--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2012-11-18

今ならクレームが付きそうな「暴力」

              暴力1 121116
               日高澄子(右)と若山セツ子

 脚本・新藤兼人、監督・吉村公三郎による1952年の東映京都作品でおます。
 とはいうものの、プロデューサー・絲屋寿雄、撮影・宮島義勇、助監督・大井英介、主演・日高澄子などを引き連れた新藤兼人らの近代映画協会と東映の提携作品でおますな。
 このころ、まだ東映には、これといったヒット作品がなかった時代でおます。京都で現代劇が製作されるというのも、この時代の東映の特徴のひとつで、「笛吹童子」シリーズ(1954年)以後、時代劇製作を安定させた、その後の東映では考えられまへん。
 当時としては番線への商品供給を満たすため、ひとつでも映画がほしかったころでおます。というわけで、配給元を必要とする独立プロ系の近代映画協会との利害が一致し、この作品やのちの新藤・吉村コンビの「美女と怪竜」(1955年)が誕生と相成ったのか……。
 とはいえ「暴力」には「東映・近代映画協会提携作品」なるタイトルは出てきまへん。従って、以上のことはボクの憶測でおます。

 戦後間もない日本の暗部をえぐる…ということで選ばれたのが大阪・新世界界隈でおます。
 始まってすぐ、付近の売春婦が電車に轢かれて死んだ線路が出てきます。そも、何者によって殺されたのか? という推理映画ではおまへん。
 線路は当時の国鉄関西線、今ならJR大和路線でおますな。場所は電車が天王寺駅を出てすぐの新今宮あたり。現在と違ってロケーションをしたらしい線路の周辺にはなぁ~んにも家らしい家は見当たりまへん。今なら線路沿いに日払いアパート群が見えるようなところでおますな。
 新世界といえば通天閣でおますが、その通天閣もカメラには入っとりまへん。それもそのはず、当時の通天閣は戦争中の火災(戦災たおまへん)によって解体され、だから、この当時はまだ再建されてなかったのでおますな。以後、劇中に何度も新世界の人混みがロケ撮影で出てきますが、通天閣、見当たりまへん。

 とまぁ、ボクが生まれる以前のなじみのある場所が新世界界隈を中心に出てきて、その風景を地元の新聞記者らしい男(泉田行夫)が東京から取材に訪れた女流作家(夏川静江)を案内するという設定で説明されるのでおますが、これがどうもいただけまへん。
 まるで新世界界隈が魔窟かのような説明でおます。若い女の多くは生活のために街頭に立ち、行き交う老若男女はみんな、働く意欲をなくし、その日その日の快楽をむさぼっているだけ……なんて、たとえ事実であっても今なら絶対クレームが来てもおかしくない解説なんでおます。
 現代の目でみるからこそ、すごい説明と思ってしまいます。しかし、60年以上も昔と考えれば、こういうズバリとした物言いも普通だったのでおますやろね。

 さて、映画はそんな新世界界隈に住むポン引き(客引き)のねえちゃん(日高澄子)がヒロインのお話でおます。






 このねえちゃん、客引きはすれど身は売らずなんでおますな。
 というのも大阪・難波の戎橋の橋上でカモになりそうな男に声をかけ、さも自分が相手をするように誘って新世界の旅館に案内し、客を部屋に落ち着かせたところで出てくるのはねえちゃんとは全く別の女というヤバい商売をやってはります。

 ねえちゃんは、その旅館の娘でおます。因業オヤジの義父(菅井一郎)の命令で、やむなく客引きなんかをやっとります。要するに旅館は「ことぶき旅館」と名前だけはつつましいのでおますが、連れ込み宿ですな。付近の売春婦と契約し、あるいは売春婦に客を紹介して上前をハネるのが生業でおます。
 そんなねえちゃんにすんなり引っかかったのが東京から流れてきたアプレな男たち(木村功、内藤武敏)でおます。美人のねえちゃんと桃栗できると思っていたところ、出てきたのが別の女だったため、当然「話が違うやないか」となりますが、因業オヤジの剣幕に、その場は帰っていきます。
 のちにねえちゃんと改めて知り合うようになるのですが、アプレ男たちは実は東京で自動車強盗を働き、大阪まで逃げてきたばかりだったのでおます。

 ここでちょっと難癖をー。
 戎橋で客を拾い、新世界の旅館に連れ込むって、こりゃ、ちょっと距離も時間もかかりそうでおますで。大阪の地理が分かっていればこその難癖でおますが、この時、ねえちゃんは男たちを誘って、どんな交通手段で移動したんやろ? でおます。
 歩きでは遠すぎます。タクシーか? バスか? 地下鉄か? いずれにしても客を誘って宿まで行くには近くなければあきまへん。戎橋ー新世界はいかにも遠すぎるのでおますけどね。

 さて、ねえちゃんは現在の生活がいやでいやでたまりまへん。何とか抜け出したいと思っているのですが、具体的な手段は何にも思い付きまへん。
 戦争で実父(殿山泰司)は何年も帰らず、その間、母親(浪花千栄子)は因業オヤジと再婚。もうひとり、盲目の娘(若山セツ子)を抱え、生活のためでおます。だから、おかあちゃん、オヤジの言いなりでおます。
 オヤジは金のためなら娘も売ろうとする悪党ぶりで、近所の映画・女剣劇・ストリップを兼ねた小屋を経営する社長(進藤英太郎)にねえちゃんを世話するのでおますが、気の強いねえちゃんは「アホか!」と場を蹴って帰ってきます。姉で失敗したら、今度は妹で…と妹娘を世話したところ、目が見えないばかりに妹は部屋から逃げ出したものの、物干し台から転げ落ちてひん死の重傷を負うハメに……。

 その間に、ねえちゃんはアプレ男たちと再会し、酒を飲んで意気投合。男たちがでまかせに四国の海が見えるところで牧場を営む友達のもとへ行くと言うと、真にうけたねえちゃんは「うちも連れてって」と約束し、男たちを連れて母親も妹も一緒に連れていこうと旅館に帰ったところ、妹の重傷に加え、男たちが指名手配犯と知ったオヤジが警察に通報し、男たちはあっけなく逮捕されてしまいます。
 ねえちゃん、ガックリときたところへ、妹がけがをして医者を呼ばなければならないのに「医者なんか呼ばんでええ!」と言い放つオヤジに「もう我慢できない」とばかり、柳刃包丁を握って……。

 何とも救いようのないお話の結末でおます。

 ちなみに、クレジットタイトルのラスト、数人の大部屋俳優との連名の中に千原しのぶがクレジットされとります。
 彼女の女優デビュー作は同年の「忠治旅日記 逢初道中」(監督=佐々木康)でおます。「暴力」への出演は本格デビューの前だったのか、後だったのか、目を凝らして映画を観ていたのでおますが、どこに登場していたのやら……。


 
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

楽しい!!

いいと思います!

矢部さんへ

 短いコメント、ありがとうございました。
プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。