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2013-09-03

チラシを見ても映画を観たことにはならねえ21

              有馬稲子130903

 前回、大慌てでシリーズ20をアップしたためか、いつもの東京のお友達さんが溜まっていたらしいチラシをまたまた送ってくれました。そのラインアップを総覧して「相変わらず、お江戸の名画座は頑張ってござる」でおます。今、映画会社の倉庫に眠っている膨大な映画群のうち、どれだけがデジタル化されているのかは知りまへんが、35㍉フィルム、あるいは16㍉フィルムだったら、その中から目的の映画を取り出してくるのでおますから名画座のプログラム編成係も大変な仕事でおます。「それが仕事だから」と言ってしまえば、それまででおますけどね。

 さて、東京・阿佐ヶ谷では「昭和の銀幕に輝くヒロイン」で既に終了した白川由美編に続いて登場したのが有馬稲子でおます。今月から11月初旬までの全9本のロングラン上映でおます。
 その前に……。
 東宝所属の女優だった白川由美。不思議な女優さんでおます。「代表作は?」と問われて「んん…」となってしまう女優で、もちろん、主演映画はおません。しかし、東宝のサラリーマン物の常連であり、ホームドラマ、SF映画、喜劇映画、スポ根映画など、いろんな作品に顔を出しとります。冷たいほどの美貌ながらセリフ棒読みの演技、表情とも硬く、女優として評価されるより、旦那の二谷英明との間にもうけた一人娘が、かつて郷ひろみと結婚していたことから「リーのお母さん」としてマスコミをにぎわせた人でおます。

 にぎわせたといえば、有馬稲子も人後に落ちない女優でおます。デビュー当時から「生意気女優」のレッテルを貼られておりましたが、言い換えれば若手女優の多くが映画会社の方針のまま人形であった時代、自分を失うまいと敢然と孤軍奮闘した女優だったともいえます。今は自分の昔話を語るご婦人に変化してしまってますけどね。
 自ら不倫関係にあったと認めている市川崑監督の「愛人」(1953年、東宝)は森本薫の原作で、舞台では森本薫と不倫関係にあった杉村春子の当たり役でおます。映画では、杉村が演じた映画監督の奥さんを越路吹雪が演じ、親子3人で一人の男をめぐって泣き笑いする娘たちに扮しているのがネコちゃんと岡田茉莉子。かつて30数年昔、浪華でもホール上映でこの映画がかかり、見逃したことが悔やまれます。
 この特集ではほかにネコちゃんは不倫の恋に生きる女(「わが愛」1960年、松竹、監督・五所平之助)や子だくさんのかあちゃん(「かあちゃんすぐのいやだ」1961年、松竹、監督・川頭義郎)佐田啓二・岡田茉莉子のコンビでヒットした「集金旅行」の続篇として製作され、華麗なファッションの人気作家(「危険旅行」1959年、松竹、監督・中村登)ネコちゃんが芸術づくきっかけといってもいい「充たされた生活」1962年、にんじんくらぶ、監督・羽仁進)など、さまざまな女の顔を見せとります。

長谷川伸130903

 ネコちゃんの映画が出たから、かつての旦那さん、中村錦之助(のちの萬屋錦之介)の映画も。
 といって、今回は錦ちゃん映画の特集ではおません。池袋では「大衆文芸の父 長谷川伸と股旅映画の世界」が既に始まっとります。すべてが長谷川伸の原作ではおませんが、13日まで日替わりで22本。
 長谷川伸?? 現在はそんなものでしょう。
 時代劇映画が絶えて、必然的に『縞の合羽に三度笠』の股旅映画も日本映画から絶滅しとります。昭和の映画を彩るジャンルの一つでおますな。着物姿が貧弱でしかない平成の若手俳優の主演で復元されたとしても、まして平成の新ジャンルが確立されても、すぐにナンチャラ事務所のアイドルたちに席巻されてしまう21世紀の映画界にあっては夢は壊れるばかり。
 ただ、作品の主人公たちとアイドルたちの実年齢は不思議に符合してるんでおますな。それほど、かつての股旅映画はおっちゃんたちが若者を演じていたのでおます。

 今回は長谷川伸の股旅物戯曲の代表作「関の彌太ッぺ」、「瞼の母」の映画化作品を見比べることができるのがミソ。1959年の大映作品(監督・加戸敏)は、はっきり言って退屈。話を膨らませすぎ、中田康子の女親分が出てくるなんて、永田大映そのものでおます。1968年の大映作品「二匹の用心棒」(監督・三隅研次)を題名だけ見て「関の彌太ッぺ」の映画化作品と見抜けた人は当時、どれくらいいたのでおますやろか。当時はマカロニウエスタンの最盛期で、タイトルにその影響を受けていることがありありでおます。ここは彌太ッぺの妹の部分がオリジナルな成沢昌茂の脚本を得た東映作品(1963年、監督・山下耕作)にトドメを差すのは誰しも認めるところでおますやろね。
 実母と生き別れになった長谷川伸の体験をもとにした「瞼の母」のトーキー版(1931年、監督・稲垣浩)は長谷川伸が実母と再会した後に改作された原作をもとにしているためか、最後、主人公の番場の忠太郎はめでたく実母のおはまと親子名乗りをしてはります。時間的制約の中で慌ただしく製作された加藤泰&中村錦之助版(1962年)は繰り返し上映されてますなぁ。

