--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2011-10-27

「一命」のどこを3Dで?

                 一命111025
  

 侍社会の内実を描いた作品を多く残している滝口康彦の短編小説「異聞浪人記」の映画化作品、とうよりも、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞している小林正樹監督の「切腹」(1962年、松竹京都)のリメイク作品で、2D、3Dで同時公開の映画でおます。

 監督の三池崇史は、やはり、アクション監督ですな。映画の構成(脚本・山岸きくえ)はほぼ前作と同様の道をたどりつつ、一件落着後に描かれる参勤交代で出府してきた大名(平岳大)を迎える江戸家老(役所広司)以下の家臣団の表情に何かあるべきはずなのに、何も感じられまへん。そこにはヒネリもアイロニーも、終幕にあってしかるべきものがなかったら、観るほうもつろうおまっせ。

 さて、「切腹」も暗く、うっとおしい映画でおましたが、この「一命」も主人公の浪人(市川海老蔵)一家の極貧の生活ぶりがチンタラ、延々と、まるで何で若い浪人(瑛太)が切腹に至ったのか、何で海老サマ浪人が大名屋敷に乗り込んでいたのかを解き明かすように続き、「もう、そろそろ、ええんとちゃう?」と思うくらい、暗い生活ぶりが続いとります。
 だから「これのどこを3Dで観たらええねん?」なんでおます。
 確かにラストには海老サマ浪人が竹光一本で並みいる大名の家臣団と闘う殺陣シーンが用意されており、これはこれでよく練られたアクションが展開しています。しかし、そこだけのための3Dなら「たった、それだけ?」なんでおますな。
 ボクが観たのは2Dのほうでおましたが、それとも3Dのほうでは3D用に何か特別の編集が施されていたのでおますやろか?





 

 



 この作品を「封建社会の悲劇」などと手垢にまみれた修辞で飾っても仕方おまへん。製作者側が意図したのかどうか、これ、十分に現代社会に置き換えられるのでおますな。

 主人公は豊臣政権から徳川政権に移行する時代、徳川政権に与した大名、福島正則の家臣で、武勇の侍でおます。やがて、徳川政権が安定期に入ると、かつては政権奪取に協力した多くの大名が徳川幕府にとっては邪魔になってきます。殊に前政権のシンボル、豊臣秀吉直下の大名は目の上のタンコブで、秀吉子飼いの大名だった福島家は簡単に解散の憂き目に遇い、主人公は浪人になってしまいます。
 いわば、会社倒産で職にあぶれてしまったおっちゃんですな(おっちゃんというには、孫までできるという設定なのに海老蔵サン、若すぎたのが難なんです)。

 これに対し、おっちゃんが亡くなった盟友(中村梅雀)から成育を託された若い浪人、求女や実の娘で求女の妻になる美保(満島ひかり)はおっちゃんたちの次世代ながら巡り合わせが悪かったのか、物ごころついたころからの貧乏生活で、踏んだり蹴ったりの若者たちでおます。

 つまり、おっちゃんは長く職にあぶれてはいるものの、高度成長期を下支えし、一応は繁栄のおこぼれも味わったことのある世代でおます。
 しかし、若者たちはバブル崩壊期以後に成人した非正規労働者群というべきか、フリーター群というべきか、1度も社会の繁栄というおいしい果実を味わったことのない世代でおます。おまけに小銭稼ぎだったつもりが無理やり竹光で死ぬことを強要されたり、手内職で家計を支え、育児にいそしんできたのに不治の病の末に憤死するような最期を迎えては若者たちの立つ瀬がおません。

 そこで、この作品を繁栄の果実の味を知るおっちゃんが果実の味を知らずに西方へ行ってしまった若者たちになり変わり、不公平な社会に立ち向かった悲噴のドラマとしたら、ね、ちゃんと現代に置き換えられるでしょう?
 不公平な社会を代弁する、つまり、繁栄を続ける企業ともいうべき、浪人が訪れ、ドラマの舞台となる大名が井伊家だったというのも皮肉でおますな。なぜなら、解散させられた福島家と違い、井伊家は藤堂家、伊達家、前田家などと並んで戦国期から江戸期、さらに幕末へたくみに世の中を泳ぎ抜いた大名ですからね。

 それにしても若い浪人の瑛太の切腹シーンで、瑛太の周りを取り囲むように坐る「並び大名」ならぬ「並び家臣」の面々の表情、「なんとかして~ぇ!」でおます。大根やニンジンを並べているのとわけとちがうで!
 これって、モブシーンを撮れる監督がいない証左なのか? ほかの映画でも気になる点でおます。







関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。