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2011-09-12

「日輪の遺産」のユースケは・・・

日輪の遺産110909


 佐々部清監督の「日輪の遺産」は、終戦当時は13歳の少女だった八千草薫演じる老女、久枝の打ち明け話で始まる戦争秘話でおます。

 あと5日で天皇の玉音放送が日本中に流れることになる終戦直前、阿南陸相(柴俊夫)や梅津総長(串田和美)、杉山司令官(麿赤児)など陸軍中枢から密命を帯びた近衛師団の少佐(堺雅人)と大蔵官僚出身の中尉(福土誠治)、運転手兼ボディガード役の曹長(中村師童)の3人が青年教師(ユースケ・サンタマリア)に引率された20人の女学校生徒を使い、ある物資を指定の場所に運ぶことになります。

 物資とは、マレーの虎の異名を持つ山下奉文(ともゆき)大将が米軍から接取したダグラス・マッカーサー(ジョン・サヴェージ)の祖父の財宝で、金塊200兆円分。運ぶ先は陸軍兵器工場の秘密の穴蔵でおます。しかし、運搬役の少女たちには兵器製造のための軍需物資としか伝えられてまへん。
 久枝(森迫依衣)以下、勤労奉仕に駆り出された少女たちは少佐の命令するままに物資運搬に携わるのでおますが、運び終えた時、少女たちには過酷な現実が待っているのでおます。

 このようにストーリーを紹介すると、スリリングな展開が期待される戦争秘話めいとりますが、そこは平成テイストで、時代でおますな。
 さほどの緊張感をもたらすことなく、タッチはまるでテレビの2時間ドラマのようなサラリ、サラ~リというような印象を与えてくれてます。

 ちなみにテレビの予告編ではバックに「アニー・ローリー」をアレンジした歌声が流れとりますが、本編ではどこにも流れとりません。元ちとせのイメージソングとしてタイトルで紹介されてるだけでおます。
 ぜひ聞きたかったのに…



 【ここから先に進むのは、貴方の勝手次第でおます】








 
 



 少女たちに待ち構えていた過酷な現実とは、任務終了後、青酸カリで引率の教師と生徒20人を抹殺せよという軍命令でおます。

 少佐は仕方なく、軍命令に従おうとします。そして、その任務を終えた時、自分が死んで少女たちに詫びればいいことだと中尉に決意を語ります。
 しかし、その時、中尉は叫びます。

 「死んだら責任が果たせるなんて間違いだ! 死んだら何ができるというんだ。生きていてこそ責任が果たせるんだ!」

 何やら昨今の、失態があるたびに辞めて責任逃れをしているような政治家や企業トップに聞かせたい言葉でおます。
 この中尉さん、それまで少佐に従うだけで、陸軍首脳に呼ばれた時も緊張でブルブル震え、手にする軍刀が音を立てていた、いかにも線の細そうなインテリでおます。そんなにいちゃんがプロの軍人を面と向かって批判しとります。人間、やればできるんだ!^^

 この中尉さんは後に戦後の為替レートについてGHQに乗り込み、マッカーサーに談判します。提案が受け入れられないと死ぬと脅し、マッカーサーの「NO]という返事を聞くなり、自分の頭をピストルで討ち抜いて死んでしまいますが、当初の見かけとは裏腹に過激な性格の人物でおました。

 さて、中尉に励まされ、少佐は少女たちを救うため、嘆願に阿南陸相を訪れるのでおますが、それが終戦の日の前夜。阿南さん、ハラキリの真っ最中でおます。ここんとこ阿南割腹のくだりは岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」(1967年、東宝)が詳しおますな。阿南陸相を三船敏郎が演じとります。

 しかし、陸相は苦しい息の下から、少女を殺せなどという命令は下していないと言います。じゃ、誰が? となりますが、少佐が戻った時、隠してあったはずの青酸カリが何者かのてによって少女たちに配られ、教師と曹長と一緒に風呂場の掃除をしていた久枝を除く19人の少女たちは死んでしまった後でおました。