 長谷川伸作品以外ではアウトローにならざるを得なかった旅のやくざの成立を彷彿させているのが「木枯し紋次郎 関わりござんせん」(1972年、東映、監督・中島貞夫)でおます。ここでは幼い紋次郎が口減らしのため間引きされかかったのを助けた姉が登場し、その姉の生い立ちとからめて当時の極貧の農民の哀しさが冒頭、紋次郎が助けたために一家心中してしまう子持ちの女の悲劇が象徴的でおます。
 「木枯し紋次郎」シリーズはテレビの市川崑らによる中村敦夫主演の「木枯し紋次郎」シリーズのヒットを受けて映画化されたのでおますが、1作目の「木枯し紋次郎」(1972年、東映、監督・中島貞夫)は紋次郎得意のセリフ「あっしには関わりのないことでござんす」の誕生譚ともいうべき作品でおます。

 大川橋蔵主演の「旅傘道中」(1958年、東映、監督・佐々木康)は橋蔵のヒットシリーズ「草間の半次郎」物の1本であり、マキノ雅弘監督の「弥太郎笠」(1960年、東映)はモノクロ作品ながら中村錦之助・丘さとみのコンビでマキノ型恋愛教室のお手本のような作品でおます。「用心棒市場」(1963年、東映、監督・小沢茂弘)はフレッド・ジンネマン監督の「真昼の決闘」をもじったような西部劇調映画でおます。

 【追記】チラシを送ってくれているお友達さんが、4日の「大衆文芸の父 長谷川伸と股旅映画の世界」にでかけたらしく、連絡をくれました。
 その日観た作品は市村泰一監督、橋幸夫主演の「瞼の母より 月夜の渡り鳥」(1963年、松竹)と大曾根辰保監督、高田浩吉主演の「抱寝の長脇差(ながどす)」(1960年、松竹)の2本。ボクはどちらも観てまへん。滅多に上映されることもないので、作品の出来云々よりレアな組み合わせやと思います。
 お友達さんの感想は案の定……。「月夜の渡り鳥」は当時、若手の歌謡曲歌手として人気を博し、市川雷蔵や大川橋蔵とも共演映画を残している橋幸夫の『歌う番場の忠太郎』であることは予想でけますが、お友達さんは「妙に明るい不思議な忠太郎でした」だって。「下町の太陽」で勤労青年の男女を照らし続けていた倍賞千恵子が相手役で、居酒屋のおねえちゃん。父親が志村喬で「鴛鴦歌合戦やがな」と揶揄しとります。ちなみに、忠太郎の母親を演じているのは高峰三枝子おばさまでおます。
 「抱寝の長脇差」は「つまんないリメイク」とバッサリ。そりゃそうやろね、歌う映画スター高田浩吉と松竹時代劇映画の大御所、大曾根辰保の組み合わせで面白い時代劇はかつて観たことおまへんもん。悪役で出ている須賀不二男と山茶花究の登場で、いささかの溜飲を下げたようでおます。
 いやいや、ズッコケるほどの映画に接して、お友達さんは異な体験をされたと遠い浪華の空の下から東のほうを見やり、ボクはうらやましいのでおます。



 



               怪奇映画130903

 阿佐ヶ谷で開催中なのが得意な風貌で東宝のアクション映画で活躍した佐藤允の映画を集めた「漢 佐藤允! BANG!BANG!BANG!」でおます。よく知られた岡本喜八監督の「独立愚連隊」(1959年、東宝)から加藤泰監督の珍しい現代劇映画「みな殺しの霊歌」(1968年、松竹)まで主演・脇役映画を合わせて全32本。この特集こそ、映画会社ノフィルム倉庫をひっくり返して探しだしたという印象が強うおます。

 渋谷では名画座上映こそふさわしい「妄執、異形の人々傑作選」。しかし、これは8月いっぱいの上映でおました。西村晃主演の「怪談せむし男」(1965年、東映、監督・佐藤肇)や谷ナオミの「怪談トルコ風呂」(1975年、東映、監督・山口和彦)、池内淳子の「花嫁吸血鬼」(1960年、新東宝、監督・並木鏡太郎)、水原真知子の「怪談色ざんげ 狂恋の女師匠」(1957年、松竹、監督・倉橋良介)など、往時の夜店のアセチレンガスの臭いを思わせる映画でゾクゾクしまんな。

