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2006-05-13

45)「私家版加藤泰論への道」5 続々チャンバラから出発

 東映・宝プロ作品「ひよどり草紙」のあと、監督としての加藤泰の浪人時代は続いています。この間、東映の娯楽時代劇や嵐寛寿郎主演の時代劇などの脚本を担当し、1955年の新東宝作品「忍術児雷也」と続篇の「逆襲大蛇丸」で再度、監督としてバッターボックスに立ちます。
 余談ながら、後年の加藤泰映画に嵐寛寿郎がたびたび、ヤクザの親分役で顔を見せていますが、アラカン主演の時代劇の脚本を手がけたことで加藤泰と嵐寛寿郎との縁ができたのでしょうね。
 
 三年ぶりの監督作品「忍術児雷也」「逆襲大蛇丸」は、調べてみると1月3日封切となっており、ということは正月第一週公開の映画だったことが分かります。
 前篇「忍術児雷也」は、萩原遼監督との共同でメガホンをとっています(こういう言い方も古いかな?)。両者、どこからどこまでを担当しているのか、映画を観ただけでは知る由もありません。
 萩原遼といえば、前年、東映時代劇のSP映画「笛吹童子」五部作で大ヒットを飛ばしており、続く「紅孔雀」シリーズなど、いわゆる新諸国物語映画のヒットで一躍、売れっ子監督になっている時代でした。そのため、クレジットタイトルでは二人の共同監督となっているものの、あるいは加藤泰がほとんど一人で監督したのでは? とも考えられます。


 



 「忍術児雷也」「逆襲大蛇丸」は、タイトルからも分かるように変身、トリックいっぱいの忍術映画です。児雷也物は映画では尾上松之助が活躍していたころから何度も映画化されている、お馴染みのネタですね。
 大ガマに変身する主人公・児雷也(じらいや)に扮するのは大谷友右衛門、現在、歌舞伎の最長老の立女形、中村雀右衛門ですね。この人、戦争から復員後、しばらく映画界で活躍しており、稲垣浩監督の「佐々木小次郎」で主役の小次郎を演じたり、溝口健二監督の「噂の女」に田中絹代扮する主人公の愛人役で出演したりしています。
 この作品で観る限り、顔の表情に変化が乏しい人ですが、やはり、歌舞伎界の人ですね。改めて見ると、顔の長いこと、長いこと! よくいえば、面長の歌舞伎顔であります。
 
 ナメクジに変身するヒロイン・綱手(つなで)は利根はる恵です。つい先ごろ、あちらの世界に引っ越されましたが、日本映画界のワキ役女優として有名な人でした。この作品をリアルタイムで観ていないためでしょうか、「利根はる恵が綱手??」という印象は免れません。ワキ役のおばさんとしてのイメージが強いため、ヒロインが地味めに見えてしまうんですね。
 
 敵役で、大蛇に変身する大蛇丸(おろちまる)に扮しているのは田崎潤です。マキノ雅弘監督の東宝版「次郎長三國志」シリーズで桶屋の鬼吉を演じたり、伊藤大輔監督の「下郎の首」で主役の槍持ちを演じたりしていますが、一方で悪役として多くの映画に出ています。しかし、この人、人柄に愛嬌があったのか、この人の悪役って恐くないんですね。すごめばすごむほど、マンガになってしまうとでもいうのか、本来の人のよさがこぼれてしまっています。この作品でも、しかりです(こういうお仲間に富田仲次郎がいます)。
 
 この三者が、それぞれ、変身の術を授けられるのですが、その授ける方の先輩の妖術使いがいずれも余命いくばくもない老人だったという共通項が、のほほんとして笑わせてくれます。やはり、妖術の世界でも技を受け継いでくれる後継者が必要だったんですね。
 その妖術合戦が、フィルム合成のトリックを駆使して展開します。煙とともに人が消え、あるいは現れたり、着ぐるみ?のガマガエル、ナメクジ、おそらくピアノ線で操作しているであろう大蛇の身のくねりなど、もちろん、現在から見れば・・・ですが、時代はコンピュータ・グラフィック技術などなかった時代です。ここは、かつての映画人が苦心した手作りの味わいを楽しむべきでしょう。
 