 少佐のもとに命令書を運んでくるのは、バイクに乗った謎の伝令(金児憲史)でおます。阿南陸相が命令をだしていないとすると、ほかの陸軍首脳が発していたことは分かりますが、この伝令さん、8月のクソ暑い時にピシッと軍服を着込み、おまけにマントを羽織ってます。まるで2・26事件に出てくるような軍人さんの出で立ちで、思わず「暑くないん?」と言いたくなります。

 そういえば、少佐も中尉も同じようにカーキー色の軍服を夏場だというのに後生大事に着て、ほとんど汗もかいとりません。一場面、中尉は上半身、下着姿で出てくるところもおますが、これまた「暑くはないん?」で、アンタら、冷血漢かい? と言いたくなるような、こりゃミス設計でおますな。

 この後、手違いとはいえ、自分の生徒たちを死なせてしまった教師も自死することになります。
 「私は生徒たちを引率しなければなりませんから」と言い、久枝に「お前だけは生き抜け」と言い残して中尉のピストルを手に少女たちが眠る穴蔵に消えていくのでおます。

 普段、テレビでチャラけているユースケ・サンタマリアの唯一の見せ場でおますが、従容と死に赴くこの教師の姿に何やら戦慄を覚えたのはボクだけでおますやろか? 立派な態度とは言い切れない、むろん、当時の人は覚悟ができていたと説明されても「ホンマかいな?」と納得できかねるような、一見、見あげた自己判断ながら、そこに人間くささを感じないのでおました。

 そもそも、なぜ少女たちが物資運搬に選ばれたかというと、この教師が自由主義者であったためでおます。映画の最初で、この教師は憲兵隊に連行されたりしとります。教え子にヘッセやモームの小説を勧めたりしとります。そんな教師と、その薫陶を受けている生徒は戦時下にふさわしくない、使役の後は抹殺してしまえという計画が軍部のどこかで最初から考えられていたのでおますな。

 こうして66年間、封印したままの秘話を老女となった久枝は語り終えるのでおますが、戦後、久枝は一緒に風呂場掃除をした曹長と結婚します。
 この曹長は子だくさんの農家に生まれた男で、軍隊で生きてきた歴戦のつわものでおます。軍隊しか生きる場所がなかったあたり、何やら野村芳太郎監督の「拝啓天皇陛下様」(1963年、松竹)の渥美清めいております。あの映画では、そこが痛烈な時代批判になっとりますが、むろん、この映画ではそんなことには触れてはおませんけどね。

 久枝の66年後を演じている八千草薫に対し、曹長役の中村師童の66年後は悪役商会の八名信夫でおます。スター、八千草薫の夫役に八名信夫とは、偶然にも八並びでおますが、「八名信夫も出世したもんやな」と、これは既にこの映画を観ていた友人との会話の1コマでおます。



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何かダメ映画臭がプンプンしますなぁ。

先日、終戦時に陸軍士官学校に在籍していた人に話を聞きましたが、終戦のことはかなり前から知っていて、その時は冷静で、一部にはやっきになっている人もいたようですが、終わったことに感無量だったということでした。

そういえば同様に山下金貨のことを描いた三船敏郎が監督した『五十万人の遺産』をビデオで見ましたが、これはジョン・ヒューストン監督の『黄金』をモチーフにしたもので、5人の男が争奪戦を繰り広げるというもの。

これもつまんない映画ですけど、まだましかしらねぇ。

それにしても、『ディアハンター』のジョン・サヴェージが出ているとは驚き桃の木でおます。

日本映画史において、ハリウッドの名優が出る映画に佳作なしということを知らないのでしょうかねぇ。前例:『落葉』…。

追伸

そういえば山下将軍に執心して、よせばいいのに監督業に進出して駄作を連発していた故映画評論家もいましたねぇ。

ポポ(略)さんへ

 ははは、いましたねぇ~。誰だったかしら?
 あの人、わが加藤泰が西方へ旅立った時、次回作品になるはずだった「西鶴五人女」の映画化をぜひ実現させたいって言ってたはずなのに、それが山下将軍(耕作さんじゃないですよ^^)の映画に化けちゃいました。まぁ、あの人の手で(監督をしないにしても)映画化されなかったのは何よりの供養になったか…。

しかし徳川埋蔵金じゃあるまいし、運び手だった女子学生を口封じのためにころしちゃうかな?

原作がそうなっているようだけど…。
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