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2006-04-08

25)「私家版加藤泰論」への道1 序章にかえて

加藤泰パンフ101011


 時代劇、任侠映画、現代劇を問わず、常に「怒りと優しさ」を描き続けた映画監督の加藤泰が、あちらの世界に引っ越して今年の6月で21年目を迎えます。
 ボクが初めて加藤泰の講演を聴いた時の加藤泰の第一声、
 「伊藤(大輔)先生はボクの恩師であります」
を真似るなら、
 「加藤先生はボクの先生であります」となります。
 
 今月下旬から来月中旬にかけて、東京のシネマヴェーラ渋谷という劇場で加藤泰映画が10数本、まとめて上映されるそうです。近年、加藤泰映画がある程度まとめて上映されるということは滅多にありません。
 何分にも彼岸の人となって20年、おまけに同じ鬼籍組であっても黒澤明や小津安二郎のように誰もが知っている映画監督というわけではありません。それでもファンは確実に存在しているという映画監督ですが、今では知る人ぞ知るという存在であることは否めません。それでも「知らない人は覚えてね」とテレビCMのように言いたくなる映画監督です。
 久しぶりに、その加藤泰映画がまとめて上映されると知り、心は躍ったのですが、いかんせん、上映場所は東京です。いかに大阪ー東京間の新幹線が三時間を切った時代とはいえ、おいそれとは行くことはできません。いっそ上映期間だけでも東京へ移住してやろうかと思うくらいですが、さすがにそれは実現不可能な「そんなアホな話」です。上映作品のすべてを観ることはできないながら、それでも、
 「どうしようぞいなぁ・・・」
と歌舞伎もどきに考え込んでいます。幸い、ある友人が「車で行こか?」と親切な手を差し延べてくれていますが、さて、どうなることやら、まだまったく予定を立てていません。
 かつて、加藤泰が彼岸に渡ったのち、東京・池袋の文芸坐でまとめて加藤泰映画が上映されたことがあります。さらに、その後も回顧上映という形で、やはり、東京・渋谷のユーロスペース1で21本の映画と加藤泰唯一のテレビ映画などが上映されました。この企画はのちに形を変えて大阪、京都でも実現しました。
 ユーロスペース1で加藤泰映画が上映された時は、わずか一回だけでしたが、さすがに矢も盾もたまらぬという気持ちでダーッと新幹線で東京へ走ったことがあります。行ったその日の上映作品も上映時間も分からず、ともかく「行けぇー」という意気込みだけで渋谷に辿り着き、たった一本、映画を観て帰ってきました。
 そのたった一本観ることができた作品が、ボクの最も好きな「車夫遊侠伝 喧嘩辰」だったことは運のいいことでした。余談ながら、この作品は加藤泰映画の最高傑作です。これを観れば、加藤泰がどういう人だったか、そして、どんな女性が好きだったかまで分かる不思議な世界が展開しています。
 
 前口上がグーンと長くなりました。
 これまで、このブログではほとんど加藤泰映画については触れてきませんでしたが、近く加藤泰映画のDVDボックスも発売されることでもあり、いよいよ出番を迎えました(ただし、DVDの宣伝ではありません)。
 また一つ、カテゴリーを増やし、「私家版加藤泰論への道」とは、これはまた大きく掲げた標題ですが、笑わば笑え、です^^
 正直なところ、いつかは自分用に「加藤泰映画論」をまとめておこうと考えています。その熟成を待っている段階ですが、このブログの新しいカテゴリーは決して加藤泰映画論ではありません。その論へ至る道のりの中で加藤泰とその映画について、チンタラと記録を残しておこうというコーナーです。
 その序章に替えて、一回目の今回は、かつて、ボクがあるパンフレットに載せた小文を掲載しておきます。

         「また、わい賭けるで!」
  
 『江戸川乱歩の陰獣』のあとだったか、加藤泰は森光子主演の『おもしろうて やがて哀しき』というテレビドラマの脚本を書いたことがある。それは溝口健二の映画『愛怨峡』を前後編に分けたドラマだったが、男で苦労するひとりの女の遍歴が描かれたあと、その女主人公が電話を通して遠くに住む小学一年生の息子にこんなことを呼びかける。
 「いいかい、女の子をいじめるんじゃないよっ。もしいじめて泣かせたら、かァちゃん、承知しないからね!」
 このセリフを聞いた途端、ボクは思わずテレビの前で坐り直してしまった。それは、そのテレビドラマの中では旅芸人として生きる母親が小学校へ入学した息子に贈るはなむけの言葉で、いかにも男で苦労し続けたおんなの実感がこもっているセリフだった。しかし、ボクが坐り直したのは、そのセリフが加藤泰らしさに満ち満ちていたひと言だったからだ。
 加藤泰が映画の先達の作品をベースに女の半生を描いた、いわばオリジナルでない、他人の作品の中へボーンと最後に池に小石を投げるように”自分らしさ”を投げこんで、あざやかに波紋を際立たせたように感じた。「やってくれるではないか」と、加藤泰ファンとしては小おどりするように嬉しくなったことを憶えている。
 四年前に公開された『炎のごとく』は、加藤泰の最後の映画となった作品だが、そこ描かれた主人公・会津の小鉄は女の子を泣かせている男である。自分からすすんで女を泣かせているわけではなく、なんとか幸せにしてやろう、救ってやろうと全力を尽すが、結果的に小鉄が接した四人の女は小鉄が願った通りにはならない。
 一方で、その小鉄は小品ながらも、これまた加藤泰がキラリと光る映画『車夫遊侠伝・喧嘩辰』の主人公・俥屋辰五郎の再来を思わせるキャラクターを持っている。かつて、辰五郎が「どこでもいい、俺が俺らしく真っすぐに生きていける所を捜してやってきたんだ」と言ったように、小鉄もそう思って生きている。しかし、小鉄の場合、最後で引っかかった。
 映画のラスト、最愛の女房おりんのまぼろしを見た小鉄は、観客である我々に向かって、「おりん、また、わい賭けるで!」と叫ぶが、叫ばれた観客、少なくともボクにとって、いったい何に賭けるのか、よくわからない。あるいは、この模糊とした感じは、それまでカッと目を見開いて前進を続けてきた加藤泰の、その当時の心の中を正直に吐露したものであったかも知れない。
 加藤泰には何度か会い、話を聞くことができたが、小鉄はいったい何に賭けるのか、いつか聞いてみようと思っているうちに、加藤泰はあちら側の住民になってしまった。全くあまりにも早い、あっけない転居である。もっとも聞くことができたとしても、これまでの例にもれず、加藤泰は何も答えないにちがいない。ただ「それは、それぞれ自分で考えてもらいたいことです」としか言わないかもしれない。
                 {1985年「加藤泰傑作選」から}
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加藤特集のスケジュール

 勝手にいろいろと書いてしまいました。
 それから、例のスケジュールが出ていました。やはり、『ざ・鬼太鼓座』の上映はないようです。

以下、長いですがスケジュールです。

関東【シネマヴェーラ渋谷】
■トークショー
4月22日(土)(ホスト)蓮實重彦・山根貞男(ゲスト)倍賞美津子 午後5:00から
4月29日(土)(ホスト)蓮實重彦・山根貞男(ゲスト)鈴木則文 午後6:20から
■スケジュール
4 22(sat) 三代目襲名 11:00 15:20 20:15 炎のごとく 12:40 17:35
4 23(sun) 幕末残酷物語 11:00 14:35 18:15 真田風雲録 12:50 16:30 20:10
4 24(mon) 炎のごとく 11:00 15:20 19:40 三代目襲名 13:40 18:00
4 25(tue) 真田風雲録 11:00 14:40 18:20 幕末残酷物語 12:45 16:25 20:05
4 26(wed) 三代目襲名 11:00 14:20 17:40 21:00 真田風雲録 12:40 16:00 19:20
4 27(thu) 炎のごとく 11:00 15:30 20:00 幕末残酷物語 13:40 18:10
4 28(fri) 喧嘩辰 11:00 14:40 18:20 怪談 お岩の亡霊 12:50 16:30 20:10
4 29(sat) 怪談 お岩の亡霊 11:00 14:40 18:55 喧嘩辰 12:50 16:30 20:40
4 30(sun) 怪談 お岩の亡霊 11:00 14:30 18:00 みな殺しの霊歌 12:45 16:15 19:45
5 1(mon) みな殺しの霊歌 11:00 14:30 18:00 喧嘩辰 12:40 16:10 19:40
5 2(tue) 陰獣 11:00 14:50 18:40 みな殺しの霊歌 13:10 17:00 20:50
5 3(wed) 遊侠一匹 11:00 14:55 18:50 陰獣 12:45 16:40 20:35
5 4(thu) 陰獣 11:00 14:55 18:50 遊侠一匹 13:10 17:05 21:00
5 5(fri) 剣難女難 第一部 11:00 13:45 16:30 19:15 剣難女難 第二部 12:20 15:05 17:50 20:35
5 6(sat) 風の武士 11:00 14:20 17:40 21:00 瞼の母 12:45 16:05 19:25
5 7(sun) 瞼の母 11:00 14:20 17:40 21:00 遊侠一匹 12:35 15:55 19:15
5 8(mon) 忍術児雷也 11:00 14:20 17:40 21:00 風の武士 12:35 15:55 19:15
5 9(tue) 逆襲大蛇丸 11:00 14:10 17:00 20:00 瞼の母 12:25 15:25 18:25
5 10(wed) 剣難女難 第一部 11:00 13:55 16:50 19:45 忍術児雷也 12:20 15:15 18:10 21:05
5 11(thu) 逆襲大蛇丸 11:00 13:50 16:40 19:30 剣難女難 第二部 12:25 15:15 18:05 20:55
5 12(fri) 瞼の母 11:00 14:20 17:40 21:00 風の武士 12:35 15:55 19:15
料金 一般:1400円 シニア・会員:1000円 大学高校生:800円 中学生以下:500円
※2本立て・入替無し・最終回割引有
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