--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013-03-01

淫靡な目付きの近衛さんの「砂絵呪縛」

砂絵呪縛130228
近衛十四郎(右)と千原しのぶ

 無声映画の「砂絵呪縛」が出たなら、次には「砂絵呪縛」の最新映画の登場でおます。
 最新映画といっても21世紀になってから製作された映画ではおません。今から50数年前の第二東映作品で、1960年製作の作品でおます。

 「先の大戦」が終了して以降、日本の映画観客動員数が最高になったのは1958(昭和33年)でおましたが、戦後生まれの東映の観客動員が最高になったのは、それから2年後でおます。しかし、それが最高観客動員数の終わりの始まりでおましたんですけどね。
 この年、東映は自社配給をそれまでの一系統から二系統にし、当時の大川博社長の「日本映画の儲けの半分はいただく」の豪語も有名になりましたが、自社映画が絶好調による二系統路線も何のことはない、歴史を振り返れば、自社で抱えて多すぎる陣容になったスタッフ、俳優の失業対策であったような面も……。
 製作本数の増加により、撮影現場のスタッフを増員し、増加した製作映画に応じて出演する俳優も松竹、大映などの他社からの引き抜き、あるいは落日の速度が増すばかりの新東宝からの移籍組などで膨れ上がり、それでなくても元から在籍する俳優たちが数多くいる中、一系統の配給ルートだけでは引き抜き組、移籍組の出番はなかなか回ってこなかたのでおますな。

 そこで考えられたのが二系統配給の確立で、第一東映が元からいるスタッフ、キャストで固め、第二東映は上がつかえて一本立ちになれないスタッフと引き抜き組、移籍組、それから二線落ちした俳優たちでまとめて新たにスタート。しかし、その寿命もわずか二年足らずで、日本映画全体の観客動員減に伴い、縮小・合理化が始まります。第二東映を倒産した新東宝と合体させる案も出たものの、実現化には至らず、片岡千恵蔵や美空ひばりなどの主力俳優の主演映画も打ち出してニュー東映としてニューアルした矢先、再び、一系統配給になりました。

 さて、井沢雅彦監督の第二東映作品「砂絵呪縛」のことでおます。
 「週刊朝日」創設に関わったとされる時代小説作家の土師清二の原作を村松道平が脚色。村松道平はこのころの東映時代劇映画で活躍した人で、新派の舞台や映画で知られる「残菊物語」の村松梢風の息子さんですな。ということは、作家の村松友視の叔父さんでおます。
 監督は井沢雅彦。第二東映誕生で、まさに一本立ちになった監督さん。のちに東映が大掛かりな合理化を進めた時、テレビ用の時代劇番組製作のためにできた東映京都テレビプロダクションに移籍し、以後、1960年代後期から70年代を通じ、東映京都製作のほとんどの時代劇番組の監督として一丁噛みしてはります。

 主役の浪人、森尾重四郎には近衛十四郎が扮しておりますが、この近衛演じる浪人がちょっと面白いんでおますな。



 お話は無声映画版「砂絵呪縛」でも記したように、徳川綱吉の治下、次の後継将軍の座をめぐる綱吉の娘婿を推す柳沢吉保(柳永二郎)と綱吉の腹違いの弟(のちの六代将軍家宣)を推す間部詮房(徳大寺伸)の勢力争いでおます。
 近衛さん扮する森尾重四郎は、柳沢直属の配下の頭目(田崎潤)に拾われた食客でおます。しかし、食客とはいえ、どちらが勢力を持つかなんてことについては、とんと興味がおません。一応、三度の飯が食え、酒が飲めるから拾われたままになっているだけでおます。

 一方、間部直属の若侍、勝浦孫之丞(品川隆二)と恋仲なのが、間部の娘、露路でおます。柳沢派は間部の勢いを削ぐため、この露路を拉致ちゃうんですな。その拉致に森尾重四郎も手を貸すのでおますが、気絶した露路を抱きかかえた時の近衛さんの目付きが実にいやらしく、実に淫靡^^
 露路に扮しているのは、中里阿津子でおます。足かけ3年ほど、東映城の娘役を演じていた美人女優でおます。役どころは「東映三人娘」の一人、大川恵子の系統で、武家娘がよく似合う典型的な姫君・お嬢さんタイプでおます。前年(59年)、日活から移籍した人で、第二東映発足当時は花園ひろみに次ぐ看板女優でおました。
 ついでに記せば、近衛十四郎が松竹から、品川隆二が大映から、そして中里阿津子が日活からそれぞれ移籍していることからも、第二東映の俳優が二線落ち、移籍組で占められていたことが分かるというものでおます。ほかに砂絵師(吉田義夫)にストーカーされる姐御のお酉を演じている千原しのぶも、この当時、既に千恵・右太・錦・千代・橋などの主力俳優の相手役女優としての座を後進に譲り、脇役に回る時代でおました。

 さて、森尾役の近衛さん、このあとも拉致った露路をもう一度、狙うシーンがおます。誰もいない屋敷内で「さぁ逃げろ」と言ったのはよかったけれど、いかにも露路に襲いかかるような目で露路をからかい、露路さん、すっかり恐怖のどん底に陥ってしまいます。
 でも、ここまでなんですな。いっそ露路を食ってしまえば、森尾重四郎という浪人の不気味さ、身勝手さが出るはずだったのに、何分にも演じているのが剣豪俳優の近衛十四郎でおます。女性に決して理不尽な振る舞いをしない千恵・右太・錦・千代・橋などの主演映画ほど、第二東映の映画は縛りはなかったものの、スター俳優のガードがかかってしまうんですな。
 露路に心を動かされた近衛さん、ラストでは千原しのぶと肩を並べて街道を歩いて行くんですから、それまで通りの東映時代劇と変わりおません。
 以後、近衛さんはこれまで同様、女性とは縁のない、剛一点張りのサムライ役を驀進、やがて、「柳生武芸帳」や「素浪人月影兵庫」などのテレビ時代劇のスターとなっていくのでおますな。


関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。