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2012-08-09

戦後10年の庶民は「心に花の咲く日まで」

                心に花の咲く日まで120809

 脚本・田中澄江。井手俊郎とくれば、まるで成瀬巳喜男の映画のようでおますが、これは俳優・佐分利信の監督作品。モノクロ、スタンダード画面に展開する庶民の泣き笑いに斎藤一郎のピアノと弦楽器が奏でるメロディーでも流れれば、成瀬映画と見間違いしそうな作品であり、フィルムの質感は五所平之助の映画のような作品でもおます。
 特に劇伴を作曲する音楽家がいるわけでもなく、なぜかコロムビアレコードの協力で「田園交響楽」が流れるこの作品は劇団文学座の製作で、大映が配給している1955年の映画でおます。

 東京のどこかの住宅地の戸建てに、まだ乳飲み子を抱えた芥川比呂志と淡島千景の夫婦が住んどります。造船会社に勤めていた夫は現在、失業中。妻が洋裁の仕立てて何とか家計をやりくりしとります。失業中なのに、夫は気に染まない仕事をしない主義で、いたってのんびりしとります。妻のほうも、そんな夫を急きたてるふうでもなく、表面「仕方ないわよ」みたいな表情をしとりますが、時にはイラッと来ることもありようで、それでも「早く仕事に就いてよ!」とやかましくは言いません。

 まだ「新劇」という言葉が華やかな響きを持っていたころ、新劇青年を体現し、文学座のハムレット役者でもあった芥川比呂志と、それこそ華やかに映画で活躍していた淡島千景との組み合わせ、それも貧乏所帯の夫婦という設定がおもしろおますな。
 文学座の映画といえば、今井正監督のオムニバス映画「にごりえ」(1953年、新世紀プロ・文学座)があり、そこでは芥川は車引きの書生を演じ、淡島さんは酌婦を演じとりましたが、この作品では若い、しかし、貧乏な夫婦でおます。殊に、淡島千景は翌56年、小津安二郎監督の「早春」でも池部良と夫婦役で倦怠期にある人妻を演じとりますが、このころ、堅気の人妻役づいていたのかな?

 失業中の夫と、それを支える妻が自他に起こるさまざまなエピソードを乗り越え、それでも手を取り合って生きていくというストーリーが、感傷に耽るでもなく、乾いたタッチで進んでいく映画でおますが、彼らを取り巻くワキの人間が出たり入ったりのお騒がせ人物ばかりで、にぎにぎしくしとります。演じているのが当時の文学座の面々。
 資産家の生まれで夫も子どもも捨ててきた隣の女に扮する座長の杉村春子や芥川をはじめ、若いツバメ役の仲谷昇、淡島の母親の長岡輝子、当時、杉村が最も信頼していた女優で、分裂騒動で座を去る姉役の文野朋子、コメディーリリーフの賀原夏子、淡島の同級生で二号になっている丹阿弥谷津子のほか、三津田健、宮口精二、中村伸郎、竜岡晋、戌井市郎、加藤治子、北村和夫、小池朝雄など、文学座の映画ですから当然ですわな。映画人は淡島千景ただひとり。
 文学座にとって、まだ分裂騒動など、はるか先の出来事のころでおます。





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