               三国連太郎130903

 これも終了した特集ながら池袋では「渾身の役者魂 名優・三國連太郎を偲ぶ」がおました。
 世に広く名優、怪優と膾炙されたおっちゃんでおましたが、僕には凝りすぎちゃって今ひとつ。ようやく肩の力が抜けて自然体になったなと思えたのは、ほんのちょっとの出番でおましたが、2011年の「大鹿村騒動記」の仏像を彫る老人役でおました。犬飼多吉はラストで演技が破たんしており、スーさんもわざとらしい無理しているという印象が拭えまへん。

 渋谷で今月下旬から始まるのが「実録!犯罪列島2」でおます。
 冤罪の恐怖を描いた「真昼の暗黒」(1956年、現代ぷろだくしょん、監督・今井正)や「証人の椅子」(1965年、山本プロ、監督・山本薩夫)は戦後の映画界で左派の旗手だった監督の代表的な映画で、名もなき庶民が権力を相手に闘い続けるお手本のような作品でおます。
 「日本の黒幕(フィクサー)」(1979年、東映、監督・降旗康男)はヒットしたディスカッションやくざ映画「日本の首領(ドン)」シリーズから派生した映画でおますが、アデランス着用のフィクサー・佐分利信が不気味というより滑稽で、右翼道場を持ちながら少年をかわいがり、愛人役の松尾嘉代の力み返った演技も空回りしている、何や訳わからん作品でおました。
 ほかに「八つ墓村」(1978年、松竹、監督・野村芳太郎)に登場する山崎努のモデルになった「丑三つの村」(1983年、松竹・富士映画、監督・田中登)や人を殺して逃亡を続ける藤山直美がどこか滑稽で哀しい「顔」(2000年、松竹ほか、監督・阪本順治)、小林桂樹が熱血の弁護士を演じている「首」(1968年、東宝、監督・森谷司郎)、反社会組織の代表者一家の内幕を描いた「制覇」(1982年、東映、監督・中島貞夫)など、食指の動きそうな作品がそろっていますな。

              清水宏130903

 名画座の特集ではおませんが、東京国立近代美術館フィルムセンターでは「生誕110年 映画監督清水宏」がおましたんやね。清水宏は、いつもチラシを送ってくれるお友達さんがかつて熱心に作品を漁ってい映画人でおます。公費で映画を収集・保存しているお国の施設の上映でおますからやけくそのように清水宏映画が並んど、ります。入場料が廉価なので近ければ通いたくなる小屋でおますが、お友達さんによると時間を持て余したリタイア組の憩いのサロンと化しているそうでおます(京都府立文化博物館も同じですけどね)。
 鎌倉市川喜多映画記念館では「東宝映画のスターたちPart2」が始まります。
 戦前の「鶴八鶴次郎」(1936年、監督・成瀬巳喜男)から1983年の市川崑監督の「細雪」まで10本の東宝映画を彩ったスターには長谷川一夫、山田五十鈴、淡島千景、森繁久弥、池部良、岸恵子、小林桂樹、新珠三千代、上原謙、杉村春子、京マチ子、司葉子、団令子、星由里子、山口百恵、三浦友和、内藤洋子、黒沢年男、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子などが顔をそろえてはります。

               秋の名画特集130903

 最後に神保町では「秋の洋画名作集Ⅱ」が始まっとります。
 映画名だけを列記すると「シベールの日曜日」「荒野の用心棒」「昼下りの情事」「007危機一発」「荒野の七人」「情婦」「卒業」「夜の大捜査線」「華麗なる賭け」「ドクトル・ジバゴ」「北北西に進路を取れ」「第三の男」「春のッソナタ」「冬物語」「夏物語」「恋の秋」の16作品ながら、打ち切りが伝えられているTOHOシネマズのクラッシック映画祭のようでおます。




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昔の映画ばかり観ていて、ふと新作を観ていないことに気付きます。

それでも宮崎駿の『風立ちぬ』だけは観ました。中学生の頃に『ルパン三世 カリオストロの城』を観て以来、この人の作品だけは観続けてきました。

とはいえ、この人の「脳内パラダイス」には全く納得は出来なかったんですが、『風立ちぬ』だけは本当に久しぶりに感動しました。気がつけば『カリオストロの城』以来かと。

その宮崎駿が引退するということで、記者会見が開かれましたね。恐らく映画監督の引退記者会見は日本映画史上初めてのことではないでしょうか。あの黒澤明さえ、末期は病床で引退の意思さえ公には披露できなかったのですから。

で、数年前のことですが、電車に乗っていたら、背広姿のサラリーマンが宮崎アニメの資料を広げ、上司らしき人とパブリシティーについて、一生懸命話していました。この2人は、どうも広告代理店勤務のようで、宮崎アニメは金を生み出す木という程度にしか思っていないのでしょうね。

今後、ますます日本映画は二極化していくのでしょうね。儲かる映画と、そうでない映画とで。

で、古い映画は無くなっていくのでしょう。デジタル化は現状では全く進んでいません。午前十時の映画祭は、来年は日本映画篇に突入するみたいで、何本かは劇場で上映するに足りうるデジタルマスターが作られるでしょうが、それ以外の右往左往はなかったことにされかねないでしょうね。だから、いつ観るか、今でしょう。
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