2013-01-26

まさに時代に寄り添った「徳川家康」

              徳川家康110603

 伊藤大輔、といっても今では同名の人が映画スタッフの中に散見できる時代だから、知る人ぞ知るのご時勢かもしれまへん。日本映画の無声映画時代から活躍した映画監督のおっちゃんで、やたらカメラが動き回り、走り回るので「イドウダイスキ」とあだ名され、映画各社を渡り歩いて企業の中で作品を残してきた人でおますが、反骨のおっちゃんでおます。

 その伊藤大輔が東映京都で1964年に映画化したのが、この「徳川家康」(封切は65年正月)でおます。ほぼ半世紀前の作品でおますな。山岡壮八の大河小説を原作に、確か、このころ、まだ原作は新聞小説として連載中であったような……。だから、映画では家康の誕生前から描かれ、少年期の家康が一大勢力を誇る戦国大名の今川義元(西村晃)の人質になることで辛うじて自分の領土を死守し、やがて、今川義元がライバルの織田信長(中村錦之助)に倒され、ようやく、青年期の家康(北大路欣也)が独立の機運を掴むまでが描かれとります。

 先に山岡壮八原作の「徳川家康」はNET(現・テレビ朝日)系列で連続物としてテレビドラマ化され、この時の家康役は映画同様、北大路欣也でおます。この欣也の家康が人気を呼び、「ほんなら…」と欣也が当時所属していた東映が既に時代劇体制から任侠映画体制に移っていたにもかかわらず、大型時代劇として企画したのでおますな。ここんとこ、いかにも映画屋(昔でいうならカツドウ屋)でおます。
 人気の北大路欣也に、まだ東映に在籍して「時代劇、時代劇!」を連呼していた錦之助を信長役に組み合わせ、戦国の時代物なら「この人!」で、時代劇の神様といわれていた伊藤大輔の出座でおます。

 伊藤大輔にとっては戦後の伊藤映画の最高傑作とされる「反逆兒」(1961年)以来の戦国物でおます。そこに伊藤大輔に私淑している錦之助の「時代劇心」を満足させ、次世代の若手スターの欣也を主役に(クレジットタイトルでは錦之助を主役扱い)三方丸く収まる映画でおましたが、結果は散々……。
 いかに伊藤大輔をもってしても、かつての東映城の若殿・錦之助をもってしても「時、既に遅し」だったんでおますな。映画小屋に足を運ぶ人心は、求めるものが違っていたんでおますな。
 これはテレビの「徳川家康」にも言え、家康の青年期を演じた欣也に代わり、壮年期を欣也の父親・市川右太衛門が演じるようになると視聴率が低迷し、遂には打ち切りの運命に……。

 今から50年前の映像作品「徳川家康」は新旧が入れ替わる、そんな象徴的な作品でおましたんやね。
 ところが、先日、テレビのCSで放送されていた映画版を何度目かに観てみると、この徳川家康と彼の家臣団の20数年に及ぶ艱難辛苦の、まるで嗜虐的な物語は、きちんと戦後日本の国民の変化を表現していたんでおますな。
 原作は、かつての企業戦士たちのバイブルにもなり得るほど評判を呼びましたが、この映画が封切られたころは日本が東京オリンピックを実現させた直後でおます。戦争による国土・国民の疲弊、混乱をくぐり抜け、高度経済成長にひた走った努力の結果として1964年の東京オリンピックがあったわけで、もちろん50年も経ったからこそ睥睨できることでおますけどね。

 それにしても、伊福部昭のタイトル音楽、いつ聴いても「十三人の刺客」(1963年、監督=工藤栄一)のそれと混同しがち^^


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