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2010-09-08

「乱れる」はフランス映画の味わい

乱れる


 成瀬巳喜男監督の作品は、立て続けに観ると少ししんどいけど、時々、無性に観たくなる時があるんですね。
 今回、わがライブラリーから取り出してテレビのカセットデッキにセットしたのが1964(昭和39)年初頭に封切られた「乱れる」でおます。

 溝口健二に田中絹代、小津安二郎に原節子がいたごとく、成瀬映画のヒロインは高峰秀子でおます。
 その高峰秀子と義弟役の加山雄三(ええ演技してた)が禁断の愛に苦しむ映画で、成瀬作品の中では比較的評価が高くない作品のようですが、どうしてどうして、ボクはぐんぐん引き込まれていき、最後はフランス映画のような香りを残して終わる映画でおました。脚本はデコちゃんの旦那、松山善三でおます。

 「乱れる」は映画の始まりから3分の2くらいは、酒販店を営んでいる家庭内の話でおます。
 「浮雲」(55年)のように男と女の愛の行く末を描き続けた成瀬さん、「稲妻」(52年)や「あにいもうと」(53年)、あるいは「鰯雲」(58年)、「妻として女として」(61年)、「女の座}(62年)などに見られるように女性を主人公にして家族とのかかわり、家庭内の自分のあり方を描いた作家でもおます。

 時代は戦後19年たったころ。1964年といえば東京オリンピックがあった年でおますが、この映画は同年初頭に封切られているのでオリンピック開催には至っておらず(開催は秋でおました)、東京・代々木では国立競技場の建設が進められていたのでしょうが、映画の舞台となる静岡県清水市にはその喧騒さは伝わっておらず、従って映画ではオリンピックのオの字も出てきません。

 代わって、この時代の特徴として描かれているのが地方都市へのスーパーマーケットの進出でおます。
 全国的に網の目のように張りめぐらされていくスーパーマーケット、略してスーパーの躍進。これ、大変なことなんですよね。
 それまでの流通業界の構図を塗り替え、現在、問題となっているシャッター商店街が誕生するようになる起因が、このころ、芽を吹き始めていたってことですね。消費者にとってはワンストップで日常のあらゆるものを買いそろえることができるコンビニエンスな存在であっても、従来の小売店にとっては死活問題となる変革です。

 ヒロインの高峰秀子が営む酒販店も、その変革の波にもまれています。
 戦争未亡人のヒロインは戦後、舅とともに店を大きくし、舅の死後は1人で店を切り盛りしていますが、その苦労を知る姑(三益愛子)や結婚している小姑たち(草笛光子、白川由美=なぜか、どちらも再婚という設定)、大学を出て会社勤めを辞めてブラブラしている義弟が入り乱れる中、酒販店も会社組織のスーパーにして他のスーパーに対抗しようとなります。
 会社組織といっても同族会社だろうから、そこで邪魔になるのが嫁の高峰さんです。ヒロインは夫を戦争で亡くし、以後、家族の中心となって頑張ってきたのですが、いくら身を粉にして店を盛りたててきても、やはり、家族の中で嫁は他人だったんですね。この嫁の悲哀を成瀬巳喜男は、ほかの映画で何度も描いています。

 ヒロインを秘かに愛する義弟は「姉さんを役員にしなければスーパーはやらない」と踏ん張りますが、小姑たちはあっけらかんとしています。そこのところの微妙な温度差を感じたヒロインは身を引く決心をし、故郷の山形県の庄内に帰っていきます。義弟の自分への思いを知ったことも、婚家を離れる理由の1つでおます。義弟が、その跡を追いかけます。
 ここまでが映画の3分の2の部分です。
 
 それからの最後の追い込みは、ほとんど列車の中で延々と高峰秀子と加山雄三のやり取りだけが描かれていきます。ここから途端に、フランス映画のような香りがしてくるのでおます。さしずめ、マルセル・カルネですやろか。

 清水から在来線で東京へ向かい(このころ、まだ東海道新幹線は開通してません)、東京・上野から山形行きの列車になります。清水で東京行きの列車に乗り込んだヒロインの前に義弟が現れ、驚くヒロインに「送って行くよ」と義弟が言います。
 当初は座席が離れ離れだったのが次第に近くなり、遂には向かい合わせに座るようになる変化は時間の流れを示していますが、にくい演出でおます。列車の中で顔を合わせた当初から向かい合わせに座ったのでは、この映画の場合、身もふたもおません。

 この後半3分の1のシーンを観ていて、ふっとボクは「浮雲」でヒロインたちが屋久島へ向かうシーンを思い出しました。現実から逃げるように屋久島へ向かうヒロインたちの姿は逃避行そのもののようでおました。「乱れる」のこの列車の中だけのシーンも「浮雲」を彷彿させるような、まるで2人だけの世界へ向かっていく逃避行のようでおます。

 列車の中で初めて義弟と2人だけの時間を持ったヒロインは途中下車し、義弟と温泉地の旅館に投宿します。しかし、義弟の思いを受け入れるために列車を降り、温泉宿に落ち着いたはずなのに、やはり、ヒロインは一線を越えることができません。
 ここからの急展開は見事でおます。酔って地元の飲み屋(おばちゃん役が浦辺粂子さん)から旅館にいるヒロインに電話する義弟の苦い思い、まんじりともせず朝を迎えたヒロインの思いが相まって引き出された結末。
 ラストショットは急転直下の悲劇を見つめるしかないヒロインのアップでおます。

 
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