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2011-10-22

おさらばで御座んす「女渡世人 おたの申します」

                女渡世人おたの申します


 ご贔屓、藤純子の女優引退のため、わずか2本しか製作されなかった「女渡世人」シリーズの2作目でおます。役どころは1作目同様、母を恋するフリーランスの女やくざでおます。ただし、「瞼の母」の焼き直しではおません。封切は1971年7月末でおました。

 「緋牡丹博徒」シリーズのヒロイン、矢野龍子が旅から旅へ流れ歩いていても組織の親分だったのに対し(ただし、4作目まで、その組織は壊滅状態でおましたが)、「女渡世人」シリーズのヒロイン2人はどちらも組織を持たない、組織に頼らない孤高の? 女やくざでおます。
 これって、意識的なキャラクター造型だったんでしょうね。どっちも同じような境遇だったら、変わり映えしないし、新しくシリーズを企画する意味もおません。

 純子が演じる女やくざは、通り名を上州小政(本名は太田まさ子)と名乗る流れ者でおます。
 小さいころに実の母親が男をつくって姿をくらまし、父親の死後、養父となるやくざに育てられたという過去を背負っとります。ただし、前作の妻恋いお駒のように母親は探しとりません。未練はないのかというと、そうでもなく、旅先で知り合った男(菅原文太)に「憎いおっかさんだけど、どこか心の隅で『おっかさん』って呼んでる時もあるんですよ」と自嘲気味に語っております。

 そんなヒロインが他人の母親(三益愛子)に母の面影を抱いたことから、ズブズブッと「不幸のどん底」に陥っていくという作品(脚本・笠原和夫)でおます。
 サブストーリーとして描かれる、この疑似親子物語は、母親を盲目の老女として設定するすることで昔からしばしば描かれとりますが、かつて母もの映画で鳴らした三益愛子と純子の絡みは最後の最後まで魅せとります。





              おたの申しますタイトル


 「女渡世人」シリーズは「緋牡丹博徒」シリーズ同様、藤純子が歌う主題歌も作品中に挿入されとりますが、なぜか、1作目と2作目では歌が違うのでおますな。
 「いのちひとつを ふたつに分けて 義理も立てたい 情もほしい…」(作詞・星野哲郎)で始まり、レコード化(当時はCDなんておません)もされた1作目の主題歌に対し、2作目では、

 「おんな おんなだてらに 渡世を張って 切った仁義に憂いが残る
  どうせ日向に咲けぬなら 夏の終わりに そっと散ろう
  どうぞ おたの申します」 

 と歌詞もメロディーも全く違う主題歌(作詞・作曲=渡辺岳夫)になっており、こちらはレコード化もされとりません。
 統一された主人公でなく、異なる主人公のシリーズ物とはいえ、なんで、こうなったんでしょうね?

 さて、純子演じる小政姐さん、自分が胴師として仕切った大阪の賭場のもめ事で死んだ男(林彰太郎)が残した借金の取り立てのため、瀬戸内海の漁港に現れます。そこで例によって訪問先の網元(島田正吾)の土地を狙っている地元の親分(金子信雄)の悪行三昧を見逃しておけず、解決に乗り出すのでおますが…。

                 おたの申します110728

 小政姐さんがよかれと思ってしていることが、どんどん悪い方へ向かって行くのでおますな。
 事態のもつれはもとより、網元の世話になっている長屋のおかみさんたち(三原葉子、丸平峰子ほか)のためにも姐さんは孤軍奮闘、粉骨砕身、頑張るのでおますが、このおかみさんたちの小政姐さんを見る目は首尾一貫、冷とうおます。

 当初は網元を訪れた大阪のお客ということで、おかみさんたちも姐さんを温かく迎えるのでおますが、やがて、その大阪のお客が網元を苦しめに来た悪魔の使者だと分かると、おかみさんたちの態度は一変し、姐さんが火事場から赤ん坊を助けようと、金子親分の子分たちを懲らしめようと、小政姐さんが頑張れば頑張るほど、おかみさんたちは態度を硬化させていきます。
 そりゃ、そうですわな。この悪魔の使者は網元を苦しめるばかりでなく、金子親分から網元の借金のために長屋からの立ち退きを迫られては、自分たちの生活権まで脅かす存在でおます。揚げ句、長屋が焼き払われ、おかみさんの1人(上岡紀美子)の亭主(藤浩=のちの北斗学)が殺され、頼りの網元までも殺されては、いくら小政姐さんが金子親分を退治してくれたところでたまったもんではおません。

 強きを挫き、弱きを助ける東映任侠映画は、義侠心に燃えた主人公が力ない堅気の人たちを悪者の手から守り、それで堅気の衆たちも「おおきに、おおきに」で、たとえ、主人公が命を落としたり、官憲に連行されたりすることがあっても万事めでたし、めでたしの今から振り返ればユートピアのようなお話が通り相場でおました。
 しかし、「おたの申します」に登場する堅気の衆たちは、主人公が悪者を倒したからといって絶対に主人公に感謝しようとはしてまへん。それはもう厳しいくらい、貫き通されとります。
 ここで、笠原・山下コンビがそれまで任侠映画で描かれていたやくざと堅気との位置関係を従来の逆バージョンで進めたことが分かります。もはや、強きを挫き、弱きを助けるやくざ像(あくまでも虚構の中で)など通用しない時代の推移を敏感にかぎ取っていたのですやろね。
 この時期、まだ藤純子の婚約、女優引退は公表されとりません。地下で着々と準備は進められていたのでしょうが、思えば、緋牡丹お龍をはじめ、純子がやくざを演じた最後の映画が、昔ながらのパターンを踏襲した映画でなかったことは、東映任侠映画史にあっては皮肉なことでおます。

              おたの申します3

 おかげで、主人公の小政姐さん、せっかく堅気の中に入っていこうとしたのに、その夢は無残にも粉砕されてしまいます。
 そこを慰めているのが、小政が連絡船の中で知り合う菅原文太でおます。服役中に弟夫婦を殺した男(待田京介)を探して小政と前後して漁港にやって来るのでおますが、おかみさんたちに弾かれ、泣きじゃくる小政の横にたたずみ、

 「姐さん、やくざは日陰の花だ。日陰の花が日向に咲こうとしたって、てめえがつらくなるだけですよ。姐さんの花の美しさは、あっしが見てます、知ってます」

 なぁ~んてキザったらしいセリフで慰めとります。
 これに対し、小政も、やがて待京を見つけた文太がドスを振り上げた時、
 
 「待ってください。こんな男を殺しても弟さんは喜びはしません。私は、あんたに赤い着物を着せたくない!」

 赤い着物とは、囚人服のことでおます。この時、小政は自分の熱い言葉にハッとわれに返り、思わず文太から身を離すのでおますが、この2人の言葉って、「I love you」などとストレートに思いを口にできなかった任侠映画のヒーロー、ヒロインのお互いがお互いに贈ったラブメッセージなんでおます。

 やがて、小政が縄を打たれて官憲に引かれていくラストシーンの純子の演技、絶対の見ものでおます。

 
 
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