2010-09-23

耕作さんの夢の続きは「夜汽車」

夜汽車100923


 映画「櫂」に勢いづいたのか、次に観たのが山下耕作監督の「夜汽車」(1987年、東映京都)でおます。
 これも23年前の封切当時に観ていますが、「櫂」同様、宮尾ワールドの1篇で、宮尾登美子の小説「夜汽車」と「岩伍覚え書」から松田寛夫と長田紀生が脚色しています。撮影監督は今をときめく木村大作でおます。
 それまでの宮尾ワールド映画を担当してきた監督・五社英雄、脚本・高田宏治のコンビから一転、山下耕作、松田寛夫、長田紀生とくれば、いかに十朱幸代が主人公の宮尾文学映画といえど、これはもう任侠映画ワールドでおますがな。
 事実、萩原健一が「高倉健かい?」ってな芝居を見せとりますし、ヒロインが指を詰めたり、ラストの斬り込みに至っては斬られる親分が遠藤太津朗(旧・辰雄)だったりときては、任侠映画の旗手として名を馳せた耕作さんの遂に抜けきれなかった夢の再現といってもいいのでは?
 ただし、イメージの象徴となる花は登場してまへんけどね。
 
 ついでに記せば、山下耕作と十朱幸代の出会いは、中村錦之助主演の「関の彌太ッぺ」(1963年)、大川橋蔵主演の「大喧嘩(おおでいり)」(1966年)以来、3度目でおました。
 


 「夜汽車」は、1人の男(萩原健一)をめぐる姉(十朱幸代)と妹(秋吉久美子)の確執のドラマでおます。確執といっても、姉妹が取っ組み合いの喧嘩をするわけやおません。正確にいえば、男をめぐって姉の妹に対する複雑な心境のドラマですな。

 ほかの宮尾ワールドと同じく、この作品も高知を主な舞台にし、「岩伍覚え書」をベースにはしていますが、今回は芸妓娼妓紹介業者の富田岩伍は登場しまへん。かわって、同書のエピソードの1つであるやくざの世界の抗争が描かれ、一方のやくざ組織の跡取り息子、征彦がショーケンでおます(お父さんが丹波哲郎)。敵対する親分が遠藤太津朗というわけで、丹波さんが敵対組織に殺されるに及んでショーケンは当初は嫌っていた家業を継ぐ羽目に…という背景がおます。

 これは男の世界のことですが、女の世界に目を転ずれば十朱幸代扮するヒロインの露子は13歳のころから色街に生きてきた女で、十朱さん、年増芸者として登場します。

 露子には13歳違いの妹、里子(秋吉久美子)がいます。
 母親は里子を生むと同時に死亡し、飲んだくれの漁師だった父親(浜田晃)もバクチのいざこざで死んでしまい、芸者の世界に身売りした13歳の露子に妹を育てられるはずはなく、里親(谷村昌彦、丸平峰子)に妹を預け、以来、露子は前借金の返済、妹の養育費のため、しゃかりきに頑張ります。
 そのためには高知1カ所では収まらず、露子は日本各地の色街を転々とするんですね。いわば流れ女の海千山千の芸者ですが、修羅場をくぐり抜けてきた単なるあばずれ女では、それでは十朱幸代主演の文芸映画にはならしません。

 高知のお座敷で、あるいは地方の温泉地の宴会で露子が踊りを披露するシーンがたびたび出てきますが、監督が山下耕作ということもあり、見ていてふっとかつて耕作さんが監督した藤純子の芸者映画を彷彿します。むろん、十朱幸代と藤純子とではキャラクターが違うんでおますけどね。

 各地を流れ歩いた露子が13年ぶりに高知に戻り、女学生に成長した妹と再会するところから本格的にドラマが始まります。再会づいでに高知へ向かう汽車の中で知り合った征彦とも芸者業を再開したお座敷で再会し、魅かれ合う仲になります。
 ところが、妹の里子が胸の病に倒れ、その療養費を稼ぐため、露子はまた出稼ぎに旅立ってしまいます。その露子の留守中、征彦クン、里子に急接近してしまい、姉のおかげで病癒えた里子と夫婦になってしまいます。そこへ3年ぶりに高知へ戻ってきたお姉ちゃん、末を誓ったつもりでいた男と誰よりも大事な妹が夫婦になっていたとは、そりゃ驚天動地の出来事でおますわな。 

 その後、露子は銀行の頭取(津川雅彦)をパトロンに持ってカフエ経営に乗り出しますが、どうしても征彦クンが忘れられず、猛アタックします。当初は避けていた征彦クンも姉と妹の間を行ったり来たりするようになってしまいます。これが頭取に知れて、頭取を逃してしまいます。それほどまでして、露子は男のことが忘れられないのですな。
 家業を継いだ征彦は高知で空中飛行ショーを開催しますが、敵対組織に売り物の飛行機を爆破され、千円もの借金を背負ってしまいます。そこで「うちにはこれしか助けてあげられへん」と妹の里子はさっさと自分を身売りしてしまいます。それまで受け身だった妹が、初めて積極的に自分から動いたのが身売りとは、悲しおますがな。

 それを知ったお姉ちゃん、素人の妹を自分のように汚してなるものかと妹を取り返しに敵対する親分の家に乗り込み、指を詰めることになるのでおますが、十朱さんの指詰めは、この後、「極道のおんなたちⅡ」(1987年、監督・土橋亨)でもおました。
 無理難題を吹っ掛ける親分や愛人たち(新藤恵美、白都真理)を前に露子が切った啖呵がフルってます。

 「血ィ流すのがこおうて、おなごは務まらんちゃ!」

 「夜汽車」は、そんないごっそうな女のお話でおます。
 この後、無事に妹を連れ出し、ともに1台の人力車に乗っていくシーンがおます。これがちょっと長すぎるんちゃう? となるくらい延々と続き、今はの際の妹が姉にこれまでの思いを語るシーンでおますが、あまりの長ったらしさに当時、一緒に観ていた友達が失笑しておりました^^ 
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

私は、このあたりの文芸路線は覚えが悪く、ほとんど観ていません。けっこう、裸が出ているというのに…。実のところ『夜汽車』を上映している映画館には入ってことがあるのですが、併映の南野陽子の『スケバン刑事』目当てでして、『夜汽車』はラストシーンをほんの少し観ただけなのです。まあ、そのころは山下耕作がどういう監督が知らなかったということもあるのですが、若かったんですよね。ホンマに。
プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事