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2011-12-13

「別れのタンゴ」で美女には薄倖を

                 別れのタンゴ11212

 マイホーム名画座に取り上げたのは1949年製作の、松竹大船作品「別れのタンゴ」でおます。
 服部良一作曲の、歌う映画女優だった高峰三枝子のヒット曲に乗せた悲恋ドラマで、脚本は後年、東宝喜劇に参画する長瀬喜伴、監督はこれまた後年、東映時代劇の監督ナンバー2になる佐々木康、小津安二郎の弟子筋に当たる人ですね。ついでに小津つながりで記せば、撮影は厚田雄春でおます。

 高峰三枝子といえば、ボクなどは「おばさま」になってからしかリアルタイムでは知らず、ちょっと軽い感じもあった印象でおますが、戦後すぐまでの高峰さんて、ホンマ清楚な感じの美女でおますな。
 戦前の作品などを観ると殊にそうで、当時の松竹の若手スターとして並び称された高杉早苗(香川照之のおばあさん)、桑野通子(消えた女優、桑野みゆきの母親)、三宅邦子(小津映画のほぼ常連)などと比べても群を抜いとります。個人的には、高杉早苗のあの勝気そうな感じがいいのでおますが…。

 高峰三枝子は資産家の令嬢で、歌手デビューする娘さん。彼女のデビュー曲が自分の作曲したメロディーだったことから彼女と恋仲になる売れない作曲家に若原雅夫、資産家の顧問弁護士で娘さんを秘かに慕っている青年に佐分利信、売れない作曲家を愛する田舎出の娘に高杉妙子、レコード会社のプロデューサーに清水一郎、作曲家が出入りする飯屋の気のいい夫婦に坂本武、高松栄子という布陣で、この松竹メロドラマは構成されとります。








 当時の若手スター、高峰三枝子に、これまた当時の若手イケメンスター、若原雅夫の組み合わせでおますが、美男美女の恋物語が必ずしも「めでたし、めでたし」で終わると限らないのは洋の東西を問わず、今も昔も変わりまへん。

 高峰さん、また失恋しちゃいます。
 というのも、この作品を観ながら吉村公三郎監督の出世作である「暖流」(1939年、松竹大船)を思い出したからでおます。「暖流」でも病院の令嬢に扮した高峰さんは、赤字病院の立て直しに乗り込んできた経理マンの佐分利信に恋をし、振られてしまってます。佐分利信が選んだのは看護師(当時の看護婦)の水戸光子で、これが高峰のハイソサイエティー雰囲気とは違い、庶民派バリバリの娘さん。

 振られた高峰さんが涙に濡れた顔を海の水で洗う浜辺のラストシーンが印象的でおますが、経理マンが結婚の相手に高峰三枝子より水戸光子を選んだのは、むべなるかなでおます。
 かつて、戦後の30数年を東南アジアのジャングルで生き抜き、日本に生還した陸軍中野学校の元少尉が「理想の女性のタイプは?」と聞かれた時、「水戸光子さんのような人」と答えていましたが、当時の青年たちにとって水戸光子のような庶民派タイプこそが身近な存在であり、高峰三枝子のような女性は美人ではあっても美人すぎて実感がなかったのでしょうね。

 同じようなことが「別れのタンゴ」でも起こっています。
 令嬢歌手が無名の作曲家の作品を令嬢自身の作曲として発表し、のちにトラブルが発生するのはレコード会社のプロデューサーの独断で、決して令嬢の故意ではおませんが、罪滅ぼしの一端に令嬢は作曲家を自分の豪邸に住まわせ、作曲に打ち込めるようにします。豪邸であっても、ひとつ屋根の下に暮らしていれば、若い男女が魅かれ合うのは当然で、ここんとこ、恋心とは別に作曲家に令嬢歌手を足がかりに世に出ようと考える打算があったかどうか…。

 ところが、彼の心を翻意させるのが庶民派の娘さん、高杉妙子でおます。当時よく出ていた女優さんで、東宝の中北千枝子の大船版ですね、わかりやすく言えば。作曲家は元はバイオリニストで、指を負傷して以来、失意の日々を送っていたのですが、立ち直るように励ましていたのが、この娘さん。
 思えども想いはかなわず、令嬢邸で暮らす作曲家への想いに踏ん切りをつけ、田舎へ帰っていくのでおますが、その気持ちに気付いた作曲家は令嬢に別れを告げ、娘さんの後を追うように立ち去っていきます。

 一時は上流社会の令嬢に心を奪われた作曲家も自分の身の丈に合った愛を見つけて目覚めたわけですが、令嬢との別れのシーンで「あなたを本当に幸せにできるのは弁護士さんです」と言うのは、失意の令嬢にすれば余計なお世話なんでおますけどね。
 歌手として人気が出てきた令嬢、黒のドレスに身を包み、作曲家が残していった「別れのタンゴ」を歌いながら短かった彼との日々をしのぶしかおません。
 それが、冒頭の画像でおます。



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