2012-09-28

捨て身は捨て身でもの「捨て身のならず者」

              捨て身のならず者120927


 ちょっと「看板に偽りありだよ」と思ってしまうような、高倉健主演で石松愛弘、沢井信一郎の脚本を降旗康男が監督したハードボイルド風作品(1970年、東映東京)でおます。

 タイトルの「ならず者」は健さん扮する主人公を指しているのでおますやろうけど、これが少しもならず者やおまへん。彼がよく演じた首尾一貫して己の信念を貫き通す主人公であり、むしろ、ならず者は彼が追い詰めていく組織暴力団のおっちゃんたちでおます。しかし、おっちゃんたちからすれば、自分たちに盾をを突く主人公はならず者なんでしょうけどね。

 いやいや、こういう矛盾するタイトルとなったのも、時代のせいでおますな。
 1970年といえばEXPO70の日本万国博が開かれた年であり、日本は好景気に沸きに沸いていたころでおます。
 同時に、東映のやくざ映画も全盛期の終わりの始まりだった時代でおます。ということは、高倉健の映画を小屋に掛ければ、まだまだ観客動員が見込まれたころでおました。
 モノは健さんは堅気の役で、やくざに扮した内容でないにしろ、高倉健主演とあれば派手な、猛々しいタイトルでなきゃアカンということで、この作品のプロデューサーの俊藤浩滋、矢部恒のイケイケドンドンぶりがうかがえるタイトルでおます。
 ま、「捨て身」ということであれば、あながち間違いやおませんですけどね。

 健さんは、組織暴力団の実態を暴こうとするフリーライターでおます。
 堅気の役でおますから、いつものドスをペンに持ち替えて頑張るのでおますが、スーツにトレンチコートがサマになっているのも「役者やのぉ~」なんでおますな。






 やくざの実態を暴くのに頑張るのはよろしおますが、いつも出入りしている雑誌社や新聞社に「権力の圧力」がかかり、雑誌社も新聞社も尻ごみしてしまいます。しゃーない、独りでやるっきゃないと健さんは覚悟のホゾを決めますが、持ち込んだ原稿はどこも相手にしてくれまへん。
 雑誌社も新聞社も営利企業でおますから、圧力がかかると手を引きますわな。小さな会社になればなるほど企業としての存続にかかわるので、なおさらでおます。

 面白いのは、この「権力」が映画にはいっさい登場しないことでおます。出てくるのは、その「権力」と裏で手を組んでいるだろう組織暴力のおっちゃんばかりで、ただひとり、警視庁の刑事(室田日出男)が出てくるばかりで、この人物を通じて組織暴力がタッグを組んでいる「権力」とは何者かをうかがわせとります。
 さらに面白いのは、その「権力」をぼかしてしまっていることで、それが限界というより、映画会社もまた営利企業でおますから。ま、その「権力」を暴くのが、この作品のテーマでもおませんしね。

 健さん、日々、暴力団の嫌がらせや待ち伏せを受けます。それでもヘコたれないので、遂には殺人犯にされてしまいます。無実の証明をすることもできず、懲役5年の刑に服してしまいます。法廷でどういう展開になったのは描かれていないので分かりまへんが、殺人罪で5年とは…。きっと計画性のある犯行ではなく、偶発的な犯行とでも認証されたのでおますやろか?

 ここで健さんの刑務所生活が少し描かれるのでおますが、これがまったくの「網走番外地」でおます。
 番外地シリーズ常連の由利徹に山城新伍がコメディーリリーフとして加わり、高倉健の映画に番外地映画の要素がなくてはアカンとばかりのファンサービスでおますな。

 そんな入所生活の中で、組織暴力のドン(水島道太郎)の死を知り、定期的に面会に来ていた妻(岩本多代)が交通事故で亡くなります。事故とはいえ、殺されたんでおますな。ホンマ、組織暴力のほうが「ならず者」ですやろ?
 暴力団の幹部に扮しているのが山本麟一、今井健二、諸角啓二郎、戸上城太郎、富田仲次郎の面々で、高品格もちょろっと出てはります。
 やがて、健さんは満期でめでたく出所。もうペンを持つ気力も失いつつあり、そんな中で一人の美女(浜美枝)と出会ったことから、再び、組織暴力との闘いが始まります。

 彼女は長崎から実父に会うために東京へ出てきたばかりで、なぜか、やくざ達に追われとりました。その実父というのがドンで、しかし、ドンは死んだはずだといぶかる健さんはドンの墓を密かに暴き、ドンの死が偽装されたもので、実は生きていることを確信して……。(以下、あらすじ省略)

 東宝所属の女優であり、ボンドガールだった浜美枝、健さんとは初顔合わせでおます。
 トランクひとつで東京へ出てきているはずなのに、登場するたびにファッショナブルな服装(多分に70年代を振り返らせるミニスカートを履いております)で出てきますが、「なんか変…」とは思わないように。これ式のことは、舞台や映画を通じてご愛嬌でおます。
 最近は女優としてより、テレビのレポーターで時々、顔を見せとりますが、この作品での彼女のメーク、30年代フランス映画の女優の雰囲気をうかがわせております。だから、大人な感じですね。
 その分、まだ見ぬ父に会いたくて…の娘には見えなくもないような…。

 もう一人、助演として日活の宍戸錠が健さんの妻の兄で、新聞記者の役で出とりますが、ゲストとしてはあまり活躍の場はなかったようでおます。




 
 
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