2011-01-26

「アンストッパブル」は劇場型突発事故

アンストッパブル110126


 軌道を暴走してしまった貨物列車を果たして鉄道マンたちは停車させることができるか!? の単純なストーリーを1時間39分のコンパクトな作品にまとめ上げたこの作品などを観ると、この種のスリルに満ちたアメリカ映画というのは多分に「見世物」やなぁ~と思ってしまいます。

 アメリカ映画が持っている「見世物」としての側面ですな。
 「されど映画」やけど「たかが映画」やで~とでも語っているかのようでおます。

 トニー・スコット監督のアメリカ映画「アンストッパブル」は、久しぶりにハラハラ、ドキドキを堪能させてくれる小品で、繁華街一等地の大きなシネコンで公開されてはいますが、ひと昔前なら繁華街からちょっと外れたような場所にある小さな映画館で封切られていたかもしれないような、今はなくなってしまったB級エッセンスも持ち合わせた作品でおました。

 

 アメリカで実際に起こった機関車の暴走事故をベースにした映画だそうでおます。
 担当の機関士の怠慢で大量の燃料や化学薬品を積載した、全長800メートルにも及ぶ貨物列車が無人のまま暴走してしまいます。行く手には住宅密集地があり、さらには化学工場沿いに急カーブを描いている軌道敷の難所が待ち構えています。さらに悪いことには、同じ軌道の反対側から別の貨物列車を牽引するための運転列車が走ってきており、そのまま行くと正面衝突は間違いなし。鉄道会社が打ち出した回避策はことごとく失敗し、そこで運転列車に乗っていたベテラン機関士(デンゼル・ワシントン)と問題ありげな若い車掌(クリス・パイン)が暴走列車に立ち向かうことに…。
 さぁ、どうするか?

 これだけの映画でおます。
 スリルに満ちたハラハラ、ドキドキの1時間39分。手ごろな長さでおます。2時間以上もこのハラハラ、ドキドキに付き合わされていたら、観客の心拍数が上昇して心臓が持ちまへん。

 暴走した列車を人間の力で停車させられるかという単純なストーリーで、一難去って、また一難式の次々に繰り出されるあの手この手のアイデアで観せていく、これ、ホンマ見世物でおます。
 例によって主役となる機関士のおっちゃん、車掌のにいちゃんそれぞれに家庭の事情を背負わせており、事件の解決した後、その家庭の事情も氷解して元のサヤに収まるというのも、アメリカ映画いつもの作劇でおます。アメリカ映画では、このカタルシスがなかったら観客はおさまらんのでしょうね。苦い終わりなんて許されないことですんやろね。

 そして映画を観ていて、ふと感じたのは、あってはならない貨物列車の暴走って劇場型の事故なんかいな? ということでおます。日本のマスコミでは小泉政権以来、政争、政局が表沙汰になるたびに「劇場型」という形容をよくしていますが、その劇場型でおます。
 貨物列車暴走が発表されるや、沿線の住民たちに避難勧告が出される一方、物見高い野次馬連中が集まってきています。
 もっと面白いのはテレビ局の中継車が配備され、空には貨物列車に沿うように情報伝達のヘリコプターが飛びまわり、そのおかげで鉄道会社の集中指令室にある大型テレビ画面に逐一、列車の動きと、列車を停車させようとしている機関士や車掌の活躍ぶりが中継され、集まった人たちが画面を食い入るように見つめ、やがて快哉の叫びを上げることでおます。
 大型画面に集まった鉄道関係の皆さん、いつの間にか、われわれと同じ観客になってしまってるんですな。お前ら、事故の関係者やろ! と思わず突っ込みを入れたくなるようなおかしさで、なんか変な思いが残った映画だった、とさ^^
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私も観た

私も観ました。

でも、この映画って、単なる活劇というだけではない、ちょっとした奥の深さがありますよね。

ご指摘の通り、劇中で列車の状況を伝えるのは、常にテレビ。それも小うるさいぐらいにテレビ局のヘリが飛んでいました。

活劇映画というよりも、ある種のメディア論かと思いました。

少し前の新聞の映画評では、その点が全く欠落していたのが残念でした。

http://doraku.asahi.com/entertainment/movie/review/110112_1.html
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