2011-01-08

「バーレスク」の恋のてん末

バーレスク110107


 この作品が映画初出演という歌手、クリスティーナ・アギレラに大御所、シェールが付き合っている現在公開中のアメリカ映画「バーレスク」(脚本・監督=スティーヴン・アンテイン)は、アメリカ・アイオワの田舎から歌手を目指してロサンゼルスに出てきた小娘が、あれよあれよという間にショークラブのスターにのし上がっていくサクセスストーリーに加え、あっちもハッピーに、こっちもハッピーに収まるミュージカル風作品でおます。

 「バーレスク」とは、この映画の舞台となるクラブで演じられているような、きわどいお色気ありの歌と踊りのショーのことだそうでおますが、ポッと出の田舎娘が持ち前のガッツで瞬く間にクラブのトップガールになっていくメーンのストーリー、クラブが多額の負債を抱えており、借金を返済しないと明日にも不動産屋にクラブを乗っ取られてしまう危機を田舎娘の機転で回避するというサブストーリーは、のほほんと陽気でおます。
 現実にはなかなか起こり得ないことばかりながら、現実にはあり得ないことだからこそ、映画の中だけでも、その嘘を楽しもうじゃないかと言っているみたいでおます。このあっけらかんとした陽気さ、のんきさこそが理屈抜きに楽しんで頂戴と言っているアメリカ映画の一面でおますな。
 このところ、私小説風な作品が多い日本映画も、チマチマ悩んでないで、本当らしい嘘を楽しませるエンタティメント性がほしいものでおます。

 最初、田舎町のろくに給料も支払ってくれないカフェレストランのウエイトレスとして登場するクリスティーナは、都会の水に洗われてクラブの舞台ではモンロー風にもマドンナ風にも演じて頑張っていますが、一方のシェールねえさんも負けておりまへん。
 おねえさんは映画の冒頭、たまたまクリスティーナが覗いたクラブの舞台ではセクシーポーズで歌い、踊り、最後の方ではアカペラで「私は負けない~」などと歌い、歌唱の実力を発揮してはります。まさにアメリカのショービジネス界のエンタティナー、シェールのためだけに設けられたシーンでおます。

 お気楽なサクセスストーリー映画ではおますが、ボクが面白かったのは田舎娘アリがクラブで働くようになって知り合うバーテンのジャック(キャム・ギガンテット)との恋のてん末で、とりわけ、アリを好きになっていくジャックの心の揺れでおました。


 アリとジャックはともに田舎出で都会に憧れてロスに出てきた、いわば同じ職場の同僚でおます。アリは最初、このジャックと親しく話をしたことでジャックのかげでクラブのウエイトレスとして働くようになり、やがてアリはジャックの部屋に同居することになります。
 同棲やおません。安ホテルを追われて行き場をなくしたアリを、ジャックは純粋な親切心から自分の部屋に同居させます。この親切心がのちのちアダになるんですけどね。
 ジャックには、1日1回は電話するナタリー(ディアナ・マグロン)という婚約者がおります。ナタリーはニューヨークで女優をしており、2人は西海岸と東海岸とに分かれて暮らしております。だから、アリとジャックは一つ屋根の下に暮らすようになっても、もちろん、あやしい関係にはなりません。当初は、どちらも「お友達」でしかすぎないのでおますが、遠くの婚約者より近くの友達とでもいうのでおますか、ジャックの気持ちが微妙に変化していくところ、やむなきところでおますな。

 やがて、アリはウエイトレスからクラブの踊り子になり、日ごと、洗練されていく姿を見て、ジャックの心のモヤモヤは高まっていくばかりでおます。おまけに、クラブを買い取って跡地にショッピングモール建設をもくろむ不動産屋のマーカス(エリック・デイン)が売れっ子になっていくアリに食指を示しているとあってはなおさらでおます。アリの帰りが遅くなることが頻繁になって「あんまりマーカスに近づくなよ」と意見したりしますが、このころになると、さすがのアリもジャックが自分をどう思っているのか薄々感じております。

