--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013-05-07

意外や意外の東宝版「忠臣藏」花の巻・雪の巻

              忠臣蔵(東宝)130506
               先代・松本幸四郎(右)と原節子

 いち早く映画配給会社に切り替わった東宝がまだ自社製作の映画を打ち出していたころの、今から半世紀も昔(1962年製作、封切)の忠臣蔵映画でおます。
 赤穂浪士にまつわる銘々伝を適宜取り込んだ八住利雄の脚本を、東宝時代劇の先頭打者だった稲垣浩が監督した東宝創立30周年記念の映画でおますが、この作品を録画してあったビデオながら観るのは初めてのことでおました。
 というのも、東宝時代劇なんて、おもろないも~んだったからでおます。
 稲垣監督の時代劇はもとより、黒澤明監督の時代劇にしろ、三船敏郎主演の時代劇にしろ、アクション面はともかく、色気がおませんからね。撮影所中のライトを全部稼働させたかのような明るく、そして呑気でウソっぽい東映時代劇を観て育った者としては長く敬遠のジャンルでおます(といって、からきし観ていないという意味ではおません)。

 それが何を思ったのか、まだ日本映画各社が自社の所属俳優をほぼ総動員して毎年のように製作していたころのオールスター作品としての最後の忠臣蔵映画といえる、この東宝版「忠臣藏」を観ることになりました。
 これが意外や意外、おもろかったのでおます。
 相変わらず、色気のなさは東宝時代劇やし、戦後の稲垣浩の多くの時代劇同様、あまり評価は受けていない時代劇ではおますが、ボクには逆に新鮮でおました。
 それに、原節子の最後の映画作品となったことでも知られておりますな。





 



 京都から江戸へ下るお公家さんの行列が途中の本陣に投宿するところから、この映画は始まります。
 お公家さんの一行は天皇の名代として江戸の将軍に新年挨拶の返礼に向かう勅使、院使たちで、彼らが江戸城に到着し、さまざまな典礼の最中に赤穂藩藩主で典礼のホスト役の浅野内匠頭(加山雄三)が典礼総監督の高家・吉良上野介(市川中車=現・中車・香川照之の大叔父さん)に斬りつけ、それが赤穂藩の悲劇の発端になり、のちに強制的にリストラされた浪人軍団46人の老人襲撃事件に発展するのでおます。

 この本陣のシーンに登場するお公家さんに扮した上原謙がまことにフルっております。
 いろんな映画に出てくる公家はだいたいにおいて世間の動きに疎い、ノホホンとした殿上人として滑稽なキャラクターで登場してはりますが、セリフが一切ない上原謙は出番はわずかながら表情と動作で絵に描いたようなノホホン公家を見せてくれてはります。
 かつて、萬屋錦之介(中村錦之助)が13年ぶりに東映映画のスクリーンに復帰したとして評判になった「柳生一族の陰謀」(1978年、監督=深作欣二)にも成田三樹夫扮する変わり種の白塗り公家が出てきてきます。こちらは一見、ノホホンとした公家ながら実は幕府転覆もしかねない切れ者の公家でおましたが、映画に登場するノホホン公家としては上原謙、成田三樹夫は注目すべきキャラクターでおます。

 この本陣の主人役で森繁久弥が出とります。
 女房(淡路恵子)の尻に敷かれているっぽくて「婿養子になったばっかりに…」と愚痴っているような、豊田四郎監督の映画でよく森繁が演じていた頼りなさそうな男でおます。東宝所属の俳優たちの顔見せ映画でおますから、森繁の得意の役どころで、この冒頭の本陣シーンを飾るご祝儀出演かと思っていたら違うとりました。
 後半、浪士軍団のリーダー・大石内蔵助(松本幸四郎=のちの白鷗)がいよいよ京都・山科から江戸へ下る途中、再び、登場して「勧進帳」もどきに内蔵助と腹芸を見せるのでおます。
 ここは、通説の忠臣蔵エピソードによく登場する下りでおますな。歌舞伎の「勧進帳」の弁慶と関守の富樫を模して公家の使者に化けた内蔵助と箱根の関所の責任者の役人が対峙する場面で、ほかの忠臣蔵映画なら侍同士の睨みあいでおますが、この作品では侍と町人の睨みあいでおます。
 内蔵助は公家の使者を勝手に名乗っておりますから、必死のパッチでおます。下級役人(清水元)の詮索をかわそうと、町人である本陣主人の義侠心に期待して内蔵助と本陣主人がつかの間、睨みあいをするのでおます。
 ところが……残念でおます。この睨みあいのシーンに迫力も緊張感もないのでおます。観ているほうは既にお馴染みのシーンでおますから、どういう展開になるのか、先刻承知でおます。観客が展開を知っていればこそ、余計に手に汗を握るほどでないにしても緊迫感がほしいところでおます。
 内蔵助が睨みあう相手を、いつもの侍から町人にしたアイデアはよかったものの、幸四郎の睨みと森繁の睨みがどうも噛みあっていないようで、全然盛り上がらないのでおます。

 さて、この東宝版「忠臣藏」はお馴染みのストーリーが進む中、前半の花の巻は正直、退屈な展開でおます。いつか聞いたような伊福部昭の音楽が流れる中、現代劇畑の加山雄三は「慣れない時代劇です」まんまの顔をしているし、奥さん役の司葉子は明らかに姉さん女房っぽく、中車の上野介は欲に生きがいを見出しているのはいいけれど、ちょっと下品ぽいし、なぜか、それぞれにシーンでカメラが寄りで撮っているとシーンは退屈なのに、引きでロングで全体を撮ると引き締まった観を与えてくれます(撮影=山田一夫)。
 これは後半、討ち入り時のシーンから浪人軍団が江戸の街中を引き上げるラストまで同じで、大ロングで見せられると東宝が製作費をかかけたらしい、細やかに造り込まれたセットを楽しむことができます(美術監督=伊藤喜朔、美術=植田寛)。

 そんな中でも、前半の面白さは萱野三平のエピソードでおます。
 「仮名手本忠臣蔵」の早野勘平のモデルでおますな、この人。恋人のおかる(団令子)も出てきますが、「色に耽ったばっかりに……」の展開ではおません。話の展開を女との絡みに持っていかないのは、いかにも硬派な稲垣浩でおます。同世代のマキノ雅弘なら、絶対「色に耽ったばっかりに……」のほうを取るかもでおます。
 三平さん、主人が江戸城で起こした騒動をいち早く国元の内蔵助に知らせる使者に選抜されて東海道を早駕籠でぶっ飛ばすのでおますが、途中で伊勢参りか何かの講中に出会い、その中の一人の老婆を三平が乗る駕籠がはねてしまい、街道脇に転げ落ちた老婆が死んでしまいます。急ぎの駕籠でおますから無視して通り過ぎ、今でいうならひき逃げでおます。それでも駕籠に揺られながら、真面目な三平さん、名乗りを上げて去るのでおますが、これが三平の悲劇になっていくのでおます。

 三平を演じているのは中村萬之助、今の中村吉右衛門でおます。お兄さんの市川染五郎(現・松本幸四郎)が浪士軍団の最年少の矢頭右衛門七役で出ており、しかし、さして見せ場もないのに反し、萬之助が演じるこの三平役は作品中、最もおいしい役でおます。
 のち、三平は老婆の息子の侍(船戸順)から「親の仇ぃ~」と狙われることになります。そこで三平さんは討たれてやろうと覚悟するのが、三平の真面目さゆえでおます。京都・撞木町の茶屋で仲居勤めをしているおかるとは夫婦になる約束をしてますが、勤務先の倒産で社長たる主君・内匠頭の無念晴らしの血盟の誓約書を交わしている以上、個人的事情はままなりまへん。
 しかし、その誓約を破ってでも、三平さん、仇討ち応じてやろうとします。そこで山科に逼塞している内蔵助を訪ね、仇として討たれる覚悟を話して死んでいく前に茶屋遊びにうつつを抜かしている内蔵助の真意を問いただします。「武士の義理のために死ぬ」と三平が言えば、内蔵助は「ご主君は武家の意地のために亡くなったのに」と応じ、依然ぬらりくらりとする内蔵助と必死の形相の三平とが向きあう、このシーンは幸四郎VS森繁のシーンにはなかった緊迫感がおます。
 ところが三平さん、仇として討たれる前に割腹して果ててしまいます。それを知った内蔵助は茶屋遊びの最中に、その知らせを受けるのでおますが、杯洗の水で涙腺の緩みを誤魔化し、何も知らないで遊びの座敷に侍っているおかるの不憫さが一層、内蔵助の涙を誘う、ここまでの三平さんのエピソードは花の巻唯一のドラマチックな展開でおます。

 後半の雪の巻は、忠臣蔵映画の最大の見せ場である浪士軍団の吉良邸討ち入りに向かって進んでいくのは当たり前ながら、この討ち入りの激しい決闘がみものでおます。ほかの忠臣蔵映画のように浪士軍団は白の袖口、襟元の黒地のユニホームではおません。黒地の着物ながら自分の名前を記した白の袖口は嘉笑いものの、対戦相手の攻撃から守るためか、頭の被り物はさまざまで、内蔵助も山鹿流の陣太鼓も鳴らしません。
 討ち入り時の裏のエピソードとして水茶屋の女(池内淳子)と別れられなくなった小山田庄左衛門(宝田明)の焦燥、病に倒れ、雪の中を馳せ参じようとして果たせない寺坂吉右衛門(加東大介)の無念が同時進行し、これらは討ち入り組の岡野金右衛門(夏木陽介)が討ち入り後、絵図面を手に入れるために偽りの恋をしかけた娘(星由里子)に謝りに来るシーンとの成功組と敗北組との対比でおますな。
 ところで庄右衛門と水茶屋の女は自刃してますが、吉右衛門のほうは結果が描かれていないのは、なぜ?
時間が無くて、カットされたのかな?

 さて、後半の雪の巻の巻頭は、内蔵助と妻のりくとの別れでおます。りくを演じているのは原節子。
 山科の寓居を幼い子どもたちを連れて立ち去るりくの姿を長回しのロングで捉えたショットは、これ、溝口健二監督の「元禄忠臣藏」でおます。
 原節子の演じる奥さん、茶屋遊びに暮れる夫に冷ややかな感じでおます。ほかの忠臣蔵映画に見られるような内助の功に生きがいを見出しているふうでもなく、遊び呆ける夫の苦衷をそれとなく察しているふうでもおません。どこか冷ややかで、夫婦生活に冷めきっているという感じ。そのためか、内蔵助がりくに離縁状を手渡すシーンもおません。このシーンでは離縁状を渡されたりくが別れの哀しみとともに夫の計画の成功を祈り、涙に暮れるのが常でおますが、そんな湿っぽいことはわざと避けたのでおますやろね。色気のない東宝時代劇ならではか。

 原節子の出番はわずかながら、どういうわけか、司葉子や新珠三千代、星由里子などほかの女優さんたちをアップやバストショットで迫っているのに比べ、原節子に限り、ロングで引いて見せたり、遠めのバストショットで見せたり。まだまだアップに耐えられないような年代でもなかったのに、これも不思議でおました。


関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。