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2012-06-20

私家版加藤泰論への道・番外編 今ふたたびのワールド

               加藤泰特集縮小120620

 先日、東京在住のお友達が「もらってきた」とメールで送ってきてくれたのが上掲の画像でおます。

 「検証日本映画 加藤泰あるいは屹立する情念」

 今月末から東京・池袋の名画座で、またぞろの加藤泰作品の特集上映があるとか。
 加藤泰がこの世に別れを告げて、既に27年。そういえば、今月がその別れを告げた月でおます。

 思えば、加藤さん、遠く年月が流れましたよね。

 上映可能なプリントの有無、世に膾炙されている作品などの選考条件を考えれば、うむうむ、なるほどねぇーという作品ばかり全18本でおます。

◎源氏九郎颯爽記 白狐二刀流(1958年)
 白装束で登場する源義経の末裔、源氏九郎(中村錦之助)の元婚約者で公家の娘に扮する大川恵子に注目を! そのころ、大川恵子はしとやかな武家娘や姫君を得意としとりましたが、この作品では現婚約者で日和見な公家(河野秋武)を尻に敷き、九郎の窮地を救う活動的な女性を演じとります。生きるということにアクティブな女性って、加藤泰の好みでおます。しばしば、その映画に登場してますね。
 宝探しの追いつ終われつの単純なお話でおますが、それまで無気力だった小役人たちが一家総出でワルと闘うあたり、まことに加藤泰らしさに満ち満ちとります。

◎炎の城(1960年)
 「ハムレット」の翻訳劇でおます。オフェーリアを演じる、まだ新人だった三田佳子がよろしおま。子役を経て、ようやく大人の女優としてスタートしたころでおます。
 脚本に八住利雄という、外部の、しかも文芸作品のシナリオライターを迎えてくらいでおますから、これは橋蔵用の大作で、だから、どこまでいっても橋蔵映画でおます。このころの橋蔵のナヨナヨ演技は、今から見れば苦笑モノかもしれまへん。 
 ハムレットの友人に黒川弥太郎、オフェーリアの兄に伊沢一郎が扮しとりますが、この配役、逆にしたほうが面白かったのでは? 三田佳子の兄が伊沢一郎って、見た目、親子にしか見えまへん。このころ、東映に移籍したばかりの黒川弥太郎も見せ場がおません。
 
◎怪談お岩の亡霊(1961年)
 この作品と中川信夫監督の「東海道四谷怪談」(1959年)とは戦後のお岩映画の双璧と言ってもよろしおますが、あちらが泥絵具のようなカラーでおどろおどろしさを演出しているなら、こちらは陰湿なモノクロで勝負し、江戸末期の下層社会の人間の息遣いを伝えてはります。
 登場人物のほとんどがノーメイクで、季節感を大切にした加藤泰らしく、額に浮かぶ玉のような汗はそのままにおいが漂ってくるようで、湿気の多い蒸し暑さを感じさせ、お岩以上にこわおます。

◎瞼の母(1962年)
 加藤泰が、好きな長谷川伸の世界に本格的に挑んだ作品で、今、長谷川伸と聞いて、どれくらいの人が「知っている」と答えることか? 主演の中村錦之助のスケジュールの都合でわずか2週間で撮り上げたことは有名で、「二度とやらぬと決めた早撮り…」と本人も振り返ってますが、産業としての映画がまだ健在だったころ、往々にして、こういうことはあったというわけでおますな。
 全編、セット撮影の江戸の町の建て込みが見事で、そんな中に展開する市井の人たちの姿。過日、ボクの友達がテレビで初めて、この作品を観て三味線弾きの浪花千栄子をからかう酔っぱらいの星十郎の立居振舞に感心しとりました。もちろん、彼は星十郎なるバイプレーヤーは知りまへん。しかし、かつては振り当てられた役に即座になりきり、観る者の目を見張らせる役者はごまんとおったのですけどね。

◎風の武士(1964年)
 片岡千恵蔵、市川右太衛門の映画を東映時代劇の本流とするなら、加藤泰はその本流から外れていた監督でおます。かわりに、よく組んだのが大友柳太朗であり、中村錦之助や大川橋蔵の若手であったのでおますが、その橋蔵の主演映画。司馬遼太郎の伝奇小説を原作に、メロドラマを軸にした大チャンバラ映画で、幕府の隠密の橋蔵と紀州の隠れ里の姫君、桜町弘子の哀しい恋のてん末が綴られとります。

◎車夫遊侠伝 喧嘩辰(1964年)
 加藤泰ファンなら、誰しも「これぞ、加藤泰!」と認めている作品でおます。19世紀末の明治の大阪を舞台に東京から流れてきた車ひき、内田良平と勝気な芸者、桜町弘子との、おかしくも…やっぱり、おかしい恋の行方を中心に、おもしろうて、やがて哀しきお話が進む作品。独特のローアングル、人がいっぱい出てきているワンショットの長回しは既に確立されとります。
 主人公2人の人物造型って、加藤泰夫妻がモデルやと思っとります。

◎幕末残酷物語(1964年)
 「武士道残酷物語」(監督・今井正)や「陸軍残酷物語」(監督・佐藤純弥)など、このころ東映が凝っていた「……残酷物語」の一作。幕末の幕府お抱えの殺戮集団だった新選組を舞台に、そこへひとりの若侍(大川橋蔵)を放り込むことにより、集団内部に起こり得る狂気、矛盾をえぐり出しとります。
 いつも目張りバッチリの橋蔵がノーメイクで頑張り、主要キャストの紅一点、わがご贔屓・藤純子が絶対よろしおま。このころの純子は女優2年目を迎えたころでおました。

◎明治侠客伝 三代目襲名(1965年)
 任侠映画最高傑作とされている作品でおますな。もともと小沢茂弘監督が演出するはずだったのが、小沢監督がプロデューサーと喧嘩してしまい、それで加藤泰に回ってきたとか。しかし、この作品で加藤泰も喧嘩しとります。相手はプロデューサーではおません。主演の鶴田浩二と、でおます。喧嘩が語弊あるなら、演技についての意見の対立でおますな。「ならんものは、ならん!」というのが加藤泰のポリシーであり、対する鶴田も絶対の自信を持つ大スターでおます。そりゃ、ぶつかるがな、ですね。
 やくざの世界に生きる男に女をからませ、この男と女は、お互いに自分のことを「アホや」と言うているところが泣かせどころでもおます。加藤映画では滅多に見られないオーバーラップを使い、男女のどうしようもない心の揺れを見せてます。

◎沓掛時次郎 遊侠一匹(1966年)
 再度、長谷川伸の世界でおます。このころ、既にチャンバラだけでは済まなくなった時代劇で、愛してはならない女を想ってしまった男の苦しみ、本来憎むべき相手なのに心の中に相手のことが次第に大きく占めるようになった女の哀しみが交錯し、「男は女を求める、女も男を求める」加藤泰の世界でおますな。
 「幕末残酷物語」が大川橋蔵との最後のコンビ作品なら、この作品は中村錦之助との最後の顔合わせで、この後、錦之助は「丹下左膳 飛燕居合斬り」で東映にバイバイしとります。そして、池内淳子の子ども役で出ている少年が現在の二代目・錦之助となり、時は流れ、流れとりますな。

◎骨までしゃぶる(1966年)
 無知な女の子が世の中のからくりを前に社会性に目覚め、自分の人生を切り拓いていく姿を、明治の東京・洲崎の遊郭を舞台に描いた作品。こういう積極的な女性は加藤泰の好みで、悲劇に泣き暮れているばかりの女性など、相手にしとりません。
 郭主(三島雅夫)に反抗して罰をくらったヒロイン、桜町弘子が先輩女郎の久保菜穂子に諭され、悔し涙を流すあたり、加藤泰の人生経験が裏打ちされているようでおます。「怪談お岩の亡霊」以降、加藤作品のヒロインとなった桜町弘子の唯一の主演映画で、今回は本人のトークショーも予定されているとか。

◎みな殺しの霊歌(1968年)
 珍しく加藤泰の現代劇で、暗い、暗い作品ながら、そこには怒りがはらんどります。少年を弄んだ有閑マダム(古い言葉やね)が次々と殺されていくという、山本周五郎の「五弁の椿」のようなストーリーでおますが、今、この作品を観ると犯人の殺人の動機は、ちょっと誤解? されるかも、でおます。 

◎緋牡丹博徒 花札勝負(1969年)
 わがご贔屓・藤純子の「緋牡丹博徒」シリーズの3作目でおます。後輩・鈴木則文の前作「一宿一飯」のヒロイン、緋牡丹のお龍の優等生ぶりに疑問を持った加藤泰がお龍の生い立ちを徹底調査し、人間・お龍に近づこうとした作品でおます。同時にシリーズ物に宿命でもある、主人公以外のストーリーにどう主人公を絡ませていくのか、苦労したそうでおます。

◎緋牡丹博徒 お竜参上(1970年)
 シリーズ6作目でおます。「花札勝負」で助けた女の子(古城門昌美)が成長してスリの娘(山岸映子)として登場してくるので、続篇ともいえますが、加藤さん、お龍をいじめてはりますなぁ~。今や、伝説となったかのような今戸橋での女と男(菅原文太)とのやり取り、やくざ映画定式の何がなにしてどうなったのストーリー、まるで東映やくざ映画の見本のような作品でもあります。

◎緋牡丹博徒 お命戴きます(1971年)
 シリーズ7作目。このシリーズは8作で藤純子の女優引退により終了しますが、いち早く、加藤泰が藤純子の演じた強きをくじき、弱きを助ける女博徒に別れを告げた作品でおます。やはり、ここでもお龍は苦しみ、もがき、痛快篇ではあるけれど、加藤泰らしさがプンプン。演じた藤純子は後年、「加藤さんの映画って理屈っぽいのよね」と言ってはりましたけどね。
 
◎昭和おんな博徒(1972年)
 藤純子が引退した後、夢よ、もう一度の東映が女やくざ映画で再度ひと儲けを考えた企画の一本で、加藤泰にバトンが渡されたのは、ここはしっとり、時代劇調にということでおましたのかな。夫(松方弘樹)を殺されたヒロイン、江波杏子が殺した男たちを次々に葬っていくという、トリュフォーの「黒衣の花嫁」でおますな。江波杏子は大映時代の1967年、同じ原作(藤原審爾)で「昭和おんな仁義」という作品にも主演しとります。
 この作品を最後に、加藤泰は東映をバイバイしました。

◎宮本武蔵(1973年)
 「人生劇場」「花と龍」に続く、加藤泰の松竹大作三部作の最後の作品でおます。70年ごろから学生を中心に起こった加藤泰旋風の中、松竹に招かれて立て続けに製作された大長篇映画で、関ヶ原の戦いをきっかけに「一丁やるべぇ」と立ち上がった草深い田舎ににいちゃんの剣を通じた成長物語は知る人ぞ知るでおますな。次第に成長していく武蔵(高橋英樹)と違い、どこまで行っても悟れない又八のフランキー堺、仙人のような沢庵和尚の笠智衆は絶妙の配役でおます。

◎日本侠花伝(1973年)
 もともと浅丘ルリ子主演の日活映画として予定されていたのが、お家の事情で流れ、東宝で映画化された加藤泰のオリジナル脚本による作品でおます。このころ、東宝ってまだ自社製作していたんですね^^
 「骨までしゃぶる」同様、社会性に目覚めた女の子(真木洋子)の成長物語でおます。ホンマ、加藤泰って強い女性が好きなんやから。真木洋子は当時のNHKの連続テレビ小説で一躍、全国区のスターになった女優でおますが、既にあちらの世界に引っ越してしまった人でおます。

◎炎のごとく(1981年)
 加藤泰の最後の劇映画となった作品でおます。京都に実在する指定暴力団が元祖としている男が主人公のため、当時、京都府警からクレームが入ったこともおましたが、内容はひとりの青年が幕末を生き抜いていくお話で、なぜ、そんな人物を主人公にしたかについては、製作プロの代表・松本常保の極めて個人的な思いに発しているとか。かつて日本電映を主宰した松本常保、京都の古い映画人でおます。
 この映画でも、主人公をめぐり、強い女性たちが出てきてはります。
 後年、加藤泰は「あの映画がヒットして続篇をと言われなくてよかった。主人公は明治になって悪いことばっかしてたから映画にならへん」と笑ってはりました。





































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そういえば昨年もこの時期に特集があり同じようなブログをアップされていましたね。

で、昨年と比べてみたんですが、今回の解説の方がボリューミーですね。

とはいえ、上映プリントが少ないのか、殆ど同じ番組編成です。

実は、今月は、昨年の会場で脚本家の神波史郎追悼特集をやっていて、そちらには『真田風雲録』が入っていますが、さすがに遠慮したのか文芸坐には入っていません。にもかかわらず阿佐ヶ谷で上映された『骨までしゃぶる』と『喧嘩辰』は入っている。

もう少し広い視点で見れば、この小屋では倍賞姉妹特集でも加藤泰作品の上映がありましたので、『炎のごとく』とかも半年間隔の上映です。

地方からすれば恵まれているのでしょうが、出来たら、もう少し違う作品も観てみたいというのも人情です。

そろそろ遺作の35ミリ版の再上映をどこかでやりませんかね。

痔の友人さんへ

 おっしゃる通りですね。加藤泰作品が上映されることはうれしいことですが(地域的な事情でボクは観られないけど)、今回取り上げられていない作品がもっと上映されないか・・・・しかし、上映可能なプリントがなかったら仕方おまへんね。

 そろそろ、幻のドキュメント、もう一般公開はかなわないのかな? もう一度観てみたいっすね。
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