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2006-05-23

49)彼岸花が哀しい「日本女侠伝 血斗乱れ花」

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 万博(エキスポ70)が開かれた翌年、1971年といえば、わがご贔屓・藤純子の女優引退の前年ですが、この年、純子は6本の映画に出演しています。
 正月映画用の「女渡世人」(監督・小沢茂弘)に始まり、「日本女侠伝・血斗乱れ花」(監督・山下耕作)、「緋牡丹博徒 お命戴きます」(監督・加藤泰)、「女渡世人 おたの申します」(監督・山下耕作)、「日本女侠伝・激斗ひめゆり岬」(監督・小沢茂弘)、「任侠列伝 男」(監督・山下耕作)で、6本のうち、最後の「任侠列伝 男」を除く5本の主演作品が並んでいます。
 「なんや、やくざ映画ばっかやないか」と言うなかれ。藤純子は任侠映画で花が咲いた大スターだったのですから。

 花が咲いたといえば、シリーズ4作目の「日本女侠伝 血斗乱れ花」は、タイトルバックから映画のそこかしこに彼岸花が咲いています。よく花をあしらった山下耕作監督ならではの映画ですね。
 彼岸花と山下耕作との取り合わせでいえば、「関の彌太ッぺ」のラストシーンを思い出さずにはいられません。この映画ではムクゲの花が堅気の世界とやくざの世界の結界として象徴的に使われていますが、彼岸花のほうは決闘に赴く主人公の関の彌太郎(中村錦之助)の行く末を見送るかのようにラストシーンのローアングルでとらえた道端に咲いていました。
 同じように「日本女侠伝 血斗乱れ花」でも、彼岸花は夫(津川雅彦)を亡くした純子扮するヒロインの、さらに心を通い合わせた男(高倉健)とも死別してしまう運命を予感するかのように真っ赤ではあるけれど、はかなげに咲いて効果をもたらしています。

 この映画は、任侠映画版「細うで繁盛記」です。
 「細うで繁盛記」?? この時代より少し前に大きく視聴率を稼いでいた新珠三千代主演のテレビドラマで、大阪出身のヒロインが熱海の傾きかかった旅館を立ち直らせるという花登筐原作の根性物語です。
 大阪出身でいえば、あるいは山崎豊子の小説「花のれん」の任侠映画版といってもいいかもしれません。いずれも、道楽者の夫に先立たれたヒロインが奮闘して商売に成功する話ですが、やはり、この映画でも純子は家業そっちのけで石炭発掘に明け暮れる夫を持った大阪・船場で生まれ育った女性を演じています。
 男がダメなら、おんなが頑張る。小説、映画、テレビ、舞台などに限らず、日本社会に根付いている伝統的な作劇法のひとつですよね。


 「日本女侠伝 血斗乱れ花」では、冒頭、純子は丸髷姿も初々しい商家の若ごりょん(御寮人)さんとして登場します。
 その初々しさを一層際立たせているのが、はんなりした、それでいて意思の強さを感じさせる純子の大阪弁です。大阪弁といっても昨今の吉本新喜劇で聞かれるような河内弁混じりではありません。
 このシリーズ初めての方言で、大阪女らしく、この作品での純子は最後まで大阪弁で通していますが、映画で和歌山生まれで、大阪で育った藤純子が大阪弁をしゃべるのは1965年の鈴木則文監督のデビュー作「大阪ど根性物語 どえらい奴」以来、6年ぶりのことでした。

 さて、こんな若妻ぶりの純子を中心にクレジットタイトルまでの導入部分では、脚本を担当した野上龍雄のそつのない筆運びで家業に身を入れると誓った夫がカネを持って出奔するまでのヒロインを取り巻く状況が描かれます。親類の叔父(内田朝雄)の嫌味な小言、借金取りへの言い訳のあと、石炭道楽の夫をつかまえて小言を言う純子は妻というより、腕白小僧を持った母親のような雰囲気を漂わせています。男たちが純子に託した「夢」がここに表れていますよね。
 タイトルのあと、純子は夫がいる九州の鉱山に現れます。すでに、この時、純子はある決意を秘めています。しかし、夫にその決意を話す間もなく、落盤事故でようやく探り当てた石炭のかけらを握ったまま、夫は死んでしまいます。その夫の最期を見届けた純子の決意はいよいよ固まっていきます。
 
 純子の決意とは、夫の残した鉱山で本格的に石炭事業に乗り出すことです。大阪を引き払い、背水の陣で臨みますが、いかんせん、素人です。石炭発掘に従事するまともな鉱夫一人見つけられません。
 それを助けるのが高倉健扮する川船頭です。まず、自分の父親で石炭に神様といわれるほど石炭に詳しい老人(水島道太郎)を紹介し、純子は協力を仰ぎます。最初は素人の道楽と純子を軽視していた老人は実際に鉱山を調べて興味を持ちます。
 以後、純子には鉱夫の手配、掘り出した石炭の流通経路の確保、そして出水による事故など、山あり谷ありの苦労がテンコ盛りのように用意されています。おまけに純子に敵対する鉱山経営会社の社長(大木実)や、その幕下の鉱山主(遠藤辰雄)たちの横紙は、毎度のことながら任侠映画お馴染みの展開です。
 そんな純子を陰になり、日向になって助けるのが健さんです。これも、お約束の設定です。純子の協力に絡み、健さんは途中で殺傷事件を起こして塀の中の暮らしを味わったりします。いい男も大変です^^
 
