2011-06-30

錦ちゃんだけじゃない東映時代劇

この首一万石2110630


 東京の名画座のチラシを送ってくれた友人が追加するように「こんなんもあるでぇ~」とメールで知らせてくれたのが、池袋の老舗名画座が来月末から予定している「東映60周年 東映時代劇の華」でおます。
 
 ホイ、やっぱ出ましたね^^

 東映が創立60周年を迎えた今年、その還暦の年に創立時から在籍した名誉会長の岡田茂が鬼籍組に入ったのは皮肉なことでおますが、故人の映画界での功罪はともかく、東映創立時から居残っていた人というと、この人以外にいないんじゃないですか? あとは亡くなったり、さまざまな理由で退社したりですね。

 さて、「東映60周年 東映時代劇の華」でおます。
 早速、そのサイトにお邪魔したところ、まだ予定段階で、チラシすらできてまへんが、この特集上映に選ばれた侍スターは大川橋蔵、東千代之介、大友柳太朗のお三方でおます。
 「ありゃ、中村錦之助(後の萬屋錦之介)がおらんやんけ」と言うなかれ。

 錦之助映画に関しては、わがブログつながりで「錦之助ざんまい」のオーナー・背寒さんが主宰する錦之助ファンクラブの上映会が確か、この池袋の名画座でも実施されているため、今回は「東映時代劇は錦之助ばっかやあらへんで」とばかり、わざと錦之助映画は除外したのでおますねんやろね。

 そこで選ばれた一番手が忘れられて久しいトミーこと、大川橋蔵。ほんまにね、背寒さんの上映会ばかりでなく、大阪でもたまに上映されるのが錦之助映画ばかりで、橋蔵が出てこないのは、なんでやねん状態でおます。あっちの世界に引っ越して28年。今や、息子さんがテレビドラマ(「渡る世間は鬼ばかり」)に出ている時代でおます。

 二番手が東千代之介。かつて、東映時代劇が全盛だったころ、錦・千代・橋と並び称されていたものでおますが、この人、錦之助や橋蔵とは異なり、表情が硬く、地味めの印象だったのは否めません。今回予定されている映画を見ると、「おいおい!」とズッコケそうになりました。だって、千代之介映画いうより、ひばり映画ではおませんかいな。

 締めが大友先輩ですね。千代之介、錦之助、橋蔵の戦後派スターと違い、戦前から主役を張っていた人で、戦後のチャンバラ時代劇禁止の時代をくぐり抜け、1950年代初期から60年代にかけて時代劇スターとして返り咲いた、不器用だけど愛すべきおっちゃんでおます。

 上映が予定されている作品を眺めてみると…。


 【大川橋蔵編】
○この首一万石(63年、監督・伊藤大輔)
 フィルムライブラリーの森一生特集で取り上げられている市川右太衛門主演の「槍おどり五十三次」のリメイク映画。脚本を担当した伊藤大輔が監督も兼ね、お得意の下郎社会の悲劇を謳い上げ、この当時の橋蔵がパッチリ目張りをしないで錦之助に対抗心を燃やしています。

○新吾十番勝負(58年、監督・松田定次)
 これぞ、橋蔵を橋蔵たらしめた橋蔵の貴種流離譚映画の記念碑第1作でおます。後年、テレビ時代劇で田村正和や松方弘樹、国広富之がチャレンジしてますが、「麿さま!」と呼ばれてピタッと来るのは橋蔵にトドメを刺すくらいでおますな。

○大江戸の侠児(59年、監督・加藤泰)
 山上伊太郎脚本の鼠小僧次郎吉誕生話を加藤泰が脚色、監督した作品で、加藤泰らしく錦之助主演の「風と女と旅鴉」同様、若手スターを主演に得てこそできた加藤さんの実験映画。後年、橋蔵は自分の舞台公演の演目として取り上げています。

○天草四郎時貞(63年、監督・大島渚)
 今から見れば、橋蔵と大島渚というとぶっ飛んでしまいそうな組み合わせでおます。白塗り以外にもできるんだと挑んだ橋蔵の実験映画で、できたのが大島渚の革命論争映画だった次第。当然、橋蔵ファンはソッポを向き、以後、橋蔵は元のきれい役者に…というエポックな作品でおます。

○恋山彦(59年、監督・マキノ雅弘)
 戦前、阪東妻三郎主演の映画のリメイク作品で、橋蔵は平家落人の末裔と江戸の長屋暮らしの浪人との二役で登場しますが、末裔の若大将が徳川の治世も進んだ中にあって世の中の変化を知らなかったという下りにはずっこけてしまいますぞ。

○血槍無双(59年、監督・佐々木康)
 橋蔵扮する赤穂の浪人と片岡千恵蔵の槍の名人との師弟話で、東映時代劇のエンターティナーだった佐々木康が珍しく静かに語っている忠臣蔵こぼれ話の佳品でおます。橋蔵を秘かに愛する千重蔵の妹役の花園ひろみが内田吐夢の「浪花の恋の物語」同様、いい味を見せてますで^^

○恋や恋なすな恋(63年、監督・内田吐夢)
 東映時代の内田吐夢の歌舞伎ネタ映画の一種でありつつ、橋蔵のチャンバラのない実験映画。陰陽師の安倍清明話と泉州のキツネ伝説(被差別問題が隠れてますな)を掛け合わせており、初共演の瑳峨三智子の恋人に死なれて野をさまよう橋蔵が養父で六代目菊五郎のお家芸・保名狂乱を踊るという趣向でおます。

 【東千代之介編】
○ひばり捕物帖 かんざし小判】(58年、監督・沢島忠)
 おいおい、千代之介主演やおまへんで。美空ひばり扮する大名の姫君が江戸の町の岡っ引きになって殺人事件を解明するという話で、千代之介は姫のお守り役のお侍さん。というより、当時、東映時代劇に新風を巻き起こした沢島忠のミュージカル仕立てのアイドル映画でおます。

○ひばり。チエミの弥次喜多道中(62年、監督・沢島忠)
 これも千代之介主演映画ではおません。芝居小屋の下足番をクビになったひばりと江利チエミが男姿の弥次喜多になって珍道中を繰り広げる沢島ミュージカル末期の傑作でおます。千代之介さん、ここでもお付き合い出演のお侍さんでおます。

○怪談番町皿屋敷(57年、監督・河野寿一)
 今回の特集で唯一、千代之介主演映画らしい1本で、千代之介の青山播磨、ひばりのお菊というコンビのちっとも怖くない怪談映画ですが、気になって調べたところ、タイトルではひばりが主役扱いでおました。どこまでも1本立ちできない千代之介さんではありますな。

 【大友柳太朗編】
○丹下左膳(58年、監督・松田定次)
 大友柳太朗主演の、いかにも当時の東映時代劇らしい明るく楽しい丹下左膳シリーズ全4本(加藤泰監督作品は除外)の第1作でおます。橋蔵、ひばり、千代之介のほか、月形龍之介やかつての左膳役者、大河内傳次郎まで顔を見せているというのは、ある意味、すごすぎ! 

○仇討祟禅寺馬場(57年、監督・マキノ雅弘)
 マキノ本人によるリメイク作品で、堅物、生真面目で、それゆえ狂気に至る侍には大友柳太朗はぴったりでおますが、武家物をあまり得意としないマキノらしく、後半、大阪の町人世界になると途端に画面が生き生きとしてくるという、とんでもない仇討ち映画でおます。

○十兵衛暗殺剣(64年、監督・倉田準二)
 近衛十四郎主演の「柳生武芸帳」シリーズの最終作で、よくできた一編と評判がよろしおます。大友柳太朗は最後に近衛さんの十兵衛と延々と一騎打ちする侍役でゲスト出演してはり、侍役者2人の闘いっぷりは見ものでおます。作品全体としては、このころの集団時代劇のノリでおます。

○江戸の悪太郎(59年、監督・マキノ雅弘)
 これまた、嵐寛寿郎、轟夕起子の顔合わせの戦前作品の、マキノ本人によるリメイク作品でおます。江戸の長屋を舞台に寺小屋の師匠でもある浪人が悪徳商人や妖しい新興宗教の教祖を退治する町人物で、柳太朗の浪人の元に飛び込んでくる「逃げ出した花嫁」は、お姫さま女優の大川恵子でおます。
 
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この特集のチラシを入手しました。

しかし愕然としたことが…。

『天草四郎時貞』『十七人の忍者』『捨てうり勘兵衛』『大江戸の侠児』『新吾十番勝負』の上映プリントがフィルムセンター提供とありました。

これはこれで綺麗なプリントでいいのですが、逆にいえば、いずれも東映は上映プリントを所有してないということにもなります。

ということはこの様にフィルムセンターのプリントを融通してもらえる小屋はいいかもしれませんが、新世界にあるような映画館では、今後、どんどん上映できる作品が少なくなってくるということがわかります。

なお特集は、以降も時代劇特集が続きます。

ポポポポ~ンの友人さんへ

 東映がよほどの再上映特集を自社の企画として上げない限り、自分とこでは新しくフィルムを焼くようなことはしませんからね。
 その昔、こちらのサンケイホールや東映の小屋で新吾十番勝負シリーズや大菩薩峠シリーズ(内田版)、笛吹童子、紅孔雀などを東映が焼いて特集上映がありましたが、総天然色映画なんて30年もたてば褪色してますもんね。
 新世界がフィルムセンターから借り出して上映するなんて、ありえないっすよ。

映画同好会(名前検討中

昔の映画作品 見てみたいナァ

村石太レディ&銀&ヤスさんへ

 ご訪問、ありがとうございます。
 昔の映画、なかなか観る機会ないですね。

 映画同好会の名前、決まりましたか?

 また、いつでもご訪問ください。
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