--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013-05-14

女房頑張る「大学は出たけれど」

              大学は出たけれど 130513
              高田稔と田中絹代

 本来105分の長篇なのに、現存するフィルムが大変短い「大学は出たけれど」は、その現存フィルムで観る限り、小津安二郎監督の学生物映画というより、のちの「大人の絵本 生れてはみたけれど」(1932年)や「一人息子」(1936年)のように人生の悲哀を感じさせる作品でおます、
 世の中、大不況真っただ中の1929年の松竹蒲田製作で、原作・清水宏、脚本・荒牧芳郎で、撮影はこのころの小津とコンビを組んでいた茂原英雄でおます。

 不況の時代に「大学は出たけれど」でおますから、当時の最高学府を出ても仕事がないお話であることは容易に推察できますが、残された20分ばかりの映画ではいっこうに不況の気配はおません。だから、主人公が職にあぶれていることは、どうにでも取れるのでおます。
 大学を出たばかりの主人公、高田稔は在学中に職を見つけられなかったために、就活に明け暮れとります。おそらく、元のフィルムでは、現存フィルムでファーストシーンになっている部分の前に、いろいろと時代相を反映した描写があるのかな?

 ある会社に面接に赴くと、残念ながら人員の空きはないけれど、受付の仕事ならあるということでおます。社長(木村健児)直々に面接をしているところをみると、大企業ではおません。社長席の隣やや下がったところに秘書(阪本武)が坐っとります。
 受付の仕事を提示され、憤然と踵を返す高田君、「僕は今年、大学を出たんですよ」とのたまいます。まだ大学卒業の学歴が大手を振って歩き、社会も大学出ということに大きな価値観を置いていた時代ならではの言葉でおます。大卒がそれほど珍重されなくなった現代では、就職に有利な条件がかつては大卒であったのが、珍重されなくなったとはいえ、新卒に条件のよさはスライドしとります。

 憤然として帰ってきたのはいいけれど、下宿に帰ると故郷から母親(鈴木歌子)が息子の顔を見に出てきとります。あとで高田君は「せっかく出てきたのだから東京見物をしていくといい」と言い、そこに後年の「一人息子」を彷彿させるものがおます。しかし、高田君の母親に扮した鈴木歌子、この時は結構ええ年齢になっていたと思いますが、貧乏くさい雰囲気はおません。故郷では旧家といえないまでも、まずまずの家柄の奥さんなのでしょうな。そこが「一人息子」の母親、飯田蝶子とは大違いでおます。そういえば、飯田蝶子は、この作品では気のよさそうな下宿のおばさんを演じてはります。


 




 高田君、大弱りでおます。
 というのも、故郷には大学を卒業して就職もできたと知らせてあったからでおます。ウソついたら、あきまへんな。
 なおかつ、母親は息子のいいなずけの田中絹代を伴ってきとります。母親としては息子が学校を出て無事に就職ができたことで安心し、この上は「はよ、絹代ちゃんと暮らしぃな」でおます。絹代さん、大ぶりの髷に桃割れなんか結って恥ずかしそうに、しかし、久しぶりの再会に大喜びでおます。息子に絹代を託し、母親は帰郷します。

 高田君、困ったなぁ、僕……でおます。無職のうえに嫁まで来ちゃった、でおます。
 とりあえず、高田君と絹代さんは新婚生活をスタートさせ、高田君も毎日、でかけてゆきます。仕事があったからではおません。家にいるわけにもいかず、絹代さんには仕事に行くと見せかけて、無為に時間を過ごしているのでおます。そのうち、母親が置いていった当座の生活費も底をついてきました。
 たまらず、高田君は真相を告白。すると、絹代さんは「ほんなら、私がしばらく働くわよ」です。亭主がダメなら女房が頑張る――、やはり、日本映画でおます。
 絹代さん、すぐに働き口を見つけてきますが、こういう場合、つぶしが利くのは女性でおますな。ただし、絹代さんが見つけてきたのは女給(ホステス)の仕事でおます。身を売るような、そんな大層なところまでいかなくても、接客の仕事があるというのも、つぶしが利く女性ならではでおます。男性の接客を女性にさせるというのは男社会ゆえでおますやろか。男性の接客業もあるにはありますが……。

 働くようになって、絹代さんの帰りは遅くなります。しかも、高田君は女房が何をして働いているのか知りまへん。それに帰りが遅いと面白くもおません。ある夜、友達(大山健二)に誘われ、飲みにでかけた店で高田君が見たものは……?
 女給として働く絹代さんの姿でおました。
 その夜、帰宅した絹代さんを高田君は当然、問いただします。
 しかし、絹代さんも負けていまへん。昂然と言います。

 「私は働く者がいちばん幸せと思ったからです」

 これには高田君、クゥーの音も出まへん。女房を働かせて、自分は毎日、職が見つかならないことをいいことに遊び暮らしていたのでおますから。高田君、反省ザルでおます。
 敢然、高田君は闘志を燃やし、以前、仕事を断わった会社を訪れ、「受付でも何でもします」と就職を頼みこみます。びっくりした社長は「君もだいぶ苦労したようだね」と高田君の高慢の鼻がへし折れたことを見抜き、無事、高田君は採用されるのでおました。
 めでたしめでたしとなったのはいいけれど、ここんとこ、ちょっとご都合主義でおます。もし、高田君が憤然と会社を出てきた後、受付もほかの人に決まってたら、どないすんねんでおますな。

 世相を反映させたドラマでおましたが、夫婦となった高田君と絹代さんとのやり取りに、はからずも、父ちゃん駄目なら母ちゃん頑張るという日本映画の伝統の一つである男女の在り方を見ることができた、尺は短くなっているけれど、面白い作品でおました。


【別記】
 書きかけのまま、誤って下書き段階でアップしたのに、追加を記すまでに2拍手も貰っていました。
 ありがとうございます。


関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。