 「日本女侠伝」シリーズは純子の着物物と洋服物に分かれており、前2作の着物物は純子が芸者という役柄上、必ず舞いも見せています。着物物に属する「血斗乱れ花」の純子は芸者ではありませんが、やはり、ここでも舞いを披露しています。
 それは、純子が健さんへの別れを秘めたメッセージとして登場します。
 たびたびの大木実たちの嫌がらせで純子の炭鉱経営は難航するばかりでなく、水島道太郎や数人の鉱夫も死なせてしまいます。純子は自分がいる以上、石炭業界は混乱するばかりだと考え、撤退を決意します。その意味を込めた宴会の席で純子は健さんに「目つむらんと最後まで見てておくれやっしゃ」と念を押し、地唄舞を披露します。
 ところが、ソフトフォーカスに浮かぶ、この舞いのシーン、おかしいんですよね^^
 健さんには「最後まで見ていてね」と言っているくせに、観客には最後まで純子の舞いを見せてくれないのです。地唄の途中から渡辺岳夫のタイトル音楽が重なり、観客は次のシーンへ運ばれてしまうんですね。

 それはともかく、純子の決意を秘めた舞いに触れ、今度は健さんのほうの決意が促がされます。その別れのシーンで健さんは純子に自分の想いを吐露します。
 「あんた、わしの惚れちょる人じゃけん、夢ば壊さんでつかぁさい」
 ぶっきら坊で、ちょっとフィルムの尺を食っているような高倉健の、美しい未亡人への愛の告白です。
 純子は男が斬り込みに行くつもりであることを察知しています。だから、「行かへんと約束しておくれやす」と必死に懇願します。純子の言葉を受けて健さんは黙ったまま手にしていたツルハシを純子に手渡して伝馬船で去っていきます。ツルハシを渡したことは純子の言葉を受け入れた証しですが、ここでなんで伝馬船なの? などとチャチャを入れてはいけません。
 ここは、男のおんなを想う心と、おんなのひそかに男に対する思慕が交錯するクライマックスなのです。
 
 この映画に感激されたブログつながりの管理人・ククさんは、この健さんが去っていくシーンで、いきなり「日本侠客伝 花と龍」の主題歌が流れるのにびっくりされたらしいですが、案外、この当時の東映映画って、そういうことには無頓着だったんですね。
 同じようなことがシリーズ最終作の「激斗ひめゆり岬」にもあり、純子が菅原文太のあとを追ってトラックを走らせる道行きのシーンで、明らかにそれまでの音楽とは音色の違うド演歌のメロディーがカラオケで流れたりしています^^もちろん、そのメロディーは「激斗ひめゆり岬」の主題歌ではありません。

 この作品でも前2作の着物物と同じく、純子は愛した男とは結ばれない哀しい運命に翻弄されるヒロインでした。そんなおんなの悲劇を弔うかのように、ラストシーンでも彼岸花が川べりに立つ純子の周囲に咲き乱れています。
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頑張ってますねえ

たまには、こちらにもカオ出してみました。
さっきONTV MOVIE(http://movie.ontvjapan.com/)等というサイトを見てたのですが、このサイト生年を入力すると、当時公開されていた映画を調べることができます。
ワタシの生年には、年間なんと430件。この数字、2000年ごろの実績とさしてかわらないみたいですが、これを多いととるか少ないととるか、う~ん。
ちなみに、何が公開されていたかはナイショ(ソッコーで歳がばれる)。てへっ

はじめましてのカノカノエさんへ

初めまして。ご訪問ありがとうございます。
紹介されたサイトをのぞいてみましたが、はぁ、便利なサイトがあるもんなんですね。カノカノエさんが、いつの年代なのかは、ナイショにしておきますね^^
今後とも、わがブログをよろしゅうおたの申します。

日劇会館で

どうも、毎度おなじみ、名乗る程の者じゃありませんです。
今頃、もしかして、東京でしょうか? でも、16mmではねぇ。私は、少し自慢になりますが、35mm版(字幕が入っていましたけど)を二回も観ていますけど。エッヘン。
しかし、加藤泰は観てない作品が多すぎ(加藤泰どころか、東映作品は)です。来週の土曜日から新世界の日劇会館で『真田風雲録』がかかるみたい。この映画は、恥ずかしながらビデオでしか観てないんですね。ですから、この機会に日劇に行こうかと思います。同時上映はマキノの『男の顔は切り札』です。なんとワンダフルな二本立てでしょうか。青山さんもどうです?新世界で串カツでも食いませんか?私はたぶん、来週末から、二、三週間、仕事がありませんので、まあまあ暇です。とほほ。
もっとも、その間に、いろいろとリサーチを進めようと思いますけど。

恥ずかしながら・・・(長い! よって以下カットします)

 16ミリでもようやくと思ったのに、知ったのが遅かったけん、当日は他用があるばってん、泣く泣く、また幻の映画ですたい。ま、追っかけはアイドルファンの専売特許じゃなかけん、これからも追いかけるとね^^
 よかね、日劇の件。付き合うばってん、一度、電話ばしてほしか。わしゃ、土曜か火曜なら都合のよかごとあるけん、ぜひ行きまっしょ^^
                緋牡丹お龍の申し子でした

高倉健の最高傑作

貴方様のブログにめぐり合い、記憶がよみがえってきました。
昨今、高倉健さんが話題となっておりますが、私は、何といってもこの「日本女侠伝・血斗乱れ花」
が最高傑作と思っています。
高倉健が藤純子に伝える言葉「・・・・惚れちょるお人じゃけん・・・」と人に前に「お」入れていたような
記憶があります。昔のことなので定かなものではありませんが。なかなか情緒あふれるシーンもあり
たとえば相合傘のところなど、長く私の記憶に残っております。

ありがとうございました。
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青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
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