2011-02-24

「若き日の次郎長 東海道のつむじ風」で終焉

東海道のつむじ風110210


 中村錦之助が清水の次郎長に扮したマキノ雅弘監督の「若き日の次郎長」シリーズは、この「東海道のつむじ風」でおしまいでおます。
 シリーズはわずか3作で、この後、錦之助はやはり同じマキノ雅弘監督、北大路欣也主演の「次郎長と小天狗 殴り込み甲州路」(1962年)に同じ次郎長役でゲスト出演しとります。これは1958年の大川橋蔵主演の「喧嘩笠」の再映画化で、おなじみマキノのリメイク作品でおます。

 当時、錦之助、橋蔵に次ぐ第三世代の時代劇スターとして東映は北大路欣也、松方弘樹の売り出しにかかっとりましたが、このころ、既に東映時代劇の右肩下がりは始まっており、いかに市川右太衛門&近衛十四郎ジュニアという二世スターをもってしても歯止めがかからなかったのでおますな。時代劇の後、およそ10年続くことになる任侠映画の始まりがすぐ翌年に迫っている、そんなころでおました。

 さて、前作「東海一の若親分」のラストで恋女房のお蝶さん(丘さとみ)と新婚旅行としゃれこんだ次郎長さん、最終作の「東海道のつむじ風」では、その旅の続きそのままに甲府の近くでゴン(千秋実)という馬喰(馬方)が曳く馬を雇い、女房を乗せたばっかりに甲府の町に渦巻く汚職と地元やくざと馬喰たちの争議に巻き込まれるというお話でおます。


 幕府天領の甲府では、行政担当の代官が甲府金山の人足を入牢者たちから供給し、しかも、人足が病気に倒れればそれっきりの使い捨てにしとります。そのバックアップをしているのが地元のやくざで、二足草鞋をはく猿屋の勘助でおます。
 代官に扮しているのが柳永二郎、猿屋の勘助には山形勲。どちらも東映時代劇の悪役ではお馴染みのおじさんでおます。

 しかも、このお代官、町の大商人(水野浩)の娘(北沢典子)を自分の妾にしようと狙っとります。色と欲の二股道を駆けるのは何も英雄ばかりではないということでおますな。甲府の代官といえば、幕府の中枢からはじき出された旗本でおます。しがない片田舎にとばされて無聊を慰めるため、そばに女を置くのはいいとしても無理難題をふっかけて自分のものにしようという魂胆は感心しまへん。
 勘助も馬喰たちに自分の支配下に入れとうるさく誘ってきております。しがない暮らしの馬喰たちもバカではおません。勘助に支配されると、わずかな給金しか貰えない上、バクチに誘われて少ない給金も巻き上げられることが分かっているので、抵抗しています。

 たまたま立ち寄った甲府の町のこうした騒ぎに黙っていられる次郎長ではおません。お蝶さんの心配をヨソに一肌ぬぐことになり、駆け付けた大政(水島道太郎)以下、次郎長一家の面々と悪人退治に立ち上がるわけでおますが、乗り込んだ次郎長一家がそろいの衣装に身を包んでおります。あれ、いつの間に用意したん? となるのでおますが、そこはご愛嬌でおます。
 騒動の解決はチャンチャンバラバラで悪人を一掃してめでたし、めでたしとなるのではなく、無血開城のような、血を流さずにケリを付けているあたり、いかにもマキノ雅弘でおます。マキノは、型のごとく最後に意味のないチャンバラを見せるのを嫌っていた人でおました。

 さて、馬喰の中心となるゴンという男、元は侍だったようで、出会った最初に次郎長はそれとなく見抜きますが、ゴンがなぜ侍をやめて馬喰をしているのかは分かりません。ただ、胸元に意味ありげなカンザシをぶら下げております。
 この作品では馬喰たちが「古いカンザシ あの子の形見よ~」と自分たちのテーマソングを歌っとります。多分、ゴンが携えているカンザシに由来しているのでしょうが、騒動の中でゴンはある女と再会します。壺振り女のお甲(星美智子)でおます。
 このお甲さん、映画の前半で大政にイカサマを見破られる場面がおます。
 壺を振る際、大きく襟を開けた胸元、蹴出しをちらつかせて男客を眩惑させ、まんまとイカサマ壺を振るのでおますが、その色っぽさに眩惑させられるのが石松(ジェリー藤尾)や綱五郎(渥美清)でおます。しかし、大政には通用しまへん。コンコンと説教されたお甲さん、その場を立ち去ります。

 これって、どこかにあったような一幕…ですね。
 マキノの「次郎長三国志」シリーズ(1954年)に登場する投げ節お仲そのまんまなんでおますな。キャラクターは随分違いますが、そこからちょっと拝借してきたんでしょうね。

 ということで、錦之助主演の「若き日の次郎長」シリーズの後、翌年(1963年)からは新たに鶴田浩二主演の「次郎長三国志」4部作が始まり、こうしてマキノ調の次郎長映画は続いていったのでおますな。

 
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残りの次郎長物もリクエスト

コメント久しぶりです。

やっぱりここまで書いたら、せめて東映時代のマキノ次郎長物はすべて触れた方がいいのでは? 
東映だけでも、以下の通りありますしね。

『清水港の名物男・遠州森の石松』
『喧嘩笠』
『清水港に来た男』
『次郎長と小天狗 殴り込み甲州路』
『次郎長三国志』東映版全四作

楽しみだなぁ。

柿を・・・の友人さんへ

いつもショボブログを覗いてくださり、ありがとうです。
ですよね、ここまで来たら勢いで^^
柿はおいしくいただきました。季節変わって次はどんなフルーツを?
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