2013-06-19

大学生はもがき、苦しむ「ボクセカ」

              僕たちは世界を130618

 カンボジアの山村に貧しい子どもたちの学校を建設しようと、悪戦苦闘する日本の大学生たちの実話をもとにした映画「僕たちは世界を変えることができない。」が公開されたのは2011年でおます。ハチャメチャな無頼派に憧れ続けた深作欣二監督の息子、深作健太の監督作品で、彼は1972年生まれ。この時は30歳手前になっていましたが、映画に出てくる学生たち、殊に向井理演じる主人公の屈折した大学生活の日々にシンパしとります。

 何の力も資金もない学生たちがカンボジアの、都会から遠く離れた村に学校を建設する夢を抱き、事実、学校は建設されるのでおますが、実話であっても劇映画として再現されると、どうも面映ゆいものでおます。それが美談であれば美談であるほど、実際に携わった人たちの苦労が絵解きされると劇映画として観ているほうにとっては「あ、そうなの」といった感慨でしかなく、それは観るほうの感性が鈍磨しているためか、それとも伝えるほうの感性が観客に深く訴えてこないためなのか、どうも困りものでおます。

 むしろ、この作品では学校建設までの苦労話より、学校建設という目的を持った学生たちの日々の自堕落な生活ぶり、必死になって目的に向かって気負い立ってはいない日常のさまざまのエピソードをドキュメンタリー風なカメラワークで、芝居臭くならないように綴っているほうがリアル感があり、面白いのでおますな。






 医大2回生の向井理君は、ダラダラとした日々を送る毎日でおます。これといった目的を持っているわけでなく、いわば無為徒食のような明け暮れで、しかし、何かしたい、しなければという渦巻くマグマだけは心の中に持ってはります。
 でないと、のちのち「カンボジアに学校を!」という呼びかけに食いつくはずはおませんもんね。
 ここでミソなのは、彼が大学の「2回生」という点でおます。
 多分、厳しい受験競争を生き抜いてきたであろう大学生が、ようやく落ち着いて自分を見つめ直すのは大学生になって2年経ったあたりからでおますからね。大学初年度は、ようやく受験競争から開放されてホッとする段階であり、また、高校までとは異なった大学という異星にも似た環境に慣れるのが精いっぱいという時でもおます。
 いつの時代でも、この年代の若者は変わらないようでおます。

 そんな彼がある日、たまたま目にした「カンボジアに学校を建てよう」と呼びかけているチラシと出遭い、彼は興味を魅かれます。魅かれたのはいいけれど、彼独りでは何にもできまへん。だから、彼は柄本佑、窪田正孝の同級生に声をかけ、まずは資金集めからスタートします。声を掛けられた柄本、窪田の両君もまた、向井君同様、無目的な大学生活を過ごしていたのでおますな。
 手っとり早い資金集めは大学生らしく、クラブでの合コンでおます。参加者から参加費を募り、経費を差し引いた分が学校建設の資金になるという、簡単なもくろみでおます。しかし、向井君たちは合コンの場では全然イケてないんですな。ろくに女の子たちと会話もでけまへん。とはいえ、資金が合コンですぐに集まれば、人生に悩み事も揉め事も起こらしません。
 そんな彼らのリード役が、チャラ男を絵に描いたような松坂桃李君でおます。合コンで資金を稼ぐというのも、彼の入れ知恵によるものでおます。医者の息子の松坂君は経済学部の学生で、クラブでナンパするのも日常茶飯のようでおますが、父親の跡を継ぐというふうなのがミソでおます。彼もまた一見、チャラチャラしていながら、何かを必死に求めていたのでおますな。

 ところが、向井君たちの壮大な夢はよろしおますが、「カンボジアって、どんな国?」って問われて何とも答えられまへん。なぜなら、カンボジアに対する知識、何にもおまへん。
 そこで、向井君たち4人は学校建設に先立ち、カンボジアという国を知るため、視察旅行にでかけます。このあたり、何と呑気といおうか、いかにも薄っぺらな学生ぶりがよろしおま。
 ここから映画は、カンボジアという国を知るお勉強タイムとなります。日本語が達者なガイドのおじさんに連れられ、向井君たちは観光巡りではない、貧困にあえぐ民情視察というべきか、70年代のポルポト政権下に行われた国民虐殺の歴史を知るわけですが、このお勉強は映画の中の若者4人だけでなく、観客も学べる勉強タイムでおます。独裁政権がいかに国民に犠牲を強いているかは、カンボジア一国に限らず、昔から日本にもあったし、今もなお、世界中で起こっていることでおます。

 この視察旅行で松坂君は体を壊し、一足先に帰国します。向井君が付き合っているガールフレンドの村川絵梨ちゃんに空港までの出迎えを頼むのですが、これが仇になり、向井君が帰国すると松坂君と絵梨ちゃんができちゃってたというのも笑わせてくれます。いかにも、いかにもな若者の世界の出来事でおますな。自分のカノジョだった女の子が自分の友達とくっついたというのは、よく聞く話でおます。
 ファミレスで松坂君ら2人が向井君に打ち明けるのですが、できちゃってたことを知った時の向井君のぼう然自失の表情が抜群でおます。
 独りになった向井君はのちに1時間1万2千円のデリヘル嬢の黒川芽以を買うのですが、これも秀逸なエピソードであり、哀しいまでの男にとってはよく分かる性(さが)でおます。なぜなら、向井君、デリヘル嬢を買ったのにHしませんねん。突発性のEDというのではなく、小汚い部屋を掃除して臭い消しのスプレーまでしてデルヘル嬢の到着を待っていたのに、結果は時間いっぱいデリヘル嬢の膝枕で寝ていただけでおます。

 どこまでもイケてない向井君、あとは学校建設にまい進するしかおません。松坂くんや柄本君、窪田君、そして彼らの目的に賛同した数人の学生と無事に学校の建物を完成させるのでおますが、以後は涙と汗のお話でおます。





 
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