--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2011-08-02

松竹青春スターが並ぶ「金色夜叉」

 戦後もマキノ正博監督(1948年、東横)や島耕二監督(1954年、大映東京)によって映画化された明治の人気作家・尾崎紅葉の小説「金色夜叉」の、今回観たのは戦前(1937年)の松竹大船版で、監督は後年、自力で子どもが主人公の映画などを演出した清水宏でおます。

 「♪熱海の海岸 散歩する 貫一お宮の二人連れ…」の歌で、ある時代まではお馴染みだった若い男女の恋と義理のしがらみのお話で、この映画のタイトルバックにもよく似たメロディーの主題歌が流れておりますが、なにせ明治の世のことでおます。およそ1世紀余の以前となりますと、振り返ってみても、その時代に生きていない者にとっては実感はなく、闇の彼方のような感覚でおます。
 ただし、この映画でははっきりと明治時代とは特定されておらず、登場人物たちの着物姿、日本髪、学生たちの詰襟姿などを見ていると明治時代であったり、大正時代でもあるような、しかし、昭和初期かなとも受け取れる風俗でおます。

 相思相愛の貫一には夏川大二郎、姉の夏川静江(戦後は静枝)とともに子役時代から映画に出ていた人でおますな。おっちゃん世代になってからは脇役に回っていた人ですが、若いころは何本も主演映画を残している人でおます。
 お宮には川崎弘子。当時の松竹メロドラマのヒロインで、後年、NHK連続ラジオドラマ「笛吹童子」の主題歌を作曲した福田蘭堂と結婚し、生まれた子どもがクレージーキャッツの石橋エータローという具合でおます。



 実家の窮乏を救うため、お宮が銀行家の富山(近衛敏明)と結婚したことにより、愛する女に裏切られた貫一は「すべては金のためか。なら、金の鬼になってやろ!」とばかり、親しい人たちの前から姿を消し、高利貸しの鰐淵(上山草人)の手代となり、まるで親の仇を討つかのごとく冷酷無比な辣腕を発揮するようになります。
 というのは原作の上のことで、映画を観ていると夏川さん、とても守銭奴には見えまへん。キリッとした風貌はよろしおますが、どうも目元が気弱い雰囲気で、あるいはこの気弱さがお宮を思うあまり守銭奴になりきれない貫一の本性を表していた、のかどうか。

 原作は作者の死去により、自ら招いたこととはいえ、欺瞞に満ちた結婚生活に耐えきれなくなったお宮さんが自死の覚悟で姿を消し、それを知った貫一が「死ぬなよ、お宮(みい)さん!」と心で叫びながら行方を追うところで未完に終わってます。ついでながら、映画では貫一は「おみやさん」と言っとりますが、小説のほうでは「おみいさん」あるいは「みいさん」と呼んどります。この2人が幼馴染みであるがゆえの呼称でおますな。

 小説は未完に終わっていても、映画は未完ではどうにもならしません。で、決着を付けるために用意したのが、お宮の妊娠でおます。もちろん、貫一との間の子どもではおません。おなかの子どもは銀行が左巻きで青息吐息の旦那さんとの間にできた子どもでおます。
 妊娠という確固とした、目に見える現実を用意されて貫一の想いも、お宮の迷いもジ・エンドでおます。事実、貫一は富山に「お宮さんを幸せに」と言い残し、さみしく立ち去るところで映画は終わるのでおますが、あんだかなぁ~。想いも迷いも納得がいくように解消されないまま終わってしまうあたり、観ているほうはちょっと消化不良を起こしそうでおました。

 ところで、この映画、ほかにもたくさん登場人物が出てきますが、それらに扮している顔ぶれが豪華でおます。
 貫一の一番の親友に佐分利信、その妹に高峰三枝子、貫一にホの字になる女金貸しに三宅邦子、高利貸しの息子に佐野周二と、ここに川崎弘子、近衛敏明を並べれば当時の松竹の青春スターの主要メンバーがそろっております。それぞれのファンを1本の映画で引き込もうという計算でおますかな? 近衛敏明は戦後、脇役となりましたが、小津安二郎監督の「戸田家の兄妹」(1941年)では坪内美子の旦那を演じ、熱血漢の佐分利信に日和見をののしられてますな。

 かと思えば、守銭奴になった貫一に制裁を加える旧友たちの1人が誰かいな? と思えば笠智衆でおました。おっちゃん時代しか知りませんが、若い日の笠さん、結構イケメンでおます。
 ほかにも名脇役の吉川満子、岡村文子などがタイトルに出ているので出演しているはずですが、実際には出ていた様子がおません。古いフィルムなので切れているのか、それとも、この一篇が総集篇なのか、そこんとこ、よくわからしません。
 佐野周二の父親で高利貸しを演じた上山草人は、早川雪洲とともに無声映画期のアメリカ映画に出演歴のある俳優で、戦後、黒澤明監督の「七人の侍」(1954年)で侍探しに町へ出てきた農民たちが泊まる宿屋で琵琶を奏でている法師さんですな。
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。