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2006-04-27

35)しのぶの「仇討崇禅寺馬場」

仇討崇禅寺馬場110202


 マキノ雅弘監督の特徴もまだ分からないころから「マキノ雅弘」という名前を知り、時代劇、任侠映画を通して、これまで幾多のマキノ雅弘映画に接してきましたが、なかなか観る機会がなかったのが1957年度の「仇討崇禅寺馬場」です。

 マキノ雅弘の戦後はリメイクの連鎖といっていいほど、かつて自分が監督した作品を、その時代に応じた俳優たちで再映画化しています。この「仇討崇禅寺馬場」もそんな1本で、まだ「マキノ正博」と名乗っていた1928年に「崇禪寺馬場」として映画化されています。
 もちろん、最初の作品は観ていません。というか、もう観られないのですよね。戦前の多くの映画の例に洩れず、フィルムが失われたままなので、もし残存していても断片かもしれず、もはや幻の映画ですね。

 さて、戦後作られた「仇討崇禅寺馬場」は、その後、長くテレビ放映でも観ることができず、1981年度の東映時代劇の断片を寄せ集めた「チャンバラグラフティー 斬る!」の中に主演の大友柳太朗と千原しのぶが悲劇的な最期を遂げるラストシーンが挟み込まれていました。
 それから20年近い時間が流れ、なにかの映画祭用(どんな映画祭だったか、忘れた^^)の上映作品として、この作品はニュープリントで甦り、ようやく観ることができました。
 ボクが観たのは、その映画祭ではなく、それからさらに数年を経てからで、2000年、場所は大阪・通天閣下の新世界東映です。20世紀最後の年で、もう6年も前のことなんですね。


 主演は先述したように大友柳太朗と千原しのぶ。山上伊太郎の原案を依田義賢が脚色しています。
 マキノファンなら先刻ご承知でしょうが、戦後のマキノ作品には武家物というのは珍しいですよね。浪人はさておき、宮仕えしているお侍さんは嫌いなのだろうかと思うくらい、侍が主人公の映画というのは少ないほうです。かと思えば、美空ひばりに中村錦之助、高倉健を付き合わせた「千姫と秀頼」というような戦国の歴史絵巻のような時代劇もあったりして、まさに「何でもありぃーのマキノ雅弘」です。

 この「仇討崇禅寺馬場」は、その珍しい武家物ですが、後半は町人の世界になり、次郎長や石松、はたまた、火消しや木場の男たちが登場する町人映画のいつもの息遣いとまではいかなくても、前半と後半とではまったくマキノのノリが異なる不思議な映画になっています。
 大和郡山藩の剣術師範を務める生田伝八郎(大友柳太朗)が御前試合の遺恨から試合相手の侍(高木ニ朗)を斬って出奔する事の起こりまでが前半。 ピーンと息詰まるようなモノクロ画面ながら(この映画、シネマスコープですが、総天然色ではありません)、主人公の伝八郎が陥ることになる心理状態を暗示するかのように陰気なシーンが続きます。あたかも「早く明るくなりてぇー」とマキノが叫んでいるようです。
 大和郡山を逃げ出した伝八郎は大坂に身を潜め、荷役請負業の万造(進藤英太郎)の家に居候しています。後半の始まりですね。マキノは京都生まれながら、関西、とくに浪華を舞台にした映画というのも、これまた数少ないですね。ニ、三の例外はありますが、なぜか、意識的に関西を避けていたのでしょうか。
 この万造の家を中心に後半は町人の世界となり、万造の子分役の杉狂児や時田一男という三枚目役者が動き回りますが、なによりも忘れてはならないのが千原しのぶ演じる万造の娘・お勝です。

 このお勝、大阪の町家のおねーちゃんらしく、勝気でしっかり者で、居候の伝八郎に惚れています。惚れるのはいいのですが、この人がお騒がせな女の子なんですね。なにしろ、このおねーちゃんの独り勝手で強引な行動のために伝八郎さん、次第に狂気の世界に足を絡め取られていくのですから。
 同時に、この後半は大友柳太朗が主役というより、千原しのぶが主役のようになって、マキノの演技指導のもと、時に声が裏返りながらも、が然、千原しのぶがハッスルします。
 斬った侍の兄弟二人(堀雄ニ、三条雅也=小柴幹治)が自分を追って大坂に出てきていると知った伝八郎は、果し合いをするため、わざと兄弟の前に現れ、大坂の北東に位置する崇禅寺横の馬場で決闘することになります。
 悩んでいたんですね、伝八郎は。普通なら仇として追われている身なら逃げるのが当たり前ですが、兄弟に斬られてやろうとさえ決心していた伝八郎はマジメな人なんですね。演じるのが「ドン太朗」とマキノにあだ名されたほど、不器用な役者だったという大友柳太朗ですから、余計マジメに見えます。

 果し合いのことを知ったお勝さん、「あの人を死なせてたまるかいな」とばかり、一計を案じて子分たちを総動員して崇禅寺の馬場に駆けつけ、兄弟と尋常に勝負しようとしていた伝八郎を無理やり連れ去ってしまいます。そればかりか、試合相手の兄弟は子分たちに寄ってたかって弄り殺しにされてしまいます。
 お勝さんの浅はかといえば浅はかな、しかし、愛してやまぬ男を死なせないために非常手段に出た哀しい女心ですね。でも、やはり、お勝さんは町人です。好きな男であっても、伝八郎の武士としての心情まで理解は及びません。こののち、お勝の手配で姿をくらませた伝八郎は隠れ家で鬱々とした日々を過ごし、自責の念から兄弟の亡霊を見るようになります。これまた、お勝さんには見えません。

 このことが大坂の町中の噂になり、お勝の父親の万造は役人に脅されて商売上、伝八郎の反目に回ります。子分たちも親方に一喝され、もうお勝の味方はできません。もはや、伝八郎を守るのは、お勝だけです。しかし、その守るべき男は完全に狂っています。
 そのうち、事の次第を知った伝八郎の養父(三島雅夫)や兄弟の老母(松浦築枝)などが大坂に現れ、やがて、自分が殺したも同然のような兄弟の亡霊に導かれるように正気をなくしている伝八郎は夜の町をさまよい、崇禅寺の馬場に姿を見せます。
 もはや、伝八郎には兄弟の亡霊しか見えません。寄り添うお勝すら分からない状態ですから、養父たちや万造、はたまた、大勢の町人に囲まれていることすら認識していません。
 ここで、遂に伝八郎とお勝は悲劇的な最期を遂げることになるのですが、自分たちを取り囲む父親たちを睨みつけて、お勝さん、最後の叫び声を上げます。
 
 「誰がこの人をこんな目にあわしたんや。あんたら、何も知らんと、何も知らんと・・・あほ、あほ、あほ・・・!」

 せやけどねぇ、そう叫ばれても、お勝さん・・・・・・。アンタにも女の意気地があるように、男にも曲げられへん気持ちちゅうもんがあることを分からなんだアンタがおろかやったんとちゃうの??
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