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2013-05-01

小津の母物映画は「母を恋はずや」

              母を恋はずや130430

 このところ、小津安二郎の無声映画に凝っております。
 今回は、1934年の松竹蒲田作品「母を恋はずや」でおます。
 会社の重役だった夫の死後、懸命に2人の息子を育ててきた母と、そんな母親が実の産みの親ではないと知った長男との相克のドラマでおます。
 母親には、この当時の小津映画の常連で、のちの「戸田家の兄妹」(1941年)で母親(葛城文子)を冷たくあしらう長女を演じた吉川満子、長男は頼もしい好青年のイメージで女性ファンが多かった大日方伝。のちに俳優をやめてカナダに移住しましたが、戦後すぐ、東京でGIが街の女と楽しむための連れ込みホテルを経営していたことは笠原和夫の著書「賤しの民と生まれて」に詳しおますな。ついでに、二男には戦後、味のある脇役俳優となった三井弘次(当時は秀男)が扮しとります。

 この作品もそうでおますが、のちの「一人息子」(1936年)や「淑女は何を忘れたか」(1937年)、あるいは「長屋紳士録」(1947年)などの、当時の女性としてはタッパがあり、スレンダーな体つきの吉川満子の着物姿を見ると、幼いころ、よく見かけた近所に住む「おきんちゃん」と呼ばれていたおばちゃんを連想してしまいます。
 そのおきんちゃんは昔、旅館や料亭の仲居をしていたそうで、そのころ、よくボクの家に物乞いに訪れていました。その時の姿が油っけのない髪の毛を洗い流しにし、決して清潔とは言い難い垢じみた着物姿で、痩せた色黒なおばちゃんでした。玄関に物乞いに立たれた各家では同情からなにがしかの食べ物を与えていたようで、顔はもうボクの記憶からは抜け落ちていますが、別段、吉川満子そっくりではおません。
 祭礼があると、よく先導ののぼり持ちなどに雇われていた弟と裏店に住んどりましたが、なぜか、チョンマゲのように後ろ髪を束ねている(ポニーテールとは言い難い)おっちゃんで、歩く時、跳ねるようにして歩いていたのを憶えとります。物乞いに歩いて回るくらいですから実情は乞食も同然で、おきんちゃんの頭も正常ではなかったとか。ボクの親の話では梅毒に侵されていたようで、仲居時代の乱行の行き着いた果てだったとか。
 彼らが、その後、どうなったのか、年齢的におそらくもう、あっちの世界に引っ越しているかもしれまへんが、小津映画で着物姿の吉川満子を見ると、そっくりというわけではないのに、どういうわけか、この物乞いのおきんちゃんを連想してしまうのでおます。
 映画とは関係のない、余談でおました。







 映画は、裕福な家庭に暮らす兄弟の子ども時代から始まり、重役だった父親(岩田祐吉)の死によって、質素な家に住み替えて子どもたちは青年時代を迎えます。
 ちなみに、子ども時代の彼らが着用する揃いのオーバー姿は軍服そっくりでおます。そこへ学帽をかぶり、ランドセルを背負うと小さな兵隊さんでおます。ランドセル自体が兵隊が背負う背嚢を模して製作されたものやから無理もおませんけどね。
 父の死が授業中の子どもたちに知らされ、急いで帰る子どもたちを見送る小使いのおっちゃんを坂本武が演じとります。

 さて、青年時代を迎えた兄弟、母親の育て方がよほどよかったのか、仲のいい兄弟で、親思いの青年に育っとります。兄は学校のボート部に所属しとりますが、同じ部員の一人が酒場の女に狂って練習にも全然顔を出していないので、彼は女のアパートに転がり込んでいる部員に会いにいきます。
 この部員に扮しているのが、笠智衆。よく言われているように、若き日の笠智衆さん、キリッとした顔立ちのイケメンでおます。歯の抜けた葛飾の御前様とは大違い! 
 小津の最終作「秋刀魚の味」まで小津&笠はニコイチのような関係でたくさんの作品を残しとりますが、笠智衆は無名時代からタイトルに名前が出ていようが、出てまいが、参加しとるのでおますな。この作品ではタイトルに名前が出とりますが、「其の夜の妻」ではかかってきた電話に応対する刑事さん、「淑女と髯」では剣道大会の審判員で、着物姿のほとんど後ろ姿だけで出演しとりました。

 兄の説得で部員は帰ることになりますが、彼が転がり込んでいた先の酒場の女が松井潤子。当時の無声映画のスチール写真でよく見かける女優さんでおます。そして、同じアパートの女で、兄の大日方伝を見て「いい男ねぇ」とつぶやくのが逢初夢子でおます。
 大日方伝と逢初夢子といえば、島津保次郎監督の小市民映画の代表作「隣りの八重ちゃん」(1934年)のコンビでおますな。「母を恋はずや」でも家を飛び出した大日方伝が転がり込む先の女が逢初夢子というわけで、ボート部の部員が転がり込んだのとと同じアパート、知り合いの女だったとは、世間も狭うおます^^

 この長男さん、学校進学の必要上、戸籍謄本を取り寄せて自分が母親の実の子どもでないことを知るのでおますが、お母さんは死んだ父親の後妻で、二男は本当の子どもでおます。先妻は病死したようでおます。以来、お母さんは二男と分け隔てなく育てたつもりでおますが、ひょんなことから母親とは他人と知った長男さん、わざわざすねて家を飛び出して逢初夢子のアパートで同棲生活を送るのでおますが、おいおい! でおます。
 というのも、義理の仲だったことですねるには、ちと年食ってんのとちゃう? なのでおます。そんなに訳がわからん年でも柄でもないだろうと、大きく成長した大日方伝を見て思うのでおますが、思春期のガキではあるまいし、長男がすねて家を飛び出してしまう設定に取ってつけたような無理っぽさが感じられるのでおます。
 しかし、ここは長男がすねて家を飛び出さないことには話は成立しまへん。
 家を出る直前、母親に向かって「お母さんはどうして弟のように僕を叱ってくれないのですか」とか何ちゃら文句を言うのでおますが、母親を批判している割には自分は言いたい放題で、観ていて観客は「お前なぁ……」と論理の矛盾を感じ、無理やり、こじれる方向に持っていったようなあざとさはいかんともしようおません。
 ま、最後は二男の説得もあって元の鞘に収まる予定調和のお話ではおましたけどね。


 
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