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2013-01-11

地味なんだけどね「あばれ駕籠」

              あばれ駕籠 130110

 このところ、映画館にはすっかり縁遠くなり、そのかわり、ちょい仲良くしているのがテレビのCSチャンネルでおます。
 先日、友達から早くもキネマ旬報の今年のベストテンに選ばれた邦洋の映画各10本のタイトルが送られてきたのでおますが、東京以外未公開という条件を差し引いても、ボクは何ひとつ観てはおりませんでした。いや、昨年公開された映画をまったく観ていなかったのではなく、たまたまボクが観た作品が選ばれていなかっただけでおますけどね……。

 さて、昨年来、CSの東映チャンネルでは1カ月に数本、東千代之介主演の時代劇作品が流れとります。
 モノクロ、スタンダード画面の時代から中村錦之助、大川橋蔵とともに「錦・千代・橋」と語呂よく並び称された戦後派時代劇スターのひとりでおますが、動の魅力を生かした華のある錦之助、静の魅力が派手な魅力だった橋蔵に比べると、千代之介は地味めだったことは否めません。
 デビュー作の「雪之丞変化」(1954年、監督・河野寿一)以来、出身の日本舞踊で鍛えた肢体を生かし、さまざまなジャンルの時代劇作品を残しとりますが、錦之助のようにヤンチャに明るく大暴れするでなく、橋蔵のように「第二の市川右太衛門」のごとく美女を両横に侍らせてチャンバラを見せるでなく、表情の乏しさ、硬い口調は明るく、派手な東映チャンバラ映画とは一線を画するもので、そこにワイド画面の時代に入ってもモノクロ作品が多かったことで、余計に地味めの印象はぬぐえません。

 そんな中で観たのが、東映時代劇のロマン派だった松村昌治監督の「あばれ駕籠」(1960年)でおました。




              130110_112618.jpg

 千代之介が扮するのは江戸の金持ちばかりを狙う義賊・稲葉小僧新助と歌舞伎界の人気スター・中村仲蔵でおます。主演スターが二役を演じるのでおますが、これはもう因縁は分かろうというもので、ふたりは貧乏のため、幼いころに生き別れになった兄弟だったという因果話がついており、兄は盗賊に、弟は歌舞伎役者になったという塩梅でおます。

 この兄弟に、ひとりの女性がからみます。武家屋敷の中﨟(ちゅうろう)の梶尾で、彼女はある夜、役人に追われて逃げ込んだ稲葉小僧を匿ったため、失職してしまいます。親しくしている商人の家に身を寄せ、本名のお梶に戻った彼女は自分を失職させ、憎いはずの稲葉小僧がいつの間にか忘れられない人になり、恋に身を焦がすようになります。
 演じているのは福田公子、宝塚歌劇出身の尾上さくらでおますな。この作品から3年以前、マキノ雅弘監督の「遠山の金さん捕物控 影に居た男」で中村扇雀(現・坂田藤十郎)の相手役だった女優さんですな。のちに新劇女優となった、どちらかといえば脇役が多い人でおます。

 ところが、仲蔵のほうも芝居見物に来場したお梶を舞台上から見て、恋してしまいます。実の兄とは知らず親しくなった稲葉小僧に苦しい胸の内を打ち明け、まだ兄弟名乗りはしていないながら、お兄さんの稲葉小僧は弟のために恋の橋渡し役になる羽目に…。このあたりの下りはロマンチスト派の松村昌治の面目躍如で、抒情的なシーンで構成されとります。

 この恋物語と並行して、仲蔵の役者人生も描かれます。
 仲蔵さん、人気役者ながら増長慢が過ぎて、師匠の市川団十郎(坂東蓑助=のちのフグの坂東三津五郎、千代之介の舞踊の師匠)から長期の自粛を言い渡されてしまいます。舞台に出られないうっ屈した生活でバクチに手を出して用心棒の浪人、此村大吉(若山富三郎)から「下手にバクチに手を出したらアカン」と意見されたり、役者としての将来にも、お梶を思う恋心にも悩んだりするのでおますが、そこに舞い込んできたのが舞台復帰の話でおます。

 喜んだのもつかの間、ようやくつかんだのが「仮名手本忠臣蔵」五段目の斧定九郎の役でおます。わずかしか出番のない軽い役で、おまけに五段目はどうでもいいような場面と見られ、観客はこの幕で飲み食いをするという、ろくに見ても貰えない幕なのでおます。仲蔵さん、腐り切ってしまいます。
 ま、この幕は、お軽勘平ののちに来る悲劇の幕開けの場でもあるんですけどね。大悪人の定九郎が娘のお軽を身売りさせた大金を懐に入れた与一兵衛を殺害、その大金を盗んだ直後、夜目にイノシシと間違って撃った勘平の鉄砲玉に当たって死に、義父の持っていた金とは知らずに、その金を同志加盟の参加費に用立てた勘平が義父を殺したことになり、切腹してしまうのでおますからね。

 定九郎は勘平のあわてん坊ゆえの悲劇のきっかけになる役柄でおますが、出番はちょっと。だから、仲蔵さん、「俺のやる役かい!」とバカにし切っておりますが、引き受けないことには舞台復帰は実現しまへん。そこを「これまでにない定九郎をやらんかい!」と稲葉小僧に励まされ、仲蔵は意匠に苦心惨憺。
 それまでの定九郎の身なりは尾羽打ち枯らしたとでもいうのか、山賊のような格好をしとりますが、仲蔵はそれを変えようとします。しかし、なかなかいいアイデアは浮かびまへん。

 そんな矢先、雨の夜、居酒屋から出てきた黒紋付姿の此村大吉に出会い、彼が裾からげをし、手にした蛇の目傘をすぼめがちにして立ち去っていくサマに、仲蔵のアイデアがひらめきます。
 それが今に続く五段目の定九郎の黒紋付の身なりで、中村仲蔵が浪人の此村大吉の身なりに定九郎の役作りのヒントを得た、このエピソードは昔からよく知られているお話でおますな。


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