--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013-04-30

読み切り短編小説のような「其の夜の妻」

              其の夜の妻130427

 小津安二郎監督の1930年、岡田時彦が主演する松竹蒲田作品(脚本・野田高悟)でおます。
 同じ岡田時彦主演の小津映画であっても「淑女と髯」のすっとぼけたような味の喜劇とは違い、こちらはえらく深刻な映画でおます。なにしろ、主人公がピストルを手に銀行強盗をやらかし、刑事に追われる話なのでおますから。 

 冒頭、主人公が銀行強盗をするシーンから始まるのでおますが、銀行のやけにノッポな、何本も円柱が立っている外観、その周辺のビル街、石畳のような舗道などを観ていると、ここは日本かい?? なのでおます。もちろん、東京の(多分)丸の内あたりのオフィス街にある銀行を舞台にしているのでおますやろうけど、この時代のアメリカ映画でも観ているような錯覚に陥ります。
 若いころの小津安二郎は熱心にアメリカ映画を観ていたそうで、その感覚が自作の映画にも採り入れられていると言われてますが、このオフィス街の舞台設定って、完全にアメリカ映画の影響かな?
 にしても、銀行外観の何本も並んでいるノッポな円柱、表面は波型に装飾されておりますが、ロケだったのか、それともパルテノン宮殿に立っているような聳える円柱を何本もセットで作り上げたのか。 

 まだ若い、この銀行強盗、家に帰れば妻と小さな女の子がいるお父ちゃんでおます。
 その幼い娘が病気で寝込み、その治療費稼ぎに強盗を働いたことが徐々に分かってきます。


                                       



 まんまと大金をせしめ、男はタクシーに乗り込んで、妻と娘の待つアパートへ。
 自宅がアパートというのも、都会的な設定でおますな。強盗をするほど金に困っているなら普通、棟割り長屋へご帰還でしょうが、長屋という意味ならアパートも高層長屋であり、長屋に違いはないものの、靴を履いたまま部屋に入り、娘はベッドに寝かされ、壁には外国映画のポスターが張られていたりと、極めて洋風趣味の設定でおます。

 男の留守中、妻は病気で寝ている娘のため、医者往診を受けてます。
 妻に扮しているのは八雲恵美子。小津映画では喜八物といわれる「浮草物語」(1934年)で旅役者の喜八(坂本武)の愛人兼一座の看板女優を演じてはりますな。幼い娘は当時、高峰秀子とともに松竹映画の忙しい子役だった市村美津子、今、どないしてはんねんやろね? 
 医者を演じているのは、戦前の小津映画の常連、斎藤達雄でおます。このお医者さん、出番はここだけでおますが、注意して観てみると実に意味ありげな目をしてはるんですな。美人の人妻に下心でもあるんかいなと思ってしまうほど、往診を終えて帰っていく時でも怪しいそうな視線をカメラ、つまり、室内に向けて投げかけてるんです。それで、何かあるんかい? と思っていたら何にもおまへんでした。

 さて、そのあとに男が帰ってくるのでおますが、おマケが付いとりました。借金取りなら付け馬でおますが、この場合は何と言うのか……。男はタクシーに乗って帰ってきますが、タクシーの運転手が実は銀行の周辺をうろついていた男を「怪しいやっちゃ」と睨んだ刑事でおました。
 溝口健二監督の無声映画のスチール写真で見かけたことのある山本冬郷というおっちゃん俳優が演じ取りますが、このおっちゃん、ブサメンながら実に味のある顔付きをしてはります。眼光鋭い刑事とも見えるし、ちょっと間抜けたところもある刑事とも見えたりして^^

 映画は、ここからがヤマ場となります。あたかも歌舞伎の世話場のような展開でおます。
 刑事のおっちゃん、男の後を追って部屋に乗り込んできますが、男にピストルで脅され、手が出せへんようになります。どんな極悪人かと追ってきてみれば、強盗犯は案外、平凡で真面目な男。子どもの病気のために金に困って強盗をせざるを得なかったことを知り、男も朝になれば逮捕される、それまで子どものそばにいさせてくれというようなことを懇願し、刑事さん、仕方なくピストルに脅されたままになっとります。
 ほんの一夜の出来事でおます。
 最後、朝になって男が約束通り、刑事さんに連れられていくまでの、男と妻、子ども、刑事のそれぞれの顔と動きを追って緊張したシーンが続きますが、観終わって読み切りの短編小説を読んだような、できのいい短い時代劇を観せられたような、そんな味わいがあるラストでおました。
 そう、現代劇ながら、舞台なら一幕の世話物ドラマにしてもおかしくない映画でおます。

 
  
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。