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2006-05-18

46)大人の映画だった「五番町夕霧樓」

 東京では加藤泰特集が終わったと思えば、田坂具隆特集なんですね。
 田坂具隆? 今の若い人たちにとっては、よほどの映画好きでない限り、黒澤明や小津安二郎は知っていても加藤泰と同様、?が付く映画監督になっているかもしれません。
 戦前の「五人の斥候兵」(1938年)や「路傍の石}(同)、「土と兵隊」(1939年)、「海軍」(1943年)、戦後では「女中っ子」(1955年)や「乳母車」(1956年)、「陽のあたる坂道」(1958年)、「若い川の流れ」(1959年)、「はだかっ子」(1961年)、「ちいさこべ」(1962年)、「冷飯とおさんとちゃん」(1965年)などの作品があります。広島での被爆体験がある映画監督で、長崎での被爆者を主人公にした「長崎の歌は忘れじ」(1952年)という作品もあります。1974年、72歳であちらの世界に引っ越されています。

 1963年の「五番町夕霧樓」も、具隆さんの代表作の一本といってもいい作品ですね。遊郭という風俗業界のお話にもかかわらず、淫に堕すことなく、落ち着いた画面構成と確かな演技者を得て、娼婦になった女の子と幼馴染で修行僧の男の子との悲恋を描いたドラマです。
 以前、わがブログでも取り上げた晩年の作品「湖(うみ)の琴」(1966年)同様、原作・水上勉、脚本・鈴木尚之、撮影・飯村雅彦、音楽・佐藤勝、そして佐久間良子主演の映画です。佐久間良子の出世作ですね。
 

 今、なにげなく「そして佐久間良子主演」とキーを打ちましたが、ボクが初めてこの作品を観た時、最初のスタッフや出演者紹介のクレジットタイトルで場内にささやかな笑いが起こったことがありました。
 通常、映画の主役はベテランであれ、新人であれ、出演者のクレジットではトップに登場しますが、この作品は違いました。バックに西陣織の着物の図柄をあしらったこの映画の出演者のクレジットでは最初に共演者の木暮実千代、丹阿弥谷津子、岩崎加根子の三人が登場し、主役の佐久間良子は一番最後にクレジットされています。
 そして、その佐久間良子の名前が登場する前に「そして」というタイトルが入っています。ここで、ささやかな笑いが沸き起こったんですね。趣向を凝らした主演女優の登場ですが、きっと多くの観客は「なんと気をもたせたことか・・・」と思ったのかもしれません。
 クレジットといえば、監督名も最後に登場するのが普通ですが、多くの具隆さんの作品に限っては最後に出ないのも特徴です。プロデュサーや原作者、脚本家の名前が出たあと、撮影監督とともに具隆さんの名前が登場するのが常でした。

 この映画が公開された時、この作品は成人指定でした。その後、ずっと長く成人指定の扱いを受けており、現在、この作品がリバイバル公開されるとしたら同じように成人指定になるのかどうか分かりません(R15くらいになるのかな?)。
 映画の舞台になるのが京都の遊郭であり、セックスシーンといえないまでも娼婦を演じる佐久間良子と、そのパトロン役の千秋実との絡みの場面も出てきます。当然、業界用語や「大人だけの会話」、あるいは娼婦と客との会話などが飛び交います。やたら女性の裸や合体シーンが出てくるわけでもないのに、成人指定となったのは、そのためだったのでしょう。
 ところが、この成人指定だったため、公開当時、ボクはまだ18歳以上にはるかに及ばない子どもだったため、この作品を観ることはできなかったのです。子どもがこんな映画を観て理解できるんかいなという疑問はさておき、きっとボクはませていたんでしょうね^^ その当時、自分が観たいと思った映画の一本でした。
 映画は成人指定なのに、水上勉の原作のほうは成人指定でなかったので、映画を観る前に文庫本で原作を買って一生懸命読んだ憶えがあります。それで書かれている内容が理解できたのかどうかはあやしいものです。
 そんな観たい映画が田舎の映画館に回ってきた時、ボクは中学生になっていました。通学路の途中に映画のポスターが貼られている場所があり、そこに長襦袢姿の佐久間良子が横たわったこの作品のポスターが貼られて前を通るたびに横目で睨んでいました。
 睨んだ先は佐久間良子のなまめかしい肢体ではありません。ポスターの中に印刷されている「成人映画」という、なんとも非情な四文字です。この四文字のため、映画好きな中学生は観たい映画を観ることができなかったんですね。田舎ですから、成人指定をかいくぐって映画館にもぐりこむというような冒険もできません。
 
