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2012-08-25

お師匠さん、甘かったねの「怪談三味線堀」

                    怪談三味線堀1 120829

 大映時代劇や新東宝時代劇に比べれば、あまり怪談映画に色気を示さなかった1962年の東映時代劇の怪談映画でおます。松竹時代劇によくシナリオを提供していた柳川真一の脚本に監督は何でもコツコツ、それなりに屋さんだった内出好吉でおます。

 おおまかなストーリーは三遊亭円朝の「真景累ケ淵」をちょい戴きでおます。ただし、親の因果が子に祟るという因果話でないのが惜しおますけどね。
 男嫌いで身持ちが堅く、江戸で評判の美貌の踊りの師匠、おせん(千原しのぶ)が男に対する免疫ができていないばかりに、遊び人の宗次郎(品川隆二)にコロッとまいってしまいます。宗次郎にとっては、おせんのような、いささか年増ではあるけれど、ウブな女をわがものにするのはお手のもので、2人は簡単に男女の関係になってしまいます。
 さぁ、そうなると、おせんは明けても暮れても宗次郎第一で、しっぽり濡れてばかり。おせんの舞踊家としての将来を心配する家元(三浦充子=光子)がどんなに意見をしても、身の周りの世話をしている女中のおとき(赤木春恵)がどんなに渋い顔をしても、おせんさん、聞く耳、見る目を持ちまへん。
 ところが、以前から「パトロンになってもええよ」と、おせんに言い寄り、そのたびにフラれていた大店の主人、越後屋(原健策)は、おせんが若い男と乳繰り合っているのが面白うおまへん。この越後屋の娘のお吉(北沢典子)がおせんの弟子でおますが、お父さんは「せっかく俺が面倒見てやると言っているのに…」と日ごと、嫉妬は増すばかり。そこで、越後屋さん、一計を案じ、宗次郎と顔見知りの遊び人、仁蔵(加賀邦男)を使って、おせんの顔に煮え湯を浴びせかけ、大けがをさせてしまいます。
 「真景累ケ淵」の豊志賀は顔に腫れ物ができますが、おせんは煮え立った熱湯を浴びて、まるで「春琴抄」でおますな。「春琴抄」の佐助はそれでも忠実な下僕として側を離れまへんが、宗次郎というチャラ男はそんな代物やおまへん。

 ここまで述べてきて、ふっと思ったのでおますが、こんな町家のお話、いつもいつもお侍さんが主人公だった東映時代劇には珍しく、しかし、怪談物といえば、なぜか町人世界のお話が多く、侍映画ばかりだった東映時代劇に怪談物が少なかったのも、むべなるかなでおますな。






               怪談三味線堀2 120829

 美人で小金を持っているおせんと男女の仲になっているとはいえ、遊び人でチャラ男の宗次郎は、おせんの顔に醜いやけど痕ができたと知ると、もう利用価値はなくなった、でおます。前々から目をつけていたお吉に触手を延ばすのでおますが、お吉は意外にしっかり者で、すぐにはなびきまへん。
 一方のおせんさん、やけど以来、ふさぎ込む日が多く、家元の意見も後の祭りでおます。おまけに宗次郎が自分を捨てて、お吉に走ったと知るや、怨みを残して死ぬしかおません。死んで怨霊となり、自分をおとしめた宗次郎や越後屋たちに祟り、自滅に導いていくのは怪談映画の常でおます。

 サイドストーリーとして、おせんの弟、直吉(伏見扇太郎)の話が出てきます。
 映画の冒頭、直吉が舞台上のおせんを懐かしそうに見つめるシーンがおますが、直吉はかつて不良少年で、おせんの頭痛の種でおましたが、その後、更生して真人間になり、おせんへのかんざし用の翡翠を土産に数年ぶりに江戸に戻ってきたところでおます。
 ところが、満員の劇場内で宗次郎に翡翠を入れた財布をすられ、後をおいかけたものの、宗次郎に刺されて川に転落してしまいます。自分が刺した男がおせんの弟とも知らず、その後、宗次郎はおせんと関係を持ちます。おせんも当然、知りまへん。ばかりか、弟の遭難も知りまへん。死んだと思われた直吉は川から海へ流され、佃島の漁師(大邦一公)に助けられて一命を取りとめ、映画の後半に再び出てきます。死んだおせんが幽霊となって直吉の前に現れるなど、この作品に欠けている因果話といえば、直吉のエピソードが唯一の因果はめぐる尾車の…でおますな。

 おせんを演じた千原しのぶは先年、あちらの世界に引っ越され、晩年は不自由な体をおして映画のトークショーに姿を見せていたようでおますが、この映画の時はアラサー世代。映画の冒頭の踊るシーンで見せている美貌は、侍スターたちの相手役時代にはなかった色っぽさでおます(もともと、色気が足りないと言われていたんですね)。おまけに冒頭の画像にもあるように、ヌードのサービスでおます。ただし、肩先だけで、行水中のおせんが宗次郎に追われてマッパで逃げる後ろ姿も出てきますが、これは明らかにスタントウーマンですな。体型が違いますがな。
 因果といえば、弟役の伏見扇太郎の実人生のほうが、よっぱど因果だったようで……。


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