2012-07-12

ようやく安息を手に入れた大女優

                大奥(秘)物語111207
                山田五十鈴(左) 右は藤純子(「大奥(秘)物語=1967年、監督・中島
                貞夫=から)

 山田五十鈴さん、あっちの世界に旅立たれましたね。7月9日、亨年95。
 失礼ながら、ようやくという感じ。
 かつてのライバル、杉村春子が現役のまま旅立った(1997年、公称91歳)のとは異なり、山田五十鈴の場合、病気で表舞台から消えて約10年。その間、療養のためのベッド生活を送らざるを得なかったのは想像に難くなく、現役女優としては立ち往生していた格好でおましたから。
 年齢的には大往生ながら、だから、ようやく安息の「時」を迎えたという感慨は深おます。
 多臓器不全と発表されましたが、年齢、長年の闘病から考え、むしろ老衰であったのかも…。とはいえ、老衰であっても、一世を風靡した美貌の大女優でおます。さすがに老衰とは発表できまへん。

 ボクが「山田五十鈴」なる女優を知ったのは、小学校の低学年のころと記憶しています。
 そのころ、学校の帰り道、田舎町に2軒あった映画館のポスターを見て回るのが日課のようになっており、思えば、そうして観に行きたい映画の情報を得ていたのでおますな。時代はアナログ全盛期でおます。今なら簡単にネット検索が可能でおますが、まだ、そんな文明の利器はおまへん。キネマ旬報や近代映画などの映画雑誌を、小学生が定期購読できる資金もおません。

 そんなある日、いつものようにポスターを見て回っていたボクは、ポスターの俳優名の中に「山田五十鈴」という文字を見て目を丸くしてしまいました。その映画が何であったのかは記憶におまへんが、大映の時代劇でおました。というのも、その映画館は大映作品をメーンにした小屋であったからでおます(滅多に入ることはおまへんでしたが)。

 やまだ・ごじゅうすず……

 多分、目を丸くしたのは「なんと、すごい名前の女優もいたもんだ!」と思ったからでおますやろね。女優と分かったのも、そのころの多くの映画ポスターがそうであったように、そのポスターにも顔写真の横に小さな文字で俳優の姓が記されていたからで、列記されている俳優の名前とポスターに載っている顔写真をいちいち照合しながら見ているというのも、子どもならではでおます。
 「五十鈴」がよもや「いすず」と読むことなど知らなかった僕は、その日、家に帰ってその話を聞かせた母親から「それは『やまだ・いすず』って読むの」と教えられましたが、それがボクの女優・山田五十鈴とのささやかな出会いでおました。

 そして、映画・舞台外のナマの山田五十鈴を見かけたのは、出会いの時代からポーンと25年ほど経たころでおました。
 当時、まだ健在だった大阪・道頓堀の朝日座で東宝現代劇の「新編たぬき」を観た時でおます。夜の部が終わって道頓堀から堺筋へ出ると、堺筋に面した朝日座の楽屋口から、ついさっきまで舞台のラストまで出ていた主演女優がタクシーに乗り込もうとしているところでおました。芝居の幕が下りて、まだ10分も経っておりまへん。しかし、素早く舞台化粧を落として着替え、外へ出てきはったんでしょうね。
 「なんと早い……」
 ボクと同じように観劇を済ませたオバサマたちに声をかけられたベルさん、胸元まで上げた手をにこやかに振るとタクシーに乗り込み、夜の堺筋に消えていかはりました。

 あのころ、山田五十鈴はまだまだバリバリの現役女優でおましたんですな。合掌……



 
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映画に育てられたといっても過言ではない山田五十鈴ですが、映画の遺作は『必殺II! ブラウン館の怪物たち』。これが作られたのが昭和60年で、その後は舞台に専念していた訳ですから、まあ晩節を汚さなかったとみてもいいのかもしれません。

大女優山田五十鈴に合う企画がなかったのか、それとも出演依頼を断っていたのか、それは分かりませんが、映画の遺作が『必殺』というのは、それにしてもさびしい限りです。

でも、山田五十鈴はテレビ版のレギュラーなんですよね。これも妙なもので、何で山田五十鈴と思っていた人も多いのではないでしょうか。私は当時山田五十鈴がどういう女優かは知りませんでしたから、後からこの事に気づいてびっくりしてしまいました。

また、もう一つ不幸なのは、やはり戦前の作品がほとんど観ることができないことです。何かと溝口の二作品のみが語られますが、マキノ映画にも秀作が多く、この大女優の出世作である『白夜の饗宴 』が観たいものです。残ってないけど
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