 ボクが、この映画に出会うには、それからさらに数年を要しました。すでに、その時は20歳になっていました。依然、成人映画の指定があったものの、だから今度は大手を振って劇場に入ることができました。
 かつて、京都・三条に朝日会館という劇場がありました。その劇場が閉館することになり、その記念に京都を舞台にした映画、あるいは京都で製作された映画が上映されることになり、この作品もそのうちの一本に含まれていたのです(京都が舞台ながら「五番町夕霧樓」は東映東京撮影所作品です)。
わずか一日だけの上映でしたが、京都へひとっ走りし、すでに褪色の激しいフィルム状態ながら、よくやく積もる恨み? を晴らすことができたのでした。
 今から思えば、ビデオやDVDなど想像もしていなかった時代です。自分のことながら、こんなかわいいことをしていたんですね^^
 ちなみに、この閉館記念で一日交替で上映された作品はほかに黒澤明監督の「羅生門」(1950年)、溝口健二監督の「雨月物語」(1953年)、伊藤大輔監督の「反逆兒」(1961年)、小林正樹監督の「切腹」(1962年)で、伊藤監督や水上勉、淀川長治などの講演つきという上映会なのでした。
 「反逆兒」も、その内容以上に思い出深い映画ですが、それはまた別の機会に・・・・・・。
 
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金閣寺いろいろ

この映画が題材にした金閣寺炎上事件は、三島由紀夫原作で市川崑が監督、雷蔵主演で『炎上』という形で作られていますね。こちらの遊女役は中村玉緒でした。なんとも、あっけらかんとした、現代的な女性でしたね。
また、未見ですが、三島の原作を高林陽一監督が再映画化したヴァージョンや、『五番町夕霧楼』も松阪慶子でリメイクされたりしましたね。まあ、松阪慶子版に関しては、裸ばかりがフューチャーされていてような気がします。確か、山根成之の遺作になったのではなかったでしょうか?

また閉館の噂が…

 最近は、私もですが、お互いにアップが少なくなりましたね。お疲れかな?私は相当きています。ああ、温泉とか行きたい。
 で、2ちゃんねるをのぞいていると、青山さんの好きな、温泉の横にある、動物園の近くの映画館が、やばいらしい。会員の更新が半年になり、来年以降の予定は未定だとか。
 私もたまに行くけど、いつもがらがらか、入っていても招待券ばかり。ジェットコースターの音が響く時もあるし、支持されるのは難しいかも。
 でも、あの近辺も、一時期程、怪しいところじゃなくなりましたねぇ。コンビニとかも出来たし。土日は家族連れが多いですなぁ。時代の流れかしら。

やっぱりね^^

ヤノシゲユキさんへ

 やっぱりね、そうじゃないかと思いましたよ。会員契約が1年から半年に来月から変更になることは映画館からの連絡で知りましたが、あそこまで閉館になったら、どーしよう。足を向ける映画館がまた減る!!
 映画館もガラガラなら、遊園地もガラガラ、当然、テナントもシャッター商店街状態で、時間調整でよく使っていた喫茶店も先日行ってみると、なくなっていました。完全に大阪市の政策の失敗ですね。周辺もひところより随分一般的になってますね。ユニクロが出来た時はびっくりしました^^休日は確かに家族連れやカップルも歩いていて、それはそれでいいことだと思いますが、映画館の行く末がねぇ・・・・・・。

 先週は更新を随分怠けました。そちらは、お疲れのようですね^^
 さてさて、加藤泰DVDボックス入手しましたよ。これから、どっぷり加藤泰ワールドに浸るんやーーーー!!
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