2011-09-16

任侠映画の道行は「デンデラ」

デンデラ110915


 姥捨て伝説の捨てられたお婆さんたちのその後を描いた天願大介監督の「デンデラ」を、ようやく観てきました。これも「小川の辺」同様、今年6月の全国公開の時に観逃していた作品で、かかった映画館は地方都市のシネコンでおます。

 「あの浅丘さんが素顔に近いメークでお婆さんを演じるのなら…」と思ったかどうか、雪山に捨てられる浅丘ルリ子以外、お婆さんを演じているのは草笛光子、山本陽子、倍賞美津子、赤座美代子、白川和子、山口美也子、角替和枝などなど、老人が山に捨てられる年齢は70歳ですが、その十分条件を満たしているような女優さんばかり(中には、まだ制限年齢に達していない人もいてはりますが)。もっとも、老婆のメーキャップが必要でない年齢の宮内順子なんて古いワキ役女優さんも混じってはります。

 冒頭、村の掟で70歳になった浅丘ルリ子が息子に背負われて雪深い山奥に捨てられます。老人が捨てられるのは深沢七郎の「楢山節考」にもあるように貧しい村の口べらし対策でおます。
 浅丘さん、村の掟には従順でおます。そうすることが立派な行いと周囲に受け取られ、もし、逆らいでもしたら後に残る家族が村の笑い物になって平穏に生きていけないからでおます。山へ行ったら自然に寿命が尽きるのを待ち、死んだら極楽に行けると、浅丘さん、マジ、信じてはります。

 やがて、飢えと寒さで意識を失い、地面に横たわった浅丘さんが蘇生して見たものは…。



 

 草笛光子率いる「デンデラ」と自分たちが呼んでいるお婆さん軍団でおました。


 目覚めて「ここは極楽か?」と思った浅丘さんはたくまし過ぎる婆さんたちを目の当たりにして信じられない心地でおます。会う人、会う人、皆、自分より先に山に捨てられ、死んだはずの村の顔見知りで、いわば自分の先輩婆さんばっかでおます。

 リーダーの草笛さんは捨てられて30年、もう100歳になる大先輩でおます。老いて、なお、意気軒昂な婆さんで、捨てられて絶対死ぬものかとホゾを固めた草笛さん、二番手となる山本陽子を助けるまで孤独に耐え抜いてきた強靭な生命力の持ち主でおます。
 それもそのはず、草笛さんには年寄りになったからといって自分たちを捨てた村に復讐し、村人を皆殺しにしてやるという目的があり、映画の中でも語られてますが、目的意識があってこそ、人間、強く生きていけるのでおますな。

 草笛さんは目的のために30年間で次々と山に捨てられた老婆たちを拾い集めてきました。捨てられたのが爺さんだったら、絶対無視。女たちの集団を作ってきたのですが、同性ばかりの集団でも変に生々しくならないのは、婆さんたちは生命力が強くても既にアガってしまった枯れたような存在だからでおますな。
 自給自足の生活をする一方、お婆さんたちは軍事訓練に熱くなっとります。集まったお婆さんたちは浅丘さんで、ちょうど50人。草笛さんはそろそろ機も熟しごろとみて、計画の実行に移ります。

 人間、いくつになっても心の闇からは解放されんもんでおますな。怨念一筋に「怨み節」で生きてきた草笛さんを見ていると、怨み節一筋だと、なかなか心は平らかになれんもんでおます。だから、もう平和に生きましょうという考えの倍賞美津子婆さんとは対極にあります。その揚げ句、志半ばにして草笛さんは大雪崩であっけなく昇天してしまうのでおますが…。

新入りの浅丘さんはウロウロ、キョロキョロするばかりでおますが、そこは主役でおます。次第に浅丘さんの意識が目覚めてきて、さぁ、それからは…。

 山に捨てられた老婆たちが集まって死生観、無常感を開陳するのかな? と観ていたら映画はだんだん活劇調となり、ついには任侠映画になるんですな、これが! だからこそ、友達の知り合いの新聞記者が、この映画を「婆さんたちのアマゾネス」と評したのも頷けるってもんでおます。

 デンデラが冬眠しそこねた熊の親子に襲われるシーンが2カ所出てきますが、復讐計画に反対して参加しないため、皆から「意気地なし」と陰口をたたかれていた倍賞婆さんが最後、親熊の囲い込みに身をもって行動し、意気地なしではなかったことを自ら証明するあたり、これが任侠映画だったら客演スターが途中で殴り込みをかけ、主役の敵への怒り爆発を誘引させる客演スターの見せ場でおます。
 それにしても倍賞婆さん、行い澄ました修道女のような出で立ちで出てきはりますが、白髪がソバージュだったのは、なぜ? この時代、パーマ技術はなかったから天パとしか考えようおません。

 思わず笑わずにはいられなかったのが、最後のシェークンスでおます。

 親熊をこのまま放置しておけば、残ったデンデラの仲間たちもいずれ死ぬことになります。
 浅丘さん、デンデラを出て、どこかほかの場所に行くことを考えていたのでおますが、最後、この親熊を退治してから姿を消そうと決意し、立ち上がります。
 そこに「私も行く」と浅丘さんの前に立ったのが二番手の山本陽子でおます。
 そして浅丘さんと山本さん、熊を求めて雪山を道行でおます。

 これって、まんま、任侠映画の道行シーンでおます。さしずめ、浅丘さんが高倉健、山本さんが池部良ってとこでおます。そして熊が現れ、浅丘さんを逃すために山本さんは自ら熊の犠牲になりはります。これも任侠映画のお約束ですな。
 いやぁ~、こんなところで女性版「昭和残侠伝」を観せられるとは…! 意外!

 それにしても、熊退治にでかけた2人のお婆さん、か細い杖を頼りに何にもそれらしい武器を携えていなかったのが不思議でなりまへんでした。


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精力的に観てますなぁ。

日活出身の大監督の息子が、日活出身のスター女優2人とタッグを組んだ、それも父親監督のカンヌ受賞作の続編は、東映任侠映画だったというのが笑えますね。

少し観たい気がしました。

ポポ(略)人さんへ

 どこかでかかっていたら、ぜひ観てください。ホンマ、もう任侠映画そのものなんですから。木下恵介やオヤジの今平さんから遠く隔たった姥捨て映画ですよ^^
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