2014-12-09

踏んだり蹴ったりの上野介は「刃傷未遂」

 長谷川一夫の座付き作者的監督だった加戸敏監督の「刃傷未遂」(1957年、大映京都)は、有名な忠臣蔵騒動を逆手に取った、ちょい面白い時代劇の小品で、あまりの面白さにテレビで観ていてショット撮影を忘れてしまいました。だから、今回は冒頭の画像はおません(笑)。

 主演はもちろん、長谷川一夫。といっても話の中心になるのは泉州・岸和田の小大名である長谷川一夫とは腹違いの弟に扮した勝新太郎でおます。まだまだ『不知火検校』や『座頭市』シリーズは先の先の、口元の締まりが気になる白塗りスターだったころでおます。
 忠臣蔵騒動が起こる一年前、長谷川一夫の大名にも朝廷から江戸幕府への使者として江戸へ下る勅使・院使の世話係の命令が下ります。世話係のチームリーダーはもちろん、忠臣蔵騒動と同様、幕府の典礼係の筆頭である吉良上野介でおます。このおじいちゃん、ここでも強欲な老人として描かれております。扮するは柳永二郎。
 当然、忠臣蔵騒動の時と同様、彼の指揮を仰ぐ世話係の大名から相当なワイロを期待している老人でおます。しかし、長谷川一夫は清廉潔白な堅物で、必要以上の贈り物など必要なないとしているのは、忠臣蔵騒動の浅野内匠頭と同じでおます。清廉潔白はいいけれど、それだけではどうなるかわからないと心配したのが奥方(三田登喜子)でおます。
 そこで相談を持ちかけられたのが、江戸の市井で三味線の師匠などをして気ままに暮らしている勝新でおます。

 大名の堅苦しい生活から逃げ出した勝新、当初は乗り気ではなかったのでおますが、美貌の兄嫁の懇願を断わり切れず、兄貴の一大事とばかり、上野介のやり口の裏をかく謀略に乗り出すのでおます。



 謀略のため、兄嫁から潤沢な資金を渡された勝新は、まず吉良家にも出入りするお太鼓持ちの骨董屋(山茶花究)を抱き込み、馴染みの湯女の糸重を見請けして吉良家に女間者(スパイ)として送り込みます。この湯女に扮しているのは、まだ若さがあふれ、かわいかったころの岡田茉莉子でおます。
 茉莉子さんをスパイに送り込んだのも吉良家には、まだ湯女だったころの茉莉子さんに執心していた用人(小川虎之助)がおり、茉莉子さんにこの用人を籠落させ、勅使・院使の日々の世話の詳細を引き出そうとしたからでおます。
 勝新の狙いはまんまと成功。
 「あれ、おかしいな?」と思ったのは上野介でおます。毎日、江戸城へ登城しても、作法を教えてもいない長谷川一夫が先手を打つようによく知っており、おまけに態度がデカい。作法を知らなければ自分にへりくだった教えを請うはずなのに・・・・。長谷川君のほうもなぜか知らないが、毎日、翌日の儀式の手取りが知らされるので、よくわからないまま、それに従っているのに過ぎないのでおますが、やがて、弟の陰ながらの応援だと知るところとなります。
 やがて、迎えた接待最終日の翌日。茉莉子さんは庭先に忍んで勅使・院使が江戸城に登城した時の出迎えの大名の着座の位置を聞き出そうとしますが、ほかの侍女の呼び出しで聞けずに終わってしまいます。

 長谷川君のほうも毎日届いていた報告が最終日に限って届いていないのを不審に思い、それでも周囲に他言できず、最終日当日、仕方なく登城の駕籠を進めます。その途次、行列に駆け込んだのは茉莉子さんでおます。彼女の必死の探索で辛うじて知った着座の位置を記した書状を手渡そうとしたのでおます。普通なら大名の行列を邪魔すれば即座に手討ちでおますが、事情を知る長谷川君、茉莉子さんを捕縛して処置を後にして登城を急ぎます。
 いよいよ、勅使・院使の到着を前に到着が遅い長谷川君をあなどり、天下を取った気分の上野介じいさん。そこへ登場した長谷川君、「わしが接待の正使だ」とばかり上野介を一喝し、無事、出迎えの儀は事なきを得ます。そればかりばかりか、院使のおじさん(黒川弥太郎)がくだけたお公家さんで、その後に予定されている「能楽は退屈じゃ」と言って膝もとの火鉢を片腕で持ち上げると、それに呼応した長谷川君と力比べになり、なんと長谷川君はかたわらにひかえていた上野介じいさんを軽々と持ち上げ、廊下のスミに投げ捨ててしまいます。

 わけがわからず、廊下に投げ出された上野介じいさん、気絶してしまうのでおますが、目覚めたボンヤリした頭で思わず、長谷川君に憎悪した自分が城中で長谷川君に斬り付けるという図を想像してしまいます。「おのれ、城中でなければ・・・」と悔しがるのでおますが、駆け付けた侍に助け起こされた時、自分の佩刀に手をかけていて侍に注意されてしまいます。
 かくて勝新の謀略は見事に成功し、兄の長谷川君は大役を果たし終え、勝新には捕えておいた茉莉子さんが用意されていたのでおます。

 忠臣蔵騒動の悪役・吉良上野介を徹底的にコケにし、悲劇に終わった浅野内匠頭にも機知に富んだ側近がいれば上野介の裏をかくこともできただろうに・・・というお話でおますが、事実は、このお話の一年後の忠臣蔵騒動でおます。このお話が事実あったのかどうかは知りまへんが、もし、あったのなら長谷川君は自分の経験談を浅野内匠頭にそっと教えてあげられなかったんかいなとも思わせる娯楽時代劇でおました。『丹下左膳』の林不忘の原作を手だれの伊藤大輔が脚色したものでおます。


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