2011-09-10

「小川の辺 おがわのほとり」は草食系時代劇

小川の辺110909


 スクリーンがたった4面しかない田舎のシネコンに、観落としていた篠原哲雄監督の「小川の辺 おがわのほとり」が回ってきたので、ちょっくら車を走らせて観てきました。

 山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」あたりから始まった藤沢時代劇、つまり、藤沢周平の小説を原作とした時代劇を観るのは、この「小川の辺」が初めてでおます。1度、見参しようと思いながらも、あまり食指が動かず、まぁ、このあたりで観ておくのも…と考えつつ、今年7月の公開では時間との折り合いがつかずに…だったのでおます。

 スクリーンの面数が少ないシネコンを身近に持っていると、こういう時は便利でおますな。面数が多いと全国公開と同時になりますが、少ないと時期をずらして公開ということになります。もっとも、そのシネコンはスクリーン数が少ないため、数で稼ぐ算段なのか、いつもは親子連れが期待できるアニメや3DでCGいっぱいのアメリカ映画を長々とかけている映画館でおます。

 東山紀之扮する海坂藩の藩士、戌井朔之助にとっては災難としかいいようのない上意討ちのお話でおますが、この作品、近ごろ珍しく登場人物たちが泣き喚いたり、感情に任せて怒鳴り散らしたりというようなこともなく、演出は正攻法で静かな語り口で話をつむぎ、主人公主従が旅行く道中では紀行映画のようなショットで四季の自然に彩られた山河の絵を見せております。衝撃的なショットがあるわけではなく、劇画的なショットでつなぐわけでもなく、いわば、草食系時代劇でおました。
 草食系って、若い男の子だけの形容詞ではなかったんですな。



 編中、印象的なシーンがおます。
 ある宿場の茶店で朔之助と郎党の新蔵(勝地涼)が休んでいると、眼前で仇討ちが始まります。討ち手は武家の若い兄妹と思われる男女2人、追われる者は尾羽打ち枯らした貧相な浪人者でおます。しかし、剣の腕前は浪人者のほうがはるかに上のようで、斬り込む兄妹は簡単に交わされ、地面に転んでしまいます。ところが、浪人者はなかなか腰の刀を抜こうとはしません。それもそのはず、浪人者の刀は竹光で、抜きたくても抜けまへん。斬り込まれて思わず刀を抜きかけた途端、浪人者は竹光がばれてしまい、泡を喰ったように逃げていき、息たえだえの兄妹は浪人者を追いかけていきます。

 茶店の露台から一部始終を見ていた朔之助は「侍とは難しいものだな」と新蔵につぶやくのでおますが、この時の朔之助は上意討ちと仇討ちの違いこそあれ、自分の使命を仇討ちの兄妹に重ね合わせていたに違いおません。
 しかし、本当は「侍とは哀しいものだな」との朔之助は思っていたのでは? と感じさせるつぶやきでおます。といっても家来に本心は聞かせられませんけどね。

 上意討ちは、藩の政治を痛烈に批判して脱藩した佐久間森衛(片岡愛之助)を討てというものでおます。しかも、先に上意討ちに出発した討ち手が病気になってしまったため、朔之助は代打に選ばれた者でおます。おまけに討つ相手は自分の妹、田鶴(菊池凛子)の夫でおます。
 朔之助と森衛との剣の腕前は互角、事によれば返り討ちにあう杞憂が朔之助にはおます。さらに田鶴も剣の使い手であり、もし森衛を討ち果たしても田鶴が歯向かってくれば、場合によっては実の妹を手にかけなければならなず、朔之助は苦悩に取り巻かれとります。

 ここんとこは、やはり、朔之助の真意は「難しい」より「哀しい」でおますな。「難しい」では、自分の使命に対して、あまりにも第三者的な感慨でおます。まぁ、朔之助というお侍さんは、政治を批判するほどの熱血漢の森衛と異なり、どこか醒めているような人物をうかがわせているんですけどね。

 映画は朔之助の上意討ちという話を軸に事の発端や朔之助、田鶴、新蔵の子ども時代のエピソードの回想シーン、旅に出た朔之助の留守中の妻(尾木真千子)や両親(藤竜也、松原智恵子)の様子を織り込みながら進んでゆきますが、何分にもゆったりとした語り口でおます。いさかか長いなぁ~と思いながら観ていたのでおますが、何と2時間もない映画でおました。

 ヒガシの立派さを目立たせるためか、討たれるほうの愛之助さん、ちょっと見せ場がおません。剣の腕前が互角という設定なら、ここは敢えて愛之助が討たれるという殺陣に演出があれば、さらに面白くなったんでおますが、そうなるとヒガシが本来、負けになってしまうか…。

 妹役の菊池凛子は色気おませんな。結婚前日、自分を慕っている勝蔵の前で腰巻一枚の姿になって後ろ姿を見せとりますが、いかにも貧相な体つきで…。それに藤竜也と松原智恵子との間にできた息子がヒガシでしょ、それなのに妹が菊池凛子とは…! ほかに女優はいなかったものか…。

 余談ながら…。
 朔之助の妻役の尾木真千子はしきりに「お父様」「お母様」と言っておりますが、これもねえ…。
 それに、この映画に限ったことではおませんが、袴を着用した人はなぜ、膝裏を手で折って坐るのでおますねんやろ? あれ、あきまへんで。
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