 さて、児雷也、綱手、大蛇丸が術比べを見せる忍術映画ですが、本来のストーリーは児雷也の失地回復のお話です。つまり、幼いころに殺された父親の仇討ちを目指す一種の貴種流離譚ですね。
 児雷也と兄妹同然に育った娘(新倉美子)、児雷也の忠臣(小林重四郎)、児雷也の仇の守護大名(市川男女之助)、その息子(沢村昌之助=のちの伊藤寿章)、彼と婚約を交わしている美貌の姫君(瑳峨三智子)、その忠臣の家老(香川良介)、若侍(若山富三郎)、和尚(大河内傳次郎)、大蛇丸とタッグを組む女賊(朝雲照代)など入り乱れますが、そんな多彩な人物が出たり、引っ込んだりする手に汗握るような、心躍る忍術映画かーといえば、ウーンと唸らざるを得なかったのがボクの感想でした。画面が弾んでいるというところからは遠いところにあったんですね。
 惜しや、加藤泰の一篇でした。
 

 
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 先ほど東京の人と話をしていたのですが、加藤泰の特集は大盛況のうちに幕を閉じたとのことです。その人は今まで『真田風雲録』とか『陰獣』を観て、加藤泰をカルト映画の監督だと思っていたそうですが、今回、改めて加藤作品に接して、自分の認識の甘さにびっくりしたそうです。ビバ加藤泰。俺も観ていない作品がいっぱいある。大阪でというより、大きな映画館でやらないですかねぇ。ちなみに私めは、某大阪のはずれの映画館で、あさって、永年観たいと思っていた森谷司郎の『顔』が上映されるのでわくわくしています。ちなみに『放課後』の栗田ひろみも好きな女優です。

↑上のコメントのこと

名前書き忘れました。いつもの奴です。

Reビバ加藤泰

名なしの、いつもの奴さんへ
 加藤泰特集、大盛況だったということはうれしいですね。もし、若い世代にも好評だったとしたら、今の日本映画にあきたらない思いがあるのかも。どっぷり映画そのものという、映画的こってり味の日本映画って、今はないもんね。
 半面、俺だけの加藤泰にしておきたいという思いもあったりして^^
 ところで具隆さんの映画も東京で見直しが始まってまんな。三百人劇場、入りは少ないそうです。これまた、今の日本映画にない、ええ味を持った映画群なんやけどなぁー。

再度訂正です

そうか田阪具隆か。まとめて観たい気はするけど、毎日、九条の映画館(←ここしかやんないでしょうね)に通うのは、精神的にも体力的にも、また社会人としてのモラル(真昼間から映画を観る行為)としても許されないだろうな。もう少し交通の便のいいところに、もう少しキャパの広い、そしてもう少しこの手の映画をまめにかけてくれる映画館(十三でもめんどう)ができないかしら。
ちなみに森谷司郎監督の『顔』ではなくて『首』でした。訂正です。

たびたびのご訪問で・・・

 名乗るほどのもんじゃありませんさんへ
 たびたびのご訪問ありがとうございます。アンタ、柴又の寅さん?(んなワケないわなぁ)。
 でしょ?? 森谷司郎の「首」ですわな。1968年の小林桂樹主演のん。っていっても、ボクも観ていないけどね。

 これこれ、大阪でそんな贅沢いうてたら、あきまへんがな。交通の便なんていうてたらボクなんか・・・。キャパ広うて、上映する映画を吟味している小屋なんか、今時の大阪にありまっか? アンタ、ワシより地域的に条件ええんじゃけ、九条でも十三でもどんどん行ってつかいや(なんで、いきなり広島弁なん?って言わんでね^^)。
 
 ちなみに、田坂具隆の「坂」、「阪」になってますでー。

 今日は外は雨で、外出するのも面倒なんで、今日中に、もう一本、更新するつもり。さっきからウロウロ考えてます^^
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