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2013-05-08

人生の入り口で「青春の夢いまいづこ」

              青春の夢いまいづこ130504

 同じ大学に通っていた青年4人が、いざ実社会に出てみると……というのが小津安二郎監督の1932年の映画「青春の夢いまいづこ」(松竹蒲田、脚本=野田高梧)でおます。

 主人公の大学生、江川宇礼雄と友達の斎藤達雄、笠智衆、大山健二の4人はそろってデキの悪い大学生でおます。斎藤君を除く3人は所属する応援団の部活は一生懸命励むけど、勉強のほうには精が出まへん。ひとり、斎藤君だけは休み時間でも教科書か参考書と首っ引きで大学構内をウロウロしてます。しかし、彼にしたところで教授の評判は「中学生並み」の出来らしく、鼻で笑われとります。
 結局、彼らが試験で頼みの綱とするのはカンニングでおます(専攻の学部は、黒板に書かれた問題から類推して経済学部か)。学科試験で彼らがカンニングをしまくって辛うじて虎口を脱することは、この後、もう一度出てきます。

 こんなトボけた学生たちが、やがて、不況の世の中に出るのでおます。世界恐慌から数年後で、日本はまだ不況に喘いでおります。しかし、この時代だからというのでなく、描かれた時代相はいつの時代でも同じでおますな。
 さて、大学前の食堂で働く女の子で、彼女は彼らのマドンナでおますが、やがて江川君が惚れているお繁(田中絹代)が4人の中で最も冴えない斎藤君と結婚することになったことから彼らの間に微妙な軋みが生じていくお話でおます。






 前半、彼らの大学生活が描かれとりますが、どこの大学をモデルにしたのか、授業の始業と終業の時間を腰にぶら下げた鐘で知らせる用務員のおじさん(坂本武)が出てきます。例によって、このおじさんが間違って鐘を鳴らしたため、教授や学生たちが右往左往するギャグをかまして笑わせてくれますが、この時代、まるで田舎の中学校にでもいるような鐘鳴らしの用務員が最高学府の大学にも存在していたのか、今となっては謎でおます。
 それに主人公たち登場する大学生の一挙手一投足も多分に中学生っぽく、現在とは異なり、難関を突破して選ばれたエリートと目された最高学府の徒というより、何やらガキっぽいのでおますな。当時の大学生もあんなものだったのかしら? でおます。
 そんな中、勉強のできない江川君たち4人の劣等ぶりを描くのに、学科試験でカンニングをしまくるギャクで笑わせるのでおますが、このカンニングもガキっぽい、いたずらめいた観がおます。

 江川君は会社の社長の息子でおます。母親は亡くなっていないようで。仕事を終えて帰宅したらビールを飲むのが楽しみな父親(武田春郎)との2人暮らしで、家事はばあや(二葉かおる)がこなしているようでおます。その父親が急死し、江川君は大学を中退して会社の次期社長になるため、斎藤君たちより早く社会に出ます。なかなか学生気分が抜けないながら専務の叔父(水島亮太郎)を後見に社長に就任して数年後、斎藤君たちも大学卒業の時期を迎えます。しかし、劣等生ぞろいでおますから、彼らを採用してくれる奇特な企業なんぞ、あるはずがおません。

 万策尽きた斎藤君たち3人は江川君の会社に採用してくれるよう、江川君に泣きつきます。江川君も久しく忘れていた友達付き合いで腕のみせどころとばかり、引き受けます。しかし、一応はほかの就職希望者と一緒に3人は入社試験を受けなければならず、映画はここで学科試験の時と同様、カンニンングをギャグとしてアイデアを駆使しとります。
 社長直々に試験会場の部屋を覗きに来て、何とか3人はめでたく入社を果たします。

 ある日、江川君はお繁に偶然出会います。お繁のおじが大学前で経営していた食堂を閉めてしまい、お繁は引っ越しをする途中でおました。事情を聞いた江川君、自分が惚れている娘でもあるからアパートを見つけてやり、仕事についても自分の会社に採用します。友達を3人も自分の会社に入れたり、惚れた娘の住まいと職業の世話をしたり、何とも人のいい若社長でおます。
 
 そんな人のいいことをしている間に、惚れた娘を友達に取られることになるんですな。
 お繁がアパートに引っ越し、江川君が引っ越しの手伝いに来ていた時、斎藤君が訪ねてきます。しかし、なぜか、オドオドしている斎藤君は社長である江川君の手前、そそくさと帰ってしまいます。斎藤君がお繁を訪ねてきたのには訳があり、知らぬは江川君でおます。
 そして、お繁から斎藤君と結婚することを聞かされるのでおますが、「俺も好きだった」と言う江川君に「だって、何にも言ってくれないもん」と反論するお繁。江川君、返す言葉もおまへん。
 お繁は斎藤君と結婚する思いを江川君に話すのでおますが、それを聞いて観ているほうは「??」なんでおますな。学生時代から皆よりいつも一歩遅れて歩いているような斎藤君を見ていると「あたし、かわいそうでたまらなかった」って、おいおい、お繁ちゃん、それって上から目線の、斎藤くんを好きで結婚するのではなく、同情から結婚するんかい? なのでおます。
 女心の妙というより、ここんとこ、もうちょっと、お繁のセリフを考えなきゃ……でおます。

 この後、お繁のアパートに江川君が来ていたことで斎藤君は結婚をあきらめようとし、笠君や大山君は曳きとめるのでおますが、ここでいちばん怒るのが江川君でおます。
 江川君は彼らの入社以来、彼らが妙に自分との間に溝を作り、現に斎藤君がお繁をあきらめようとしていることなどから、水臭い、昔のようになぜ接してくれないのかと、しょげた斎藤君に何度もビンタをくらわすのでおますが、溝ができるのは仕方おませんわな。かつては一緒にアホなことをやりまくっていた友達であっても、社会へ出れば社長と社員でおます。
 江川君がいくら彼らを友達と思っていても、雇われているほうにしたら、そうはいきまへん。このあたりが世の中の厳しさでおます。

 だからこその、この作品の題名は「青春の夢いまいづこ」で、この後、映画はハッピーエンドのほうに一直線に進み、終わりを迎えるのでおます。





 

 
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