2011-03-25

「ヒアアフター」で紙1枚の向こう側

ヒアアフター110319


 まだそんな年齢ではないのに、早々とあっちの世界に引っ越してしまった親しい人たちと今もう一度、会えたら…、ボクなんか、きっとあの時以来、少しも変わってないなぁ、成長してないぞなんて憐れみの眼差しで見られてしまうクチでおますな。

 最近はすっかり監督づいてしまったクリント・イーストウッドの新作映画「ヒアアフター」は、ボクにそういうことを思わせてしまった作品でおます。
 映画としての出来不出来はともかく、個人的に思い入れを感じてしまうっていう映画がおますな。そうそう、そうなんやとうなづいてしまうこともおましゃろうし、俺もつらいのよと妙に同感してしまうこともおますな。
 ボクにとっては、何の予備知識もなく観たこの作品はそういう1本でおました。


 公開後、1カ月近く経ってから東北に大地震が起こり、言語を絶するような津波による被害が発生したため、この映画は、冒頭に観光客たちが津波に襲われるシーンが登場するためか、公開打ち切りになってしまいました。ボクが観た日は、ちょうど、その最後の日でおます。

 それぞれ別の場所で生活している男女2人と少年1人が登場し、並列して描かれていきます。
 そうなると、最後は予測できますよね。全く国も生活環境も、まして何らつなありのない人たちが何かに導かれるように、それは一見、本人たちは意識していない偶然のようではあるけれど、何かの共通項によって最後に1つの場所に相集い、交錯する。昔から、よく映画に用いられてきた手法でおます。

 この映画もやはりそうで、最後に3人は男を中心にロンドンで顔を合わせることになります。

 パリでテレビのニュースキャスターとして活躍する女(セシル・ドゥ・フランシス)はディレクターと東南アジアを旅行中、津波に遭遇し、溺れた彼女は臨死体験をしてしまいます。帰国後、体験談がロンドンの出版社の目に止まり、ロンドンに向かいます。

 サンフランシスコでかつて霊能者だった男(マット・デイモン)は、そんな生活に疲れて勤めていた職場を整理解雇されたのを機に、彼の霊能力でひと儲けを企む兄からも逃げだすため、尊敬するチャールズ・ディッケンズの遺跡を訪ねてロンドンに向かいます。

 ロンドンで薬物中毒の母親を持ち、仲のいい双子の兄を交通事故で亡くした少年(フランキー・マクレイン)は死んだ兄にもう一度会いたくて、ネットで見かけた男を偶然、ブックフェアの会場で見かけ、死者との対話のため、男を訪ねます。

 こんな3者が最後、ロンドンを舞台に男を中心にめぐり会い、それぞれが織りなすドラマに決着を見せるという映画でおますが、ちょっと笑ってしまったのはラスト、カフェテラスで女に会うことになった男が、遅れてやってきた女の姿を見て、霊能力者であるがゆえに、少し先の自分たちの展開―男と女が熱く抱擁し合い、キスを交わす―を見てしまうという下りでおます。
 にいちゃん、そんな都合ええこと見て、そうならなかったらどないするの? とチャチャを入れたくなるところですが、そこはアメリカ映画でおます。観客のカタルシスを裏切ることなく、大団円で終わるのでおますけどね。

 少年は男に会いに行き、霊視を頼みますが、そういう世界から逃げ出したくてロンドンに来ている男は当然、断ります。でも、少年はあきらめません。何日も男を見張り続け、とうとう男は根負けし、粘り勝ちした少年は男に兄と対話してもらうことになります。
 仲がよく、薬物中毒の母親を兄と助け合っていた少年にとって、兄は頼るべき存在であり、いつも優しい兄の庇護のもとにいたんですね。そんな兄が弟の代わりに母親の処方薬を取りに行った帰り、町の不良少年たちにからまれ、逃げ出した途端、交通事故に遭って死んでしまいます。

 兄とのあっけない別れ、母親の強制入院を経て少年は里親に預けられますが、すっかり心を閉ざしてしまいます。急激な環境の変化で、少年はどう生きていったらいいのかわからなくなってしまったんですね。
 こんな時、あの兄がそばにいてくれたら…と少年が望むようになるのも無理はおません。そうして、少年は霊能力のある男と会うことになるのでおます。

 霊能力によって本当に死者と対話ができるのかどうか、そういうことは問題やおません。この少年のエピソードの部分によって、ボクは映画の出来とは関係なく、ググッときたのでおます。

 あっちの世界に行ってしまった親しい人にもう一度会いたい、再び話をしてみたい。ボクにそういう存在ができたのは映画の少年のような年代ではなく、もっと大人になってからのことでおますが、あっちへ行ってしまった人とは紙一重のところで幽冥界を異にしていると思えて仕方おません。
 ただし、紙一重の紙が厚いためかどうか、いまだに会うことはおませんけどね。
 

 
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