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2013-05-02

貞やんに影響を与えたのか「非常線の女」

              非常線の女130502

 今回の小津安二郎監督の無声映画は、1933年の松竹蒲田作品で、岡譲二、田中絹代主演の「非常線の女」(原作=ゼームス・槇、脚色=池田忠雄)でおます。
 「晩春」(1949年)以降、一貫してホームドラマを描き続けて戦後の小津安二郎には考えられない、「其の夜の妻」同様、ピストルが登場している映画でおます。そして、タイトルが「非常線の女」とくれば何やらアメリカのマフィアに関係した男や女が出てきて、ピストルをドンパチするような暗黒街映画を想像させます。しかし、実際は「非常線」というほどの大袈裟なものではありまへん。

 主役の男(岡譲二=のちに譲司)は自ら「与太者」と言っているように、やくざ以前のいわば愚連隊でおます。放っておけば、やくざ組織に入るかもしれない予備軍ですな。女(田中絹代)は会社勤めで堅気面をした愛人で、池波正太郎風にいえば「引き込み女」でおますな。
 確かに、ラストで主人公の男女は警官たちに取り囲まれ、逃げ場を求めて隠れ家周辺をウロチョロするのでおますが、男女を追跡する警官たちといっても、ほんの4、5人程度。その警官役の俳優たちに笠智衆が交じっているのは、今から観れば「やっぱりね(笑)」のご愛嬌でおますな。

 それよりも、この「非常線の女」を観ていて連想させる映画がおました。
 山中貞雄監督の日活太秦作品「河内山宗俊」(1936年)でおます。
 よく知られているように、小津と山中は山中が東京に本拠を置く以前から親しく友達付き合いをしていた仲でおます。


 




 分厚いオーバーに、ちょっと前、現副総理の麻生さんが話題を提供したようなマフィア帽を被り、それなりに手下も抱えている男は、いつも溜まり場のビリヤード屋に顔を出しております。格好はつけていても、ちょっと今の生活に懐疑的な、メランコリックな男でもあります。
 その男とアパートに同棲している女は、昼間はタイピストとしてOL(当時ならBGですな)をしとりますが、実は男の手下たちから「姐御」と呼ばれ、いい気になっとります。この女に会社の社長が下心ミエミエで言い寄ってきとりますが、女は適当にあしらっております。

 こんな男と女の楽しい? 生活が微妙に狂ってくるのは、ビリヤード屋にいつも出入りしている学生が男の手下志願をしてきてからでおます。詰襟姿のこの学生君、真面目に勉学に励んでおればいいものを、ビリヤード屋にたむろっている手下たちとすっかり仲良くなり、自分もチョイワルの世界に憧れ、男の手下になって、メキメキ評判がよくなってきます。演じているのは三井秀男(のちに弘次)で、小津の無声映画時代にはよく息子や弟を演じていた、のちの名バイプレイヤーでおます。

 この学生君に、レコード店に勤めるお姉ちゃんがいてはります。
 お姉ちゃんは弟と2人暮らしでおますが、碌に学業にも身を入れない、遊んでばかりいる弟の身を案じています。お姉ちゃんには当時の娘役スターの水久保澄子が扮しております。お姉ちゃんの、そんな心配をよそに学生君は姉にない金をせびったりしています。
 そして、レコード店に現れた男のもとに弟が出入りしていると知ったお姉ちゃんは何度か、男のアパートへ「弟、来てませんか」と訪ねていきます。レコード店のそこかしこに飾られたビクターの小首をかしげた犬が、男やお姉ちゃんの心の中を示すように効果的に使われとります。
 たびたび、お姉ちゃんが男のアパートに来るので、心中穏やかでないのが同棲している女でおます。表面は「あんな女なんかなにさ」と強がっていますが、本当は心配でたまりまへん。男はそんな女の気持ちを見抜き、「心配することないで」と言います。
 それより、弟を心配する姉の気持ちを知り、「俺みたいになったらアカン」と弟が足を洗うように画策し、自分は女を使って社長から金のかかった指輪をせしめさせ、やがて、女とともに覚悟の上で警官に追われる身になってゆきます。

 このストーリー、まんま山中貞雄監督の「河内山宗俊」でおまんな。
 岡譲二扮する男が河原崎長十郎、田中絹代の女が山岸しづ江、原節子のお姉ちゃんが水久保澄子、ぐれかかった弟の市川扇升が三井秀男となります。
 「河内山宗俊」が製作されたのは、「非常線の女」の3年後でおます。山中貞雄は当時、京都にあって小津の「非常線の女」を観ていなかったとは言い切れまへん。
 もちろん、「河内山宗俊」は監督の山中貞雄以前に、歌舞伎ネタを元にしているとはいえ、脚本を担当した三村伸太郎のオリジナル作品でおます。撮影に当たり、山中が三村の脚本に若干の手を加えたり、変更したりしたことは考えられることでもおます。
 果たして、山中貞雄監督による「河内山宗俊」の製作に、山中貞雄が敬愛した先輩・小津安二郎の「非常線の女」が影響を及ぼしたところがあったのか、なかったのか。
 話を聞くには、もう、どちらもあちらの世界の住人になっていますが、面白おますな。


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