2012-09-22

あっけないほどの「勝負は夜つけろ」

              勝負は夜つけろ120922

 生島治郎のハードボイルド小説を大映映画にもよくシナリオを提供していた舟橋和郎が脚色し、井上昭が監督、田宮二郎主演で映画化した1964年の大映京都作品でおます。
 都会風なキザっぽさを生涯のウリにした田宮二郎の、まだこのころは出世作のひとつ「白い巨塔」(1966年、監督=山本薩夫)に出遭う以前で、どちらかといえば勝新太郎主演の「悪名」シリーズで歯切れのいい河内弁を聞かせる、おっちょこちょいの相棒、清次のイメージが強かったころでおます。
 せやから、サングラス姿の田宮二郎の口から、いつ河内弁が飛び出すのかと思っていたら、いや、これは横浜を舞台にした作品でおました。

 かつて井上昭監督にインタビューをしたことがある友達から「面白いから機会があったら観てみろ」と勧められていて、ようやく、その機会を得たのでおますが、しかし、僕は「う~ん、そうかぁ~」なのでおました。感性の相違はどうしようもおません。
 友達によれば、ネットなどの世評もいいとかで、それに井上監督のいちばん好きな自作とか。彼はインタビューでそう聞き、そのインタビュー時には僕もオブザーバー(そ、そんな大袈裟な…)として同席していたのでおますが、その発言はとんと記憶にないのでおます。





 商談で至急、現金500万円が必要になった田宮二郎。彼は横浜港で外国船舶に物資を融通する、小さな貿易会社を経営する社長でおます。
 「金を貸してくれる人なら、おりまっせ」と言ったのが社員で、田宮の幼馴染みでもある川津祐介。その人物に会ってみると、クラブのママで、昔関わったことのある久保菜穂子。どんな関わりなのかは、彼が片足が不自由で、いつも杖をついて歩いていることと関係がおます。
 久保菜穂子は「私は持ってないけど、パパに出させるわ」と言い、口を利く条件として200万円を上乗せして借りる金額は700万円にするよう申し出ます。当時の500万円、700万円が現在の価値ではどれくらいになるのか、ともかく、途方もない大金であることは分かります。

 そのパパなる人物が、怪しい金融業者の小沢栄太郎でおます。これも田宮が昔なじみで、小沢は田宮の片足を痛めつけたやくざの五味龍太郎を用心棒代わりに雇っております。
 金が必要な田宮さん、背に腹は代えられない事情から小沢おじさんから700万円を借りて商談成立。しかし、利子はトイチ、つまり、月70万円でおますな。しかも、期日までに返済できなかったら田宮さん、小沢おじさんの子分にならなあきまへん。
 ところが、その大事の500万円を川津と経理課長の伊達三郎が相手方に持って行く途中、誰かに盗まれて……。

 ここから本格的に田宮さんの活躍が始まるのでおますが、でもねぇ…。
 観ていれば低予算のプログラムピクチャーそのものなんでおますが、主人公が謎を追うドラマにしては登場人物が少ないんでおますな。だとしたら、観ているほうは限られた俳優の中から目星を付けるしかおません。だから、これは川津祐介が一丁カミしていると踏んだら、案の定…。なぜかはまだ分からないながら、犯人役にふさわしい俳優は? とたどれば、すぐ分かります。

 伊達三郎。大映時代劇の決してトップのワルにはなれなかった悪役俳優でおました。冒頭、田宮や川津が乗ったボートを伊達三郎が岸壁で出迎えるシーンがおますが、そのシーンで戻ってくるボートをじっと見つめるショットがおます。それで、ああ一丁カミ組ね、なんですな。このシーンに続く事務所内のシーンではいかにも真面目な経理マンぶりの演技を見せとりますが、先にあんなワンショットを見せられていては、カミカミは分かってしまうんですね。

 低予算の、低予算たるがゆえの弱点でおます。
 ちょっと思わせぶりではあるけれど、凝ったショットにジャズを載せながら見せておりますが、うーん、それでいて、田宮二郎が金を借りてからのドラマに、せっかくの大物俳優の小沢おじさんが少しも絡んでこないのは、なぜなの? でおます。ラストに久保と組んでいた執事の寺島雄作と娘である久保ねえさんを殺すために登場するだけでおます。
 港の画面右側に大型船が停泊している港を独り、田宮二郎が杖をつきながら立ち去り、左側に仲むつまじそうなカップルを配したラストショット、きれいにキマてるんでおますけどねぇ……。

 おかしかったのは、久保ねえさんが小沢おじさんのことを「パパ」と呼ぶことでおます。
 この2人は親子の設定でおます。しかし、久保ねえさんは小沢おじさんが結婚した女性の連れ子で、親子であっても血のつながりはおません。ないけれど、いや、ないからこそ小沢おじさん、久保ねえさんの体をいただいている過去があり、だから、ねえさんは小沢おじさんを憎んでおります。田宮に200万円の上乗せを要求したのも小沢おじさんへの嫌がらせでおます。
 こんなことが田宮二郎と久保菜穂子のからみのシーンで久保ねえさんの口から語られるのでおますが、久保菜穂子から「パパ」という言葉を聞くたびに、親を指しているというより、パトロンでも呼んでいるような語感があるのは、久保ねさんのキャラクターのゆえでおますやろか。


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