2012-04-26

マキノの恋と喧嘩は「江戸っ子肌」

                江戸っ子肌2 120419

 錦ちゃんが出たのなら、次はトミイの出番でおます。
 トミイ、つまり、大川橋蔵でおまんな。あちらの世界に引っ越して既に29年。今や、その遺児がテレビや舞台に出ている時代でおます。
 先日、かつて萬屋錦之介(以前の中村錦之助)の奥さんだった淡路恵子の過去を振り返るテレビ番組があり、そこで2人の間にできた子ども2人がともにこちらの世界を去っていたことを知り、さらに、それで錦之介直系の血統が絶えていることを知ったのでおますが、同じく2人の息子をもうけた橋蔵のほうは子役で出ていた長男は芸能界を去り、二男が細々と芸能人の命脈を保ってはります。細々とというのは、決して父親のような主役を張る存在ではないという意味でおます。

 錦ちゃんもトミイも、ともに歌舞伎出身でおます。しかし、片や名女形と謳われ、子だくさんだった三世中村時蔵の四男、もう一方は六代目尾上菊五郎の奥さんの姓を継いだ芸養子。相前後して歌舞伎界から映画界に転身した事情は似ているものの、出自の相違からか、陽と陰のイメージは同じころ、大映でも起こっていた伝統芸能から映画への転身組の市川雷蔵と勝新太郎のイメージと匹敵してはります。やはり、こちらも雷蔵は関西歌舞伎の市川寿海の養子、勝新は長唄の杵屋勝東治の二男で、実子と養子という出自から来る当人たちのキャラクターの相違は似通っています。

 錦之介、雷蔵、勝新は今に至っても語られることが多い俳優でおますが、不思議なことに橋蔵が語られることはめったにおません。何かの折に彼を語っている書籍を目にしても、錦之介は絶賛されていることはあっても、橋蔵の場合、ボロクソでおますな。同じ時期、主役を張った東千代之介、脇役としてよく共演していた加賀邦男、1965年の時代劇「御金蔵破り」で初めて組んだ石井輝男監督などの証言を読んでも、橋蔵の評判は芳しくおません。いずれも橋蔵がこの世から消えた後の話なので、欠席裁判という意味合いで差し引かねばならない部分もおますのやろうけどね。

 さて、今回取り上げた作品は1961年のマキノ雅弘監督の「江戸っ子肌」でおます。
 恋と喧嘩は江戸の華と言われ、歌舞伎や映画によく取り上げられている火消し同士の喧嘩と恋のさや当てのお話で、まことに当時の橋蔵にはぴったりの映画でおます。「お洒落狂女」などの邦枝完二の原作を映画化したもので、戦前、石田民三監督で長谷川一夫、山田五十鈴、花井蘭子、黒川弥太郎が共演した「喧嘩鳶」の再映画化作品でおます。




                江戸っ子肌3 120419
                 淡島千景(右)と桜町弘子

 加賀藩お抱えの大名火消しの吉五郎(大川橋蔵)と町火消しの纏持ち次郎吉(黒川弥太郎)の親の代からの意地の張り合いに加え、吉五郎をめぐる柳橋芸者の小いな(淡島千景)と次郎吉の妹おもん(桜町弘子)の恋模様の話を、義兄・松田定次並みの短いショットの積み重ねで、マキノさん、スピーディーに、たたみ込むような息遣いで華やかに見せてはります。そのテンポは、まさに当時の東映時代劇そのもので、いつもなら、マキノ映画でもっちゃり展開するような女たちの恋の苦しみの場面も、あっさり気味でおます。

 黒川弥太郎が「喧嘩鳶」の時と同じ役で出ており、それから20年近く経っても同じ役ができたということは弥太さん、若ぅおましたんやね。
 淡島千景はこの当時、なぜかマキノの東映時代劇に3年連続で出ており、1959年の「雪之丞変化」で女スリお初を演じ、雪之丞の橋蔵と共演してはります。翌年には大河内傳次郎主演の「すっ飛び駕」(1952年、大映京都)をマキノ自身がリメイクした「天保六花撰 地獄の花道」で河内山宗俊の市川右太衛門と濡れ場の痕を演じる船宿の女将で出てはります。
 面白いのは、「江戸っ子肌」の時代から50年経った最晩年、淡島さんは橋蔵の息子とテレビ番組「渡る世間は鬼ばかり」(2010年)で共演していることでおます。かつて共演した父親は鬼籍に入って幾星霜、おばあちゃんと孫の役柄でおました。

 珍しいのはマキノ雅弘と桜町弘子の顔合わせでおます。時代劇、任侠映画の時代を通じ、この2人はそれぞれ多くの作品を残してはりますが、同じ映画で監督と出演者として顔を合わせた作品は1957年の「おしどり駕籠」、この「江戸っ子肌」、1965年の「任侠男一匹」1968年の「侠客列伝」のたった4本しかおません。
 桜町弘子はマキノの義兄・松田定次が発掘した女優であるため、マキノは義兄に遠慮していたのか、あるいはマキノは型から入っていく演出法のため、桜町弘子はよく言われているように心から入る加藤泰の薫陶を受けた女優なのでマキノは敬遠したのか、それとも単に機会がなかったのか、そこんとこ、謎でおます。




 
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二次元も悪くないけど・・・

8933Ldt5
二次元も悪くはないんだけど・・・
やっぱ、三次元っしょ
http://6zJ916X5.www.ma3ji.mobi/6zJ916X5/

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