2013-11-20

チラシを見ても映画を観たことにはならねえ23

              チラシ1 赤木131119

 東京・池袋の名画座で今月25日まで開催中の中村錦之助17回忌特集の『錦之助よ、永遠なれ!』は錦之助が最も躍動感のあった時期の映画20本が上映される催しでおますが、東映時代の錦之助と最も共演作が多かった2代目東映3人娘のひとり、丘さとみをトークショーのゲストに迎えた初日は超満員だったとか。
 ええことですなぁ。
 初日の上映作品はマキノ雅弘監督の『弥太郎笠』(1960年)と『清水港の名物男 遠州森の石松』(1958年)でおました。ともに若い男女のどうしようもない恋心をマキノ流に魅せる作品でおます。
 その『遠州森の石松』のほうに四国・金比羅宮の門前町にある女郎屋のやり手ばあさんを演じているのが赤木春恵さんでおます。今では東映時代劇映画を観ると現役で俳優を続けているのは、この人と里見浩太朗(浩太郎)くらいという時代になりました。ほかの名だたる主役俳優、脇役俳優、相手役女優などはほとんど鬼籍に入るか、退役組になってはります。

 赤木春恵さん、丈夫で長持ちしてはります。現在89歳とか。さすがに最近では歩行に杖が必要なようでおますが、おそらく現役女優では最高齢の部類に入ってはると思われます。
 戦前に女優人生をスタートさせて、以後、脇役女優一筋70年余。テレビドラマに頻繁に出ることにより、単なる脇役から一枚タイトルの主役級に出世しはりましたが、いかんせん、あまりに長く脇役を続けていたせいか、脇役疲れをして主演を張っても華やかさはなく、地味なおばちゃん止まりであることは残念でおます。
 そんな彼女にふさわしい役柄なのがその彼女が初主演している老人介護のお話で、久しぶりの森崎東監督の『ペコロスの母に会いに行く』が公開されとります。
 名画座で上映されているのではない、全国公開の新作映画で、いまだに東映時代劇の中でひとり奮闘してはる赤木春恵さんの「祝初主演」を記念し、今回のこのコーナーは新作映画からでおました。





              チラシ2 京マチ131119

 阿佐ヶ谷の名画座では来月から来年1月にかけて、『昭和の銀幕に輝くヒロイン第71弾 京マチ子』が予定されとります。
 「遅かったやないか、京マチ!」で、今回いつものようにお江戸のお友達さんが送ってくれたチラシの中で最も食指のそそられた催しのひとつでおます。
 上映作品が奮っとります。野淵昶監督の「滝の白糸」(1952年)は村越欣弥が森雅之でおますが、プレイボーイの森雅之が苦学生なら白糸が騙されそうでおます。その森雅之続きでいえば成瀬巳喜男監督の「あにいもうと」(1953年)や黒澤明監督の「羅生門」(1950年)は当然入ってますな。溝口健二を強く意識していたと言われた時代の伊藤大輔監督の「春琴物語」(1954年)や長谷川一夫が片岡千恵蔵ばりにピストルを手に暴れる珍品「三人の顔役」(1960年、監督・井上梅次)、京マチ子が必死に貧乏から抜け出そうとして抜けられない豊田四郎監督の「甘い汗」(1964年)のほか、毒婦といわれた高橋お伝に扮する「お傳地獄」(1960年、監督・木村恵吾)や三船敏郎と夫婦になり、2人が教育パパ・ママになる「馬喰一代」(1951年、監督・木村恵吾)は映画小屋に掛かること自体が珍しい作品でおます。
 忘れられた監督のひとりでおますが、木村恵吾は50~60年代、女優として成長していく京マチ子を撮り続けた監督でおます。

              チラシ3 昭和ねえ131119

 打ちっぱなしのコンクリート床にピシッと閉じないドアからすきま風がかすかに入り込む木造の映画小屋を想起させる催しが渋谷の名画座で公開中の『追悼!天尾完次』と同じく渋谷で始まったばかりの『森﨑東と十人の女たち』でおます。
 ズバリ、昭和のおねえちゃんたちに出会えます。そこには骨盤を削っとるんかいなと思わせる今時の痩せガールとは比較にならない安産体型をし、気前よくふくよかなオッパイも披露していた池玲子アネゴ、ライバルの杉本美樹ちゃん、倍賞美津子、安田(現・大楠)道代のおねえさま、沖山秀子、緑魔子のアングラ派、ドーンと芳醇なボディを見せていた川崎あかねに美保純、演技かラリっているのか分からなかった芹明香、なぜか太ってからのほうがよくなった松坂慶子、美人薄命を実践した夏目雅子、過ぎ去った遠い日に輝いているマドンナたちでおます。

 ノスタルジィはこのあたりまでにして『追悼!天尾完次』の特集にはびっくりさせられました。あの世に旅立った元東映映画の名物プロデューサーの軌跡を振り返る特集で、並んだ作品名を見れば一般にもよく知られている映画が揃えられとりますが、この名物プロデューサーとはいえ、この人の名前でどれくらいのッ観客が来るん? という無謀な企画だったからでおます。
 入りはどないですねん、お友達さん!

              チラシ4 のれん131119

 書店でよく見かける追悼コーナーのごとく、たくみに世の中の流れを掴んで上映プログラムを決めてはる池袋の名画座では終わってしまった特集でおますが、『巨星墜つ 追悼山崎豊子』がおました。生まれた大阪・船場の昔話を書くお嬢さん作家から銀行、官庁、政府などの不正を暴く社会派作家へと成長しはった女性小説家でおましたが、一方で盗作疑惑でしばしば騒がれたおばさんでもおました。
 阿佐ヶ谷の名画座で公開を控えているのが『にっぽん暖簾物語』でおます。
 暖簾。古来、商売の象徴とされ、商売人が精神的にも物理的にも最も大切にしたものでおますが、そのことからでもわかるように何らかの「お商売」(関西風に)をしてはる人たちの映画を集めた特集で、今月下旬から来年1月中旬まで全24本の上映が予定されとります。
 そのほとんどが、かつての日本映画界が得意としていた併映用サイズの作品ばかりで、メーン作品として封切られた作品のほうが少のうおます。しかし、B級、C級作品もあったのがかつての日本映画で、今ではムニャムニャ……。
 これ、観たい特集でおます。

              チラシ5 犬塚131119

 ザ・ドリフターズが出現するまでのお笑いコントグループで人気を集めていたクレージー・キャッツも次々と生息場所を変え、今では最も目立っていなかった犬塚弘ひとりがこの世に住んではります。その彼を中心にした『犬塚弘ワンマンショー』が池袋の名画座でおました。わざわざワンマンショーって断わらなくても、もう独りしかいないのにねぇ。
 この催しではクレージー全員の出演映画、メンバーの誰かが出ている映画など14本が集められてました。

 阿佐ヶ谷で予定されているのが『昭和の銀幕に輝くヒロイン特別篇 天地真理』でおます。
 1970年代初頭、なぜかアイドルとして人気を集め、毎日のようにテレビに顔を出していた天地真理の絶頂期の映画「虹をわたって」(松竹、1972年、監督・前田陽一)と「愛ってなんだろ」(松竹、1973年、監督・広瀬襄)のたった2本の作品で特集を張るとは、さすが何たってアイドル!
 でも、音程外しまくり、セリフ棒読みのこの団子鼻のねえちゃんにボクは少しもキョーメイできまへんでした。

 大森の名画座では『名画座2本立て』と称して、今月面白い作品が組まれてますな。殺人を犯した藤山直美が逃げに逃げて、でも、どこかヌケているところがあるキャラが笑いを誘ってやまない「顔」(2000年、監督・阪本順治)なんて、もういっぺん観てみたいもんでおます。

              チラシ6 原&小津131119

 最後に登場願うのは、名画座の正当派常連、小津安二郎&原節子でおます。
 前回のこのコーナーでも少し触れましたが、神保町では今月下旬から来年1月中旬にかけて、現存する小津映画をサイレントとトーキー作品に分けてぜぇ~んぶ公開予定でおます。
 しかし、いつまで小津やねんという気がしないでもおません。
 というのも、先日、送ってきたお友達さんの写メに雑誌の電車吊り広告があり、そこに大きな活字で「小津の入り口。小津安二郎に未だ踏み込めないあなたに」とおました。またぞろの小津映画入門の雑誌特集でおますやろね。
 お友達さんに僕が送った返信は「ほんとは小津からの出口を考えなあかんねんけどね」でおました。

 名画座ではおませんが、神奈川県鎌倉市の川喜多映画記念館で特別展として来年1月下旬まで開かれているのが「~永遠の伝説~映画女優原節子」でおます。
 まだ原節子の女優草創期の時代だった「新しき土」(1937年、監督=アーノルド・ファンク)をはじめ、成瀬巳喜男監督の「めし」(1951年)、「山の音」(1954年)、「驟雨」(1956年)、「娘・妻・母」(1960年)、『敦子は反対でございます』といきなり振り返る吉村公三郎監督の「安城家の舞踏会」(1947年)、「惚れております!」の木下恵介監督「お嬢さん乾杯」(1949年)、黒澤明監督の「わが青春に悔なし」(1946年)や「白痴」(1951年)、小津安二郎が「秋日和」に続いて未亡人を演じさせた「小早川家の秋」(1961年)など10人の原節子を楽しんだ後、1962年、最後の出演映画「忠臣蔵」(監督・稲垣浩)へ終息する催しでおます。
           
 
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