 次第にアリを好きになっていく、この時のジャックの行動が切ないですな。
 2人はベッドルームとリビングに分かれて寝起きしていますが、ある夜、酔っ払って帰ってきたジャックがアリに見せるパジャマ姿から全裸になってクッキーの箱一つで下半身を隠すパフォーマンス、これはもう求愛以外の何物でもおません。
 アリの同僚で、妊娠した踊り子の結婚式の日、ジャックは電話でナタリーと喧嘩して2人は別れます。そしてアリとジャックは結ばれます。友情としての同居生活から甘い同棲生活へ移るのでおますが、そううまくはいきません。ある朝、2人がまだひとつベッドで寝ていた時、突然、ナタリーが訪ねてきます。ジャックは別れたつもりでいたのでおますが、ナタリーは「何言ってるの! 電話で簡単に話がつくわけないじゃないの!」と婚約者の浮気の現場を押さえてカンカン。アリが慌てて部屋を飛び出した後、ジャックとナタリーは本当に別れてしまいます。

 その後の展開は、観客の期待通りでおます。
 いい加減といえばいい加減、お気楽といえばお気楽で、女性からすれば、ジャックという男は婚約者がいるのにアリを好きになり、婚約者と別れて「アリちゃん、お待たせ。もう邪魔者はいなくなったから」で結ばれると思ってんの? と総スカンをくう男かもしれません。
 しかし、恋人や婚約者がいるのに、男は別の女性に心を奪われてしまうこともあるのも現実で、アリと知り合って「なんで、この女ともっと早く出会わなかったのか」と思ったかもしれない、欲を言えば「この女こそ自分が出会うべき相手だった」と覚悟を決めたかもしれないジャックの心の揺れはボクにとって否定できなかったのでおます。

 ところで、アリはジャックの部屋を飛び出して行き場をなくし、ショーンという男(スタンリー・トゥッチ)の家を訪ねます。ショーンはクラブのショーで衣装係をしている裏方で、テスの相方として信頼が厚いおっちゃんです。
 家を訪ねて出てきたのはアリの知らない、今起きたばかりという格好の青年です。「ショーンは?」「ショーン? ジョンじゃないのかい」ってなやり取りがあり、アリが家に入るとショーンはまだ裸のままベッドにいます。そこでもショーンと青年との、お互いの名前の聞き違えのやり取りなんかがあって、それで観客にはショーンがゲイであることが分かります。お互いの名前をよく知らなかったということは前の夜、ショーンがどこからか青年をお持ち帰りしていたんですね。それと知ったアリは「邪魔しては悪いから」と、すぐに立ち去ります。
 アリが去った後、ジャックがアリを探しに訪れますが、ちょうど青年がショーンの家を出るところで、玄関に出てきたショーンが帰りかける青年の後ろ姿に「おい、ランチ食っていかないか」と声をかけます。応じた青年にショーンが「自分で作れよ」としっかり釘を差すのが笑わせてくれます。

 このシーン、本筋には関係ないサイドストーリーでおます。しかし、ショーンのシーンは微笑ましおます。つまり、ゲイカプルであっても男女のカップルのように、さらりと描いているからです。セクシャル・マイノリティーに対してもおおらかというのか、優しいというのか、ここはロスなんだぞと言っているようでもあります。というのも、かつてロスにおよそ20年以上住んでいた友人が、ロスではゲイカップルは日常の風景として見られると言っていたことを思い出したからでおます。

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アギレラ

アギレラはストーンズのライブにゲスト出演して、ミック•ジャガーとタメを張っていたのを見て、アメリカのエンターテインメント業界の底の深さを思い知りました。

日本でいうと、江利チエミとかと同じタイプかと思う。いわゆるJPOPの熱唱系とは全然違うんですよね。

柿の友人さんへ

クリスティーナ・アギレラは、この映画が日本で封切られた昨年12月18日、30歳になったそうで、一児のママンだそうですね。J-POPのねえちゃんたち、あるいはにいちゃんたち、エンタティメントってことで勉強してほしいですよね。
それに、ほかの俳優さんたち、軽い役でも真剣なんですね。それほど、あっちは弱肉強食で、日本は事務所本位で動かされて俺、私、これ絶対やるみたいな部分見えなくて緩いでんな。だから、ホントみたいな嘘の映画ができなくなってるんですよ。
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