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2013-06-15

女だって黙っていない「琴の爪」

              琴の爪130613

 真山青果の連作戯曲「元禄忠臣藏」のラストを飾るエピソードの映画化作品でおます。
 菊島隆三と若尾徳平の共同脚本を堀川弘通が監督した1957年の東宝映画で、この作品のエピソードは溝口健二監督の通し狂言映画「元禄忠臣藏」(1941、42年、前篇=興亜映画、後篇=松竹京都)の、それこそラストに出てきとりますな。

 赤穂浪士たちの老人襲撃が成功裏に終わり、浪士たちが主君の仇討ち(厳密には仇討ちとは言い難いんですけど)を果たしたということで江戸中は湧きに湧いている一方、夜闇にまぎれて46人もの男たちが徒党を組んで幕府の式典指南の高官を襲撃・暗殺したことで政治の中枢はびっくり仰天し、その処分に頭を悩ませている中、浪士たちは4組に分けられ、それぞれ大名にしばらく謹慎になります。
 浪士団の首領・大石内蔵助ら主だった幹部は肥後・熊本藩の細川家に預けられますが、内蔵助とともに細川家預けに組み入れられた若侍・磯貝十郎左衛門と彼を慕ってやまないみのという娘とのお話でおます。

 大石内蔵助には先代・松本幸四郎(のちの松本白鷗)、磯貝には二代目・中村扇雀(現・坂田藤十郎)、みのには後年、政治家のおばさんになる扇千景が扮しとります。この映画と同じ年、この扇雀と扇千景は結婚していますが、ついでに書けば細川家の家臣で浪士たちの世話役の堀内伝右衛門を扇雀の父親の二代目・中村鴈治郎が演じており、このころ、がんじろはんも扇雀さんも歌舞伎を離れた映画時代だったものの、成駒屋の共演作品ででもおます。







 吉良上野介という老人を暗殺する大きな目的のため、いろいろと敵情を探っていた磯貝君が吉良邸に勤務していたおみのさんと知り合い、それは吉良邸の内情を知るための磯貝君の偽りの恋だったのでおますな。
 扇雀さん、とんだところで『藤十郎の恋』でおます。
 しかし、『藤十郎の恋』のお梶同様、おみのにとっては一生に一度の恋でおます。男の本当の気持ちを何も知らされないまま、ある日、磯貝君は老人襲撃に加わり、おみのの前から姿を消してしまいます。

 おみのさん、納得でけしまへん。彼女の言い分を代弁するなら「ちょっと、磯貝さん、あんたはいいわよね、目的を達することできたもん。せやけど、ダシに使われた私はどうなんのよ。ふざけないでよ!」となりますか。
 だから、彼女は浪人暮らしの父親の友人である堀内伝右衛門に「磯貝に会わせて」と何度も何度も嘆願します。最初は「諦めろ」と諭していた伝右衛門おじさんも、おみのの一途な気持ちに根負けし、最近採用した世話係の小姓という名目で男装したおみのを浪士たちが起居する座敷に伺候させるのでおますが、おみのを一発で「女だ」と見抜いたのが大石さんでおます。

 大石さんも当初は「会っても無駄や。帰りぃな」と、やがて死んでいくであろう自分たちと同じく、この世に未練を残すような出来事に惑わされず、磯貝君に静かな残りの日を送らせてやりたい気持ちから、おみのの願いを聞き入れまへん。ここでひっこんでは女がすたるとばかり、勝手な男の本心を知りたいおみのは食い下り、大石さんも根負けしてしまいます。
 めでたく、おみのは磯貝君に会うことができるのでおますが、磯貝君の態度は冷たく、素っ気なく、取り付く島もおません。磯貝君にしたら、偽りの恋を仕掛けたとはいえ、おみのをけっして嫌いではおません。といって「好きだ!」と言っても、囚われの身ではどうしようもおません。ここは自分が悪者になって、おみのに引き下がってもらうしかおません。

 やがて、細川家に到着する江戸城幕閣からの浪士たちへの判決。切腹でおます。慌ただしく切腹の準備が進められる中、独り取り残されたおみのちゃんは、ぼう然自失でおます。磯貝君は自分の好きという気持ちは嘘ではない証拠に2人の思い出の琴の爪をおみのに渡すよう伝右衛門に託し、切腹の場に臨むのでおますが、伝右衛門が磯貝君の気持ちを伝えようと、おみのがいる部屋に駆け付けた時、磯貝君の切腹と時を同じくするように、おみのも自刃した後だったのでおます。

 おみのにすれば、何やねんでおますな。ったく、男いう生き物は勝手なんやからでおますな。置いていかれる身にもなってみろよでおますな。
 多く忠臣蔵物語は、浪士たちを中心に男のドラマとして描かれ、そんな男たちに絡む女の掘り下げは忘れられがちでおます。テレビ界の大御所、橋田壽賀子が「女たちの忠臣蔵」という浪士に関わった女たちの視点からみた忠臣蔵ドラマを残していますが、その作品を待つまでもなく、はるか昔に真山青果が残していた女のドラマ、観ているうちに忠臣蔵ドラマというより、太平洋戦争時の出征していく男と残された女との話に見えてきました。もちろん、「元禄忠臣藏」の成立は太平洋戦争以前でおますけどね。


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