは上原さんから絶縁を言い渡されていたのでおます。どう弁明しても一本気な上原さんは山根さんを受け付けようとせず、悩んだ末に恋敵のデコちゃんに「あの人のことはよろしく」と会いに行った後のことで、しかい、病床に伏す母親には本当のことはいえまへん。

 デコちゃんはデコちゃんで、どう立ち回っても上原さんは振り向いてくれもしまへん。さすがの気の強い娘さんも「私の負けかもね」なんてベッドにあおむけになって自分の敗北感を味わっております。

 ふたりの女を不幸にしている上原さん。何やら最近の芸能ゴシップめいとりますが、そもそもの原因が上原さんの実家が傾き、150万円の金が必要となります。当時としては大金でおます。でも、上原さんにはそんな大金はおません。思い余った山根さん、愛する人のために借金をします。借りた相手はデコちゃんの会社の東京支店の責任者の堀雄二君。ところが、上原さんと堀君は因縁の仲で、金持ちの坊ちゃんである上原さんと叩き上げでのし上がってきた堀君とはもともとソリが合わしません。
 
 そんな相手から金を借りてきたと知り、上原さんと山根さんの仲もおかしくなります。この借りた150万円の小切手が母親の別れた亭主の河村黎吉が金の無心に来た時、母親が目を離したスキに盗まれてしまいます。
 このんとこもおかしな設定で、応接間の机の抽斗に小切手が無造作に入れられてあり、おまけに何の脈略もないのに、その抽斗が開けられたままで、これでは誰が来たって「さぁ盗んでください」と言わんばかりの設定でおます。ここで後の不幸を盛り上げるため、どうしても訪ねてきた父親に小切手が盗まれなアカン状況設定というのは分かりすぎるくらい分かるのでおますねんけどね。
 さらに山根さんの不幸は続きます。
 自活の道を選んだ山根さんが面接を受けた雑誌社があやしげな会社で、山根さん、社長の田中春男に勧められるままモデルになることになり、その着替えの最中の模様を写真に撮られ、それが世間に出回って上原さんの知るところになります。

 SNSなんて、なかった時代、どう出回って社会の顰蹙を買うようになったのか、そこんとこも説明がおません。なのに、このことを知った上原さんは山根さんに絶縁を言い渡します。金を盗まれ、恋人にも捨てられた山根さん、借金のために家は堀君に取られ、仕方なくお手伝いさんの兄で、提灯屋を営む清川荘司のボロ家の二階に厄介になり、そこで母親は心労が祟って入院という図式になります。
 
 一方の上原さん、実家のために金策に走り、大阪にまで行ってくるのでおますが、メドは立たしません。上原さんが大阪に街を彷徨するシーンで、当時の大阪駅周辺が実写で捉えられとります。カメラは駅頭を俯瞰気味のロングショットで捉えてますが、阪急百貨店らしいビルの外壁に阪急電車の案内表示が見え、闇市こそ出てこないものの、まだ平屋の家並みの光景は、今からほんの40年ほど前のままの光景でおます。今でこそ、再開発のおかげで大阪駅周辺の光景は生まれ変わっとりますが、まだこの時代に生まれてはいなかったものの、このロングショットは、ボクにはいつか見たことのある景色なのでおました。

 誤解を解きもせず、「私は純潔です」と言う山根さんを振り棄て、言い寄ってくるデコちゃんも受け付けず、金もできず、万策尽きた上原さんに残された道はただひとつ、酒におぼれることだけでおます。こうして、つっころばし街道まっしぐらなのでおます。
 一方、山根さんは裏で堀君とつながっている社長の田中春男の誘惑から逃れ、雨の降りしきる中を草履も履かず、持っていたハンドバックも持たずに逃げ出してくるのですが、通りかかった男に助けられます。この男は貧乏な絵描きの大日方伝で、山根さんは彼の絵のモデルになり、完成した絵が展覧会に出品され、来場者の評判を集めます。しかし、これが例の社会に出まわった写真の女という負のイメージも一緒に。

 大日方伝は、ちょこっとしか出て来ず、山根さんの事情を知って上原さんに通りかかりに意見めいたこともささやいているのでおますが、以後、出番はなく、途中で立ち消えちゃった感じでおます。戦後、大日方伝は一家でブラジルに移住するのでおますが、まだ移住前のころだったもでは。シナリオライターの笠原和夫の著書に、このころの大日方伝との関わりが記されており、それを考えればちょっと興味深く、「笠原和夫が書いていたのは、このころの大日方伝なのか」とボクなんか、なっちゃいます。

 その後、いろいろあって、面白いのは、あれほど上原君に「自分は潔癖だ」と訴えていた山根さんが終盤、強い女に生まれ変わっちゃってるんですね。三三九度の後、死んだ母親の墓参に同行した上原さんにも冷え冷えとした態度しか見せず、自分たちを不幸に陥れた堀君を殺す覚悟で、堀君とダンスなんか踊っちゃってるのですから。ダンスの場に乗り込んできた父親が図らずも娘の犯行を防ぎ、自ら殺人を犯すので山根さん、人を殺さずに済むのですが、女も腹が坐れば強いのを示す下りでおます。

 結局、誤解が解けて上原さんと山根さんは元のサヤに収まるのでおまり、振られたデコちゃんも父親の会社の不正経理の発覚で師直の手が延びる中、涙を隠してゴルフにいそしんだりするのでおますが、強くなった山根さんに対して上原さんは仲直りはしたものの、ずうとつっころばしのまんまだったというメロドラマでおました。

 後年、美空ひばり、高倉健、朝丘雪路のトリオでリメイク(1962年、東映東京、監督・渡辺邦男)されとりますが、リメイク作品で上原さんの役を演じている健坊もつっころばしなのかな? いややでぇ。

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