--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013-05-10

皮肉な結末の「落第はしたけれど」

               「落第はしたけれど」130509

 小津安二郎監督の「青春の夢いまいづこ」で学生時代に続き、リーマンになっても冴えないながら愛しのマドンナを射止める若者を演じた斎藤達雄(クレジットでは達男)が、やはり、ここでも大学を卒業できるかできないかの冴えない学生に扮した小津安二郎の1930年の学生物映画でおます。

 前半は卒業を間近に控えた斎藤君たちの大学生活が描かれ、学生たちはせっせと試験勉強に励んどりますが、試験のシーンではお馴染みのカンニングがギャグとなって笑わせてくれます。試験官は授業を担当した教授ひとりで、これではカンニングし放題、どうぞ、やってくださいというものでおます。
 秀逸なのは前の席の学生が詰襟の背中部分を上げると下に来ているシャツの背中に解答になるヒントがびっしり書かれとります。後ろの学生はそれを見ながら答案用紙に解答を書き移すのでおますが、途中で机に置いてあったインク瓶をひっくり返し、それが引き金になって前の学生の背中もインクまみれになってカンニングできなくなるのでおます。

 このカンニング法に想を得た斎藤君、下宿に帰ると自分も明日着ていくシャツの背中に解答を書き、同室の学生たちにも「任せておけ」とばかり胸を張って明日に備えます。同室の面々は月田一郎、笠智衆などが演じとります。のちのことになりますが、斎藤君は落第して留年してしまうのに反し、月田君たち4人はめでたく大学卒業となるのでおますが……。
 さて、朝になって下宿のおばさん(二葉かほる)に学生たちはたたき起こされるのでおますが、学生たちが起き出す前に壁にかけてあった斎藤君のシャツを見たおばさん、汚れものと思ってほかの洗濯物とともに持ち去り、クリーニングに出してしまいます。おかげで斎藤君の企みはパーでおます。やはり、悪いことはできまへんな。

 こんなトボけたことを繰り返している学生たちにも卒業シーズンがめぐってきます。




 




 斎藤君には、仲のいい娘がいてはります。下宿の隣にあるパン屋の娘で、演じているのは田中絹代。この作品より2年後に製作された「青春の夢いまいづこ」と同じような設定、男女とも同じ配役でおます。
絹代さん、束ねた髪の後ろに大きな花飾りを付けとりますが、これが当時の都会の娘さんのトレンドだったのでおますやろか。わずか2年の時間差でおますから、絹代さんの容貌にも変化はおません。ただ、斎藤君に恋のライバルは出現しまへん。同じ部屋の学生たちも、温かく2人を見守ってはります。もしくは、絹代さんはタイプではなかったのか……。

 絹代さんは斎藤君に、彼の卒業を記念してネクタイをプレゼントする約束をしてはります。斎藤君も「うん、僕、頑張るからね」なのでおましたが……。
 斎藤君、見事、卒業試験に落第してしまいます。
 試験を及第した月田君が大学の教務課に「何かの間違いなんじゃないのか」と掛け合っても、斎藤君の落第は動かし難い事実で、ラチが明きまへん。
 そして、迎えた卒業式の日。斎藤君と同室の月田くんや笠君たち4人は全員、卒業組で、新調したばかりのスーツを着こんででかけていき、斎藤君は独り、寂しく見送るばかりでおます。無聊を慰めるすべもない斎藤君のもとへ絹代さんが訪ねてきます。斎藤君は先にネクタイをプレゼントされているのでおますが、まだ絹代さんに落第したことは言っておりません。

 斎藤君がすまなそうに「僕はネクタイをする資格なんかないんだ」と言えば、絹代さんは「あたし、知ってたわよ」と、この返事は当然でおます。卒業式の日まで、斎藤君が落第をしたことを絹代さんが知らないはずはおません。そんなことは同室の友達から洩れるはずだし、第一、斎藤君がギリギリまで隠し通せていると思っているのも変な話でおます。
 このシーンでの、絹代さんの幼い弟を使った「落第」を使ったギャグも面白く、いい意味に誤魔化された弟が「僕も落第するよう頑張ろう」とかなんとか言わせているのが笑わせてくれます。

 さて、新学期が始まり、斎藤君の仕切り直しの日々が始まりました。
 ところが、卒業したはずの同室の4人は部屋でゴロゴロしとります。彼らは卒業はできたけれど、就職は決まっていないのでおます。仕事がないから金もない。だから、部屋でゴロゴロしているよりほかおません。月田君に就職試験の結果が来ますが、残念ながら、でおます。
 そんな中、斎藤君にいつものように親元から生活費が送られてきて、斎藤君は「パンでも食えよ」とゴロゴロ組に小銭を残し、絹代さんに見送られて登校し、応援団の練習に励む日常を送るのでした。
 ラストに応援団の練習風景を見せとりますが、これが2年後の「青春の夢いまいづこ」では冒頭のシーンになっております。

 それよりも、このラストシェークンスの対比が面白おます。
 斎藤君は落第はしたものの、もう一年、学生生活を謳歌するわけで、応援団の練習に励む楽しげな彼の姿はまさに「落第はしたけれど」でおます。
 一方、卒業した月田君や笠君たちが職もなく、下宿に燻っている姿はまさに「卒業はしたけれど」なんでおますな。
 どちらがよかったのか、映画はこの対比を皮相な感じで見せてくれています。